今春の神奈川県公立高入試はどのような入試であったのか振り返ってみましょう。
今年度は公立高入試の選抜方法が変更になりました。
その概要は次の通りです。
●これまで共通の検査と実施していた面接が特色検査のひとつになり、実施するかどうかは各校で定めることになりました。 ●第2次選考で、調査書に記載される第3学年の「主体的に学習の取り組む態度」が評価され選考に加わることになりました。 ●定通分割選抜の実施期間が繰り下げられ、全日制の二次募集の結果をみてから定通分割選抜の検査を受検できるようになりました。 ●定通分割選抜の二次募集は実施しないことになりました。 |
共通選抜(全日制)
志願締め切り時の状況
特別募集と中途退学者募集を除く募集人員39,947人に志願締め切り時の志願者数は47,349人。志願倍率は前年度(1.18倍)より0.01ポイント上がり1.19倍になりました。
この時点での定員割れの学校は45校1,802人で前年度(43校1,922人)より100人ほど減りましたが、学校数は逆に2校増えています。
志願変更後の状況
志願変更を行ったのは3,698人。志願者の7.8%(前年度8.2%)になり、前年度より約250人減少しました。しかし、依然として高い志願変更率といえ、志願締切時の倍率をみて積極的に志願先を変更する様子がうかがえます。
志願確定者数は47,330人。志願確定倍率は1.18倍で締め切時よりやや下がったものの、前年度(1.17倍)より0.01ポイント高い状況は志願締切時と変わりませんでした。
ただ次のグラフにあるように、生徒数に対する志願確定者数の割合は前年度と変わっていない(70.7→70.6%)ため、この倍率アップは募集枠を縮小(60.2→59.6%)したことによるものといえます。
この志願変更により定員割れの学校は31校。欠員は1,435人に減ったものの欠員数は2割減で留まりました。普通科では24校794人から11校520人に減り、学校数は半分以下になりましたが、専門学科は延べ20校735人から19校648人に留まっています。志願変更の効果は普通科のみに現れています。
学科別でみると、普通科は1.24倍で前年度より0.01ポイントアップ。単位制普通科は前年度の1.20倍から1.18倍にダウンし、普通科全体では1.23倍で前年度と変わりませんでした。専門学科は農業科が0.99倍から1.06倍にアップ。工業科は0.87倍から0.88倍にやや上がり、商業科も1.04倍から1.08倍にアップ。拡大していた普通科と専門学科との差はやや縮まりました。
【主な学科の応募倍率】
学科 | 2023 | 2024 |
---|---|---|
普通科 | 1.23 | 1.24 |
農業科 | 0.99 | 1.06 |
工業科 | 0.87 | 0.88 |
商業科 | 1.04 | 1.08 |
専門学科計 | 0.93 | 0.95 |
単位制普通科 | 1.20 | 1.18 |
単位制総合学科 | 1.08 | 1.16 |
単位制専門学科計 | 1.24 | 1.18 |
全日制計 | 1.17 | 1.18 |
受検と合格者の状況
受検者数は46,877人、受検後の取消が313人、合格者数は38,516人で、実質倍率は前年度より0.01ポイント上がって1.21倍になりました。不合格者数は2022年度から増加傾向で、今年度は前年度より163人増え8,048人。不合格者数が8,000人を超えたのは6年ぶりです。実質倍率も少しずつ上昇しており、今年度は受検生の約2割が不合格になる厳しい入試でした。
一方で、全日制の第二次募集の募集人員は1,448人。前年度(1,520人)より若干減りましたが、依然として大量の欠員が生じています。
志願倍率は過去最低水準で欠員も多い中、実質倍率は上昇傾向。不合格者数も増加しています。これは人気校と不人気校の格差が大きく、人気校では高倍率で多くの不合格者がでる激戦となる一方で、不人気校では募集人員を埋めることができないという二極化の選抜状況になっているからです。
学力向上進学重点校とエントリー校の選抜状況
学力向上進学重点校とそのエントリー校では、倍率ダウンした学校が目立ちました。次のグラフをみると、これらの18校を合わせた志願者数は、増→増→減,増→増→減を繰り返しており、今年度は増加の年に当たっていました。
しかし志願者が増加し倍率アップした学校は、厚木や横須賀、鎌倉、小田原など横浜市や川崎市以外の周辺地域に位置する学校でした。従来、受検生の志向として都市部に向かう「のぼり志向」がありましたが、今年度はその傾向がやや抑えられた形です。
横浜翠嵐は志願確定倍率2倍台を回復。受検生の約半数が不合格になる激戦でした。翠嵐が上がれば湘南が下がるといわれていた湘南も、志願者微増で200人を超える不合格者を出しています。
厚木は志願者が60人増加し、今の入試制度になった2013(H25)年度以降の最高倍率を記録。受検生の約3割、過去最多の135人が涙をのみました。
横浜平沼は、2021年度からの志願倍率が1.34→1.51→1.26→1.36倍と上がったり下がったりする隔年現象の動きで、今年度は倍率アップの年でした。
