2023(令和5)年度の都内私立高入試がどのように行われたのか見ていきましょう。
前回の記事(国立大学附属・男子難関校・難関大学附属)はこちらから
上位大学附属校の状況①(併願優遇のない学校)
次の8校は併願優遇制度がなく系列大学への進学率はそれほど高くない大学附属校です。
ここでも「都内私立高入試概況①」の難関大学附属校の動きと同様、2021年度の一般入試の応募者数はコロナ禍により減少したものの翌2022年度から増加に転じ、今年度の2023年度はさらに増え私立志向の高まりを感じさせる動きになりました。
また系列の大学進学率に関わらず大学附属校人気は復活してきているといえるでしょう。
推薦 | 2020 応募者 | 2021 応募者 | 2022 応募者 | 2023 応募者 |
---|---|---|---|---|
国際基督教大学 | ― | ― | ― | ― |
明治学院 | 388 | 354 | 307 | 393 |
成蹊 | 20 | 39 | 22 | 35 |
学習院 | ― | ― | ― | ― |
國學院久我山 | 45 | 65 | 42 | 68 |
国学院 | 143 | 128 | 285 | 136 |
日本大学第二 | 104 | 133 | 108 | 98 |
芝浦工業大学附属 | 34 | 58 | 64 | 83 |
成城学園 | 41 | 55 | 35 | 36 |
計 | 775 | 832 | 863 | 849 |
一般 | 2020 応募者 | 2021 応募者 | 2022 応募者 | 2023 応募者 |
---|---|---|---|---|
国際基督教大学 | 286 | 252 | 299 | 309 |
明治学院 | 1,120 | 956 | 1,084 | 1,316 |
成蹊 | 142 | 195 | 173 | 213 |
学習院 | 141 | 143 | 178 | 174 |
國學院久我山 | 293 | 296 | 271 | 301 |
国学院 | 2,446 | 1,832 | 2,414 | 2,607 |
日本大学第二 | 387 | 376 | 360 | 330 |
芝浦工業大学附属 | 104 | 123 | 112 | 138 |
成城学園 | 147 | 148 | 122 | 208 |
計 | 5,066 | 4,321 | 5,013 | 5,596 |
国際基督教大学の一般入試の応募者は微増ですが久しぶりに300人を超えました。2019年度までは300~400人程度の応募者を集めていたので本来の応募状況に戻りつつあるようです。また2021、2022年度と絞っていた合格者を増やして(117→118→132人)、こちらも2020年度(126人)以前の水準に戻っています。その結果実質倍率はやや下がり(2.34→2.16倍)ました。
明治学院は推薦、一般入試ともに大幅増になりました。特に女子の一般入試の実質倍率は1回目、2回目合わせて6倍台に跳ね上がり激戦になりました。2022年夏に完成した新校舎と今年の5月には全面人工芝のグラウンドとテニスコートができあがる予定です。これらの新しい施設が応募増の要因になっていると思われます。
成蹊の一般入試の応募者数は増えたり減ったりする隔年現象的な動きがあります。それに合わせて実質倍率も上下します。今年度は応募増の年に当たり、しかも合格者を絞った(男女計103→72人)ため実質倍率は男女とも大幅にアップしました。なお、今春の高校卒業後の現役進学率が76.5%から83.6%に急騰したほか、国公立大学の実績も現役で14人から23人に増加しました。成蹊大学へは33%が進学しています。
学習院の募集人員は20人と小規模ですが、入試日が2月14日で併願しやすいためか近年応募者は増加傾向です。前年度の2022年度入試では応募増に加えて合格者も絞った(34→25人)ため実質倍率が5倍台に跳ね上がり激戦になりました。今年度はその反動もなく応募者数は前年度並みを維持しました。しかし合格者を増やした(25→36人)ため実質倍率は3.64倍に下がり例年の入試で落ち着きました。
國學院久我山の一般入試は男子の募集人員が多い(男子60、女子35人)ことから応募者数も男子が多く、男子中心の入試になっています。実質倍率は上がったり下がったりしており、今年度は上がる年でした。女子は男子と比較して低めで推移していましたが、今年度はややアップしています。
国学院は推薦入試の出願条件を毎年変更しています。2020年度に内申の条件に英検の資格を追加、2021年度には内申基準をやや厳しくし応募者は微減、2022年度は英検準2級取得者の基準を緩和したため倍増、そして2023年度は英検準2級も必須にして半減というように安定していません。一方、一般入試は2021年度に応募減、実質倍率ダウンとなりましたが、翌2022年度は増加に転じました。2023年度もさらに増えましたが、合格者を多く出したため実質倍率は各回で下がっています。2回目の応募者数が821人から953人へと増加していることや、各回で合格者を増やしていることから私立併願者が増加しているようです。
日本大学第二は一般入試の応募者が減少傾向です。志願方法に手続き期間が短いA志願と3月まで延納できるB