
10月27日、埼玉県教育委員会から2026(R8)年度入試に向けた、10月1日現在での進路希望調査の結果が発表されました。
詳細は以下のページをご覧ください。
令和8年3月中学校等卒業予定者の進路希望状況調査(令和7年10月1日現在) – 埼玉県
まだ10月の希望状況なので今後変わることもありますが、この時点での特徴を見ていきましょう。
希望状況の推移
ここでは過去5年分の希望状況を掲載し、推移がわかるようにしています。

まずひとつめの特徴は、公立高校の希望率が大きく下がったことが挙げられます。もともと公立の希望率は毎年少しずつ減少しており、公立離れが進行していました。しかし今回は、前年度同期より2.9ポイントも一気に下がり、この20年間でもっとも低い希望率を大幅に更新しました。これだけ急激に下がったこともこの20年間ではありません。
一方で、県内私立高希望率は前年同期より2.4ポイントアップし、18.5%になりました。この希望率も過去20年間でもっとも高く、これだけ大幅に上がったのも初めてです。さらに、県外の高校への希望者も増加し6.7%になりました。これも県内私立同様、この20年間でもっとも高く、上がり幅も最大です。県外の希望者の約9割は私立高希望者であることから、私立志向が一層促進され公立から県内外の私立へ一気に流れたようすがうかがえます。
この背景には、私立高校の授業料の負担を軽減する就学支援金の拡充があります。いまだ決定ではないものの、2026年度より国の高等学校就学支援金制度が見直され、年収の制限なく457,000円が支援される見込みであり、これが受験生を公立から私立へ向かわせた原因と考えられます。
毎年、過去最高の希望率を記録していた通信制への希望率は0.1ポイントアップの5.4%でとどまりました。
このあと、第2回進路希望調査を経て2月の入試を迎えることになります。例年公立の希望率はだんだん下がってくるので、今回もこれからさらに私立高への流出が続いていくものと見込まれます。
公立高校の学科別希望率
次に公立高校の学科別希望率を見てみましょう。※<>は実際の入試の志願確定倍率です。

学科別の希望倍率と入試の倍率をみると、必ずしも連動しているとはいえません。R6年10月(R7年度入試)とR5年10月(R6年度入試)を比べると、農業科は希望倍率が下がり、入試の倍率も下がりましたが、工業科は希望倍率は上がったものの、入試の倍率は横ばい。外国語科は希望倍率は上がりましたが、入試の倍率は逆に下がっています。このように希望倍率が実際の入試の倍率を反映したものとはいえないのですが、普通科の1.23倍はこの20年間の最低倍率になっており、実際の入試でも大幅な倍率ダウンが予想されます。このほか農業科と家庭科系も最低倍率で、工業科、外国語科、理数科も前年同期より大幅に下がりました。ここまで低くなると実際の入試でも多くの学科で倍率ダウンが予想されます。
普通科の倍率ごとの学校数
普通科の場合、倍率ごとの学校数をみると、1.6倍以上の高倍率校の数は前年度とほとんど変わっていません。一方、1.40~1.59倍、1.20~1.39倍の学校が減少し、1.00~1.19倍の学校数が3倍に増えました。

1.6倍以上の高倍率校

1.6倍以上の高倍率になった学校は学力上位校が多くを占めています。しかも16校全校が前年度もベスト20位に入っている上、実際の入試でも高倍率になることが多い学校です。従ってこれらの学校は、私立志向の高まりによる影響をさほど受けず高い人気を今回も維持したといえるでしょう。
しかし、前年度同期に1.40~1.59倍になった学校は今回希望率が下がるケースが目立ちました。志木(1.58→1.16倍)、浦和東(1.56→1.26倍)、川越(1.52→1.39倍)、浦和(1.50→1.10倍)、朝霞(1.46→1.17倍)などです。前年度同期の希望倍率1.00~1.59倍の学校38校中3分の2に当たる25校で希望倍率が下がりました。
一方、この時点で定員割れとなった学校は42校ですが、このうち37校が前年同期も定員割れでした。 つまり、高倍率校と定員割れ校は固定化されており、私立志向の影響はそれ以外の学校が受けたといえるのではないでしょうか。
新校の希望状況
来春の入試では新校が多く誕生します。それらの学校の希望状況はどうだったのでしょう。

上記の新校の希望状況は明暗が分かれました。多くの希望者を集めたのは岩槻「普」と和光国際「普」「国際」の2校だけ。ほかのほとんどが1倍を超えることができませんでした。開校初年度ということもあり様子見の希望状況といえますが、今後希望者が増加するか注目されます。
希望者が大幅に増加した私立高校
では、今回の調査で希望者が大幅に増加した私立高校はどのような状況だったのでしょう。

上記の学校は希望者数の増加率が40%以上の学校を取り上げました。公立高との併願校としてよく利用される中堅校が多いことがわかります。一方で難関の大学附属校の希望状況は次の通りです。

立教新座は希望者がやや増加したものの、慶應義塾志木と早稲田大学本庄は減少しました。今後、変動する可能性はありますが、今回の調査による私立高希望者の増加はこれら難関大学附属校とは無縁だったようです。
このように今回の調査では、公立の一部の人気校と低倍率校を除く中堅校を中心とした学力層が私立高に向かっている状況をみることができました。
なお、進路希望調査は12月にも行われ、その結果が翌1月に公表されることになっています。