横浜国際(国際)はコロナ禍の影響で2021年度より1.1倍台の低めの倍率で推移していましたが、コロナによる規制が緩和されたためか、4年ぶりに1.2倍台に上がりました。同校の国際バカロレアコースは2019年度の開設以降、1.25→1.65→1.20→2.10→1.25→1.45倍と隔年現象の動きが続いています。
横浜緑ケ丘は前年度に志願確定者が初めて400人を割り、過去最も低い倍率になりましたが、今年度はその反動で50人以上の応募増となり本来の高倍率に戻りました。
横須賀も倍率に隔年現象があり、2021年度より1.20→1.28→1.21→1.43倍と推移。今年度は上がる年でしたが、市立金沢への流出が抑えられたためか65人の大幅増で8年ぶりに1.4倍台まで上がり、100人を超える不合格者がでています。2023年3月の進路実績で、4年制大学への現役進学率が77.8%から86.2%へと大幅にアップしたことも影響したのかもしれません。
鎌倉は前年度に志願者減と学級増で1.2倍台に下がり、今年度はその反動で志願者増。募集学級数も元の8学級に戻り、前々年度と同じ受検生の3分の1に当たる約160人が不合格になる厳しい入試になりました。
平塚江南は志願締切時の倍率が2021年度より1.13→1.21→1.03→1.14倍と隔年現象が見られ、志願変更により20~50人ほど増加し1.2倍前後以上の倍率になることを繰り返しています。小田原や鎌倉などからの移動と考えられますが、結果的には合格率80%程度の比較的安定した入試が続いています。
小田原は志願確定倍率に隔年現象が見られ、2021年度より1.25→1.30→1.21→1.32倍と緩やかに上下しています。志願確定者数は421人で近年では多い方となり、のぼり方向への志向が抑えられたような形です。
一方で、川和は倍率アップしていますが、これは前年度の学級増が元の8学級募集に戻ったからで志願者は減少し400人を切りました。これは2013年度以降で最も少ない人数です。
柏陽は微減ですが、1.3倍台まで下がったのは3年ぶりです。
多摩は前年度に過去最も高い倍率を記録したことから志願者が60人以上減少。3年ぶりに1.6倍台まで下がったものの、受検生の3分の1に当たる150人以上が不合格になる激戦状態は変わりませんでした。
希望ケ丘は2022、2023年度と続いた1.5倍台の高倍率の反動で65人減って485人。志願者数が500人を切ったのは4年ぶりです。
光陵は前年度の倍率アップの反動で志願者減となり1.2倍台までダウン。不合格者も100人を切って(75人)光陵としては緩やかな入試になりました。選抜方法を学力重視から調査書と同等に見る比率に変更したことも影響したのかもしれません。
大和は毎年高倍率で激戦になる学校ですが、隔年現象があり今年度は倍率ダウンの年でした。それでも受検生の約3割が不合格になる厳しい状況は変わりませんでした。
茅ケ崎北陵と相模原はほぼ前年度並みの志願者を集めました。茅ケ崎北陵は1.3倍程度が標準的な倍率で、2022年度は1.5倍台まで上がりましたが、それ以外は安定した入試が続いています。
相模原はこの3年間1.2倍台で安定しており、合格率も80%台で推移しています。
学校名 | 2023 | 2024 |
---|---|---|
横浜翠嵐 | 1.98 | 2.14 |
川和 | 1.20 | 1.25 |
柏陽 | 1.44 | 1.39 |
湘南 | 1.60 | 1.63 |
厚木 | 1.25 | 1.41 |
多摩 | 1.87 | 1.63 |
希望ケ丘 | 1.54 | 1.35 |
横浜平沼 | 1.26 | 1.36 |
光陵 | 1.45 | 1.29 |
横浜国際(国際) | 1.19 | 1.27 |
横浜国際(バカロレア) | 1.25 | 1.45 |
横浜緑ケ丘 | 1.41 | 1.59 |
横須賀 | 1.21 | 1.43 |
鎌倉 | 1.25 | 1.52 |
茅ケ崎北陵 | 1.36 | 1.32 |
平塚江南 | 1.19 | 1.23 |
小田原 | 1.21 | 1.32 |
大和 | 1.53 | 1.46 |
相模原 | 1.22 | 1.25 |
計 | 1.40 | 1.45 |
中堅校の選抜状況
前年度は進学指導重点校やエントリー校などの上位校の倍率が下がり、内申100/135~120/135の中堅上位校や、内申90/135~100/135前後の中堅校の倍率が上がるという安全志向の傾向がみられました。
今年度はそれらの中堅上位校や中堅校の倍率が下がり、その次の学力層の80/135~90/135の学校の倍率が上がるという、より安全志向が強まったような傾向がみられました。
以下の21校のうち、志願者増になった学校は半数の11校。6校が減、残りの4校は前年度並みの志願者数でした。
新羽は1学年10学級の大規模校にもかかわらず、2020年度からの志願確定倍率が1.20→1.22→1.20→1.22→1.20倍とほぼ一定の倍率を維持しています。毎年わずかに0.02ポイントずつ上下しており、安定した入試を続けています。
