
埼玉県の私立高入試がどのような状況であったのか振り返ってみましょう。
目次
難関3校の状況

慶應義塾志木


慶應義塾志木の一般入試の応募者数はこの5年間1,100人台で推移しており,実質倍率も3倍前後で安定しています。自己推薦もコロナ禍の2021年度に応募増(2020年度の応募者数104人)となり,実質倍率も2.60倍から4倍近い3.76倍に上がったものの,以降落ち着きを取り戻しています。ただ2022年度からは50人近い合格者を出すようになりました。2026年度入試ではその実態に合わせるためか,自己推薦の募集人員を40人から50人に増やし,一般と帰国募集を190人から180人に減らします。これにより一般入試の合格者が絞られると実質倍率が上がる可能性があります。
立教新座

立教新座は一般入試日が2/1であることから,1/22から始まる大宮開成や栄東,2/7の慶應義塾志木,2/9の早稲田大学本庄などいろんな併願パターンが可能で,志望の順位もさまざまな多くの受験者が集まります。
そのため募集人員(一般60人)の十倍以上の合格者をだしています。
グラフをみると応募者数は増加傾向ですが,実質倍率は2.3倍前後で落ち着いているようにみえます。しかし,補欠繰り上げ数は2022年度より90→52→95→150人と2025年度は大幅に増加しました。合格したものの他校に進学を決めた受験生が例年になく多かったようです。この分を合格者に加えると実質倍率は2倍を切るので,結果的にやや緩和された入試になったといえます。
2026年度も募集要項に変更はないことから,例年通り多くの応募者が集まりそうです。
早稲田大学本庄


早稲田大学本庄の男子の応募者は2021年度にコロナ禍によって1,400人台に落ち込んだものの,翌2022年度から元の1,700人台に戻っています。一方女子は増減を繰り返しているような状況です。しかし,合格者数は男女とも減少傾向で実質倍率は上昇しており,2025年度は女子が4倍を超え,男子を上回る厳しい入試になりました。
合格者の男女比はα選抜,一般,帰国合わせて70:30で男子が多くなっています。しかし入学段階では55:45で男女の差が縮まります。これは男子の合格者の多くが他校に進学するからと考えられます。
難関上位校の状況
次に難関上位校の選抜状況を見ていきましょう。

※城北埼玉の2024年度以前の単願は内部進学を含んだ応募数です。
※春日部共栄は単願入試に1回単の人数を,併願入試に1回併,2回,3回を合計した人数を掲載しています。
栄東


栄東の2025年度入試の特徴は単願の応募者が急増したことです。人数は57人ですが,併願者が圧倒的に多い本校で単願応募者が50人を超えたのはこの10年間ではありません。この結果,一般入試のフリー受験者の合格率に影響を与えたようです。
併願入試では②1/23の応募者が約2割増でした。大宮開成の同日の応募者が減少していることから,同校からの移動があったのかもしれません。特待生選抜は比較的安定した入試が続いており,実質倍率も2倍程度が続いています。
2026年度は単願のハードルが上がるようなので注意が必要です。
開智


開智も単願応募者の増加が目立ちました。①②③ともに増加し,単願全体で約4割増えました。一般入試の併願応募者も増加していますが,2割程度での増となっています。TとS1の募集人員を増やし,S2の単願のハードルを下げたほか,全体的にも利用しやすくなったため,その効果がでたようです。
2023年度,2024年度と不合格者が多く出ていましたが,2025年度は減少し2022年度並みに落ち着いたのも特徴のひとつといえるでしょう。
しかし,2026年度はまたハードルが上がるので,2024年度のような応募減,不合格者増という入試に戻るかもしれません。
川越東

川越東も多くの入試区分で応募増となり,単願は4割弱の大幅増になりました。出願条件を緩和したことが影響しています。一般入試では併願Ⅰが微増したものの併願Ⅱは1割の減でした。1/25が検査日なので,栄東の特待選抜と重なるほか,星野(共学部)とも競合しており影響を受けたのかもしれません。また日程的に遅いことから,早く決めたいという受験者には受けにくいのかもしれません。
特待生入試は1割強の増,理数コースの合格者が珍しく100人を超えました(87→103人)。
2026年度は検査で面接がなくなるほかは大きな変更点はありません。
淑徳与野