新栄は2020年度からの倍率が1.23→1.06→1.21→1.02→1.26倍と推移し、上下幅が固定された隔年現象になっています。荏田が前年度に過去最高倍率を記録し、今年度は倍率ダウンしているので、その影響も受けているかもしれません。
旭の志願者数はほぼ前年度並みだったものの、2023年度の増学級から元の8学級募集に戻ったため倍率アップ。1.2倍台は旭としての過去最高倍率です。前年度に過去最高倍率を記録した舞岡からの移動もあったのかもしれません。
上矢部は前年度に倍率アップし,上矢部としては高い1.2倍台を記録,今年度はその反動で倍率ダウンし,標準的な倍率に戻っています。
横浜緑園も隔年現象があり、2020年度からの倍率は1.17→1.10→1.20→1.09→1.29倍と推移。今年度は倍率アップの年でしたが、志願者は50人以上増加し過去最高倍率になりました。上矢部からの移動や舞岡の影響も受けたのではないかと考えられます。
横浜南陵は2018年度から7学級→7→6→6→7→7→6と1年おきに募集学級数を変更しています。今年度は金井からの移動で志願者が約40人増加した上に、学級減が重なり倍率が1.5台まで急騰。受検生の3分の1、約140人が不合格になる過去に例のない激戦になりました。
市立幸は2022年度より志願者増が続き、2021年度からの倍率も1.17→1.25→1.31→1.43倍と上昇傾向。今年度は普通科開設以来最も高い倍率になりました。大師が前年度に6年ぶりに定員割れから抜け出し、今年度は志願者減になっていることから、その影響を受けたのかもしれません。
川崎北は前年度に百合丘への移動があったのか、志願者が約30人減少して過去最も低い倍率になりました。今年度は戻ってきて前々年度並みの倍率に戻りました。
生田東は隔年現象で2020年度より1.13→0.94→1.16→1.07→1.20倍と推移しています。今年度は倍率アップの年で約40人の志願者増。2015年度と並ぶ過去最高倍率となりました。やはり百合丘からの移動があったようです。
新校として2年目の入試になった逗子葉山は、前年度と全く同じ志願者数となり1.3倍台を維持。90人以上の不合格者が出る厳しい入試が続きました。
茅ケ崎西浜は前年度に倍率ダウンし、合格率90%を超える緩やかな入試になった反動もあってか、約70人の大幅増となり過去最高倍率を記録しました。受検生の2割に該当する90人近い不合格者がでる厳しい入試でした。県立高校の再編・統合の対象校で、2025年度より募集停止となる深沢が約50人の志願者減になっているので、影響を受けたのではないかと思われます。
伊勢原は微増でしたが、倍率が1.2倍台に上がったのは6年ぶりです。
秦野曽屋は微減で、ほぼ前年度並みの緩やかな入試でした。
高浜も前年度とほぼ同じ合格率90%台の緩やかな入試が続いています。
足柄は前年度に4年ぶりに定員割れから抜け出したものの、今年度は定員割れに戻りました。
一方で綾瀬は前年度の定員割れから抜け出し、前々年度並みの倍率に回復しています。
厚木北は約20人の志願者減で募集人員をわずかに1人多い240人となり,結局その多い分の1人が不合格になりました。
大和南は前年度と同じ1.06倍で、大和南としては標準的な緩やかな入試が続きました。
相模田名の志願者数は前年度とほぼ同じ(344→343人)だったものの、募集学級を元の7学級に戻したことから倍率は1.2倍台に上がり、2016年度と並ぶ過去最高倍率を記録。受検生の約2割、60人余りが不合格になる相模田名としては久しぶりに厳しい入試になりました。
逗子葉山と同様、新校として2年目を迎えた相模原城山は、志願者が約50人の大幅増となり倍率アップ。城山の時代も含めて最も高い倍率になりました。その結果、志願者が増えた分の不合格者がでています。
上鶴間も相模田名同様、学級減による倍率アップで志願者数は逆に減少しています。しかし学級減の分、不合格者も増えて上鶴間としては厳しい入試になりました。
学校名 | 2023 | 2024 |
---|---|---|
新羽 | 1.22 | 1.20 |
新栄 | 1.02 | 1.26 |
旭 | 1.10 | 1.23 |
上矢部 | 1.21 | 1.13 |
横浜緑園 | 1.09 | 1.29 |
横浜南陵 | 1.22 | 1.59 |
市立幸 | 1.31 | 1.43 |
川崎北 | 1.03 | 1.15 |
生田東 | 1.07 | 1.20 |
逗子葉山 | 1.31 | 1.31 |
茅ケ崎西浜 | 1.07 | 1.25 |
伊勢原 | 1.17 | 1.20 |
秦野曽屋 | 1.08 | 1.05 |
高浜 | 1.07 | 1.09 |
足柄 | 1.03 | 0.97 |
綾瀬 | 0.98 | 1.08 |
厚木北 | 1.08 | 1.00 |
大和南 | 1.06 | 1.06 |
相模田名 | 1.08 | 1.23 |
相模原城山 | 1.02 | 1.19 |
上鶴間 | 1.08 | 1.19 |