淑徳与野は応募者が減少傾向でしたが,2025年度は単願,併願ともに約3割の大幅増になりました。出願条件を緩和し利用しやすくしたようです。難関国公立大学を目指すT類から,指定校推薦や総合型選抜に対応するMS類まで5類型を設置しており,いずれも募集人員は40人です。しかし入試では最難関のT類の応募が多く,全体の約半数を占めています。T類とSS類・SA類の間でスライド合格があることから上位クラスに応募しているのかもしれません。
2026年度はハードルが上がるようなので注意が必要です。
城北埼玉

城北埼玉はグラフにあるように2024年度まで併願Ⅱ5科の応募者が減少傾向にありました。しかし2025年度は一転して増加に転じています。これは出願条件を緩和して利用しやすくしたからです。フロンティアはフィールドワークやプロジェクト型学習などを多く取り入れるという特徴があるものの応募者数は少数でとどまっています。いずれも出願条件をクリアできれば合格する可能性が高く,不合格者が少ない入試になっています。
2026年度は募集要項に大きな変更はありません。
星野


星野(共学部)は2024年度に出願条件を緩和したため単願,併願ともに応募増になりましたが,2025年度は単願は増えたものの,併願は微減になりました。近隣の山村学園も応募減になっていることから,西武学園文理に移動しているのかもしれません。
女子部も単願は増加しましたが,併願は微減です。
2026年度は女子部の末広キャンパスに共学の「医専コース」と「グローバルフロンティアコース」を新設するので,女子部はもちろん共学部の応募状況にも影響を及ぼしそうです。
開智未来

開智未来は2024年度に「開智クラス」の出願条件を緩和したことから単願を中心に応募増になりました。2025年度は逆に「開智クラス」の出願条件を厳しくし単願が微減となったものの併願は2024年度並みを維持しました。
2026年度は募集人員を増やすほか,「T未来クラス」の出願条件を緩和した上で全員特待生とするなど利用しやすくなるので,応募者はさらに増えそうです。
春日部共栄

春日部共栄はコース改編があり,出願条件の変更もあったことから,各入試区分で応募減になっています。出願条件を緩和した開智に移動したのかもしれません。ただ,併願応募は2~3割程度減ったのに対し,単願は1割強の減でとどまっており,一定の人気は維持した形です。
2026年度は一部のクラスで出願条件が緩和するようなので,応募者増が予想されます。
大宮開成

大宮開成は入試制度を変更した2024年度に応募減になり,2025年度は大きな変更がなかったことから応募増が予想されていましたが,逆にさらに減りました。栄東や近年急激に伸びてきている浦和麗明に流れているのかもしれません。ただ,もっともハイレベルの特選先進の応募者数はほとんど変わっていないので学力トップ層には影響は及んでいないようです。
2026年度は特選Ⅱの出願条件を緩和するなど利用しやすくなるため,応募者は増加しそうです。
獨協埼玉

獨協埼玉は単願,併願ともに一定の人気を保っています。他の多くの学校のようにコース制をとっておらず,普通科で募集しています。また高1では中学生からの高入生と別クラスであるなど安心して学習できる点も魅力のようです。入試では学力や検定,内申などによる加点制度を導入しています。これは個別相談を受けないと適用されないので,受験希望者は必ず個別相談を受けるようにしましょう。
2026年度はその加点制度に変更があるので確認しておきましょう。
本庄東



本庄東は併願応募者が小幅で増減を繰り返していますが大きな変動がなく推移しています。
単願応募者も200人の前半で募集人員(205人)をやや上回る人数を確保しています。
コース別でみると,単願は選抜より特進や進学の応募者が多く,併願になると選抜がもっとも多くなります。
単願の場合,希望のコースで合格すると必ずそのコースに入学することが条件ですが,併願の場合はそのような制約はなく,下位コースの合格も得られるため,上位コースに応募するケースが多くなるようです。
2026年度は募集要項に大きな変更はないため例年の入試になりそうです。
中堅上位校の状況

東京農業大学第三

東京農業大学第三は単願の出願条件を利用しやすく変更したため応募増となり,4年ぶりに300人を超えました。一方,併願応募者はⅠコース,Ⅱコースとも2024年度並みでした。
2026年度は募集要項に大きな変更はないものの,山村国際で出願条件が緩和されるので影響を受けそうです。
狭山ヶ丘


狭山ヶ丘は応募者が減少傾向でしたが,2025年度は出願条件を緩和したことから各類型で応募増となり,2021年度の水準に戻りました。類型別では比較的利用しやすいⅢ類の応募者が5割増となり突出しています。募集人員を減らし(400→300人)ましたが,入学者数は増加したようです。
2026年度は募集要項に大きな変更はありません。しかし細田学園で出願条件が厳しくなるほか,西武台がコース改編するので,その影響を受けるかもしれません。
城西大学付属川越


城西大学付属川越は特進コースの募集減が響いたのか,または城北埼玉に移動したのか,併願応募者が減少し,この5年間でもっとも少ない人数になりました。一方で単願は2024年度並みで多い人数を維持しています。
しかしコース別合格者数(単願+併願)をみると,特選はむしろ増加し,進学は微減でとどまっており,メインのコースである特進の合格者が減少していることから,併願応募者も特進が減ったのではないかと考えられます。
2026年度は募集要項に大きな変更はないので,応募者が戻ってくる可能性があります。
浦和麗明



浦和麗明は近年急激に伸びてきている学校のひとつです。毎年のように募集要項を変更し,そのたびに学力レベルも上がっています。2023年度は特進の募集停止,2024年度は学校推薦がレベルアップし応募者は減少しました。しかし2025年度は特選Ⅱと特選Ⅲの出願条件のハードルを上げたのにもかかわらず,特選Ⅲの応募者は大幅に増加しました。春日部共栄のコース改編の影響を受けたのかもしれません。
2026年度は特選Ⅲの自己推薦を上げ,さらにレベルアップします。
西武台

西武台の応募者は単願,併願ともに減少傾向になっています。2023年度はSTEAMコースを新設し,募集の核となる選抜Ⅱの募集人員を減らしたことから応募減,2025年度は狭山ヶ丘が出願条件を緩和し応募増になっているので,その影響を受けたと考えられます。
例年,募集要項の変更はあまり多くありませんが,2026年度は全面的にコース改編されるので要注意です。それぞれのコースの特徴と出願条件について確認しておきましょう。
叡明

叡明も伸びてきている学校です。やはり頻繁にコース改編や出願条件の変更を行うので最新の情報を得るように努めましょう。
2024年度は特進ⅠⅡを特進に,進学ⅠⅡを進学に統合,しかも出願条件も厳しくしたため応募者は大幅に減少しました。2025年度は進学の学校推薦の出願条件を上げましたが単願応募者は減少した(286→226人)ものの,併願応募者は逆に増加(750→831人)しました。これも春日部共栄の影響でしょうか。
2026年度は進学の出願条件をさらに厳しくしますが,もっとも応募者の少ない特選Ⅱが緩和されるので,進学から特選Ⅱへスライドする起こる可能性があります。
昌平

昌平は出願条件の変更が多く,厳しくなったり緩和されたり安定していません。2023年度,2024年度と連続して上がり,単願を中心に応募減が続きました。2025年度は一転して緩和になったものの,単願,併願とも応募増には結び付きませんでした。
入試ではT特選や特選を擁する特別進学コースの応募者が多くなっています。検査科目は5教科なので公立併願者にとっては受験しやすいのかもしれません。
2026年度も一部のコースで緩和されますが,大きな変動はなさそうです。
浦和実業



浦和実業は新校舎の建設・完成を機に2024年度,2025年度と出願条件を厳しくしています。ただ,2024年度は選抜αの併願や商業科の条件は変わらなかったため応募者が増加し,全体でも併願応募者が増加しました。グラフを見てもわかるように,各コースとも応募者は増加傾向になっています。2025年度は特進選抜と特進の併願以外で厳しくなったため,進学と商業科を中心に応募者は減少したもののこれら上位コースの応募者は増加しました。このような変更によって少しずつ上位層が厚くなってきているようです。
2026年度もさらに条件は厳しくなり,変更がないのはもっともハイレベルの特進選抜ともっとも利用しやすい商業科の併願だけとなるのでさらにレベルアップしそうです。
浦和学院

浦和学院の特徴は多くの学力レベルの異なるコースをもち,幅広い学力層の生徒を受け入れることのできる間口の広さがあります。出願基準の変更も少ないため安心して受験できるのもメリットになっています。2025年度に併願応募者が約600人増えたのは浦和実業と叡明のハードルが上がった影響と考えられ,3,000人を大幅に超える多くの受験生があつまりました。
2026年度は一部のコースの基準が上がります。また,加点制度の変更がありややハードルが上がるので応募者は減る見込みです。
国際学院



国際学院は選抜進学と進学で併願のハードルが上がりましたが,花咲徳栄からの移動があったのか,両コースとも応募増になりました。総合学科に属する選抜進学と進学は2023年度を境に応募状況が変化し,応募者の中心が進学から選抜進学にシフトしました。以降,選抜進学がメインのコースになっています。
2026年度はその選抜進学の併願のハードルが上がるようなので注意が必要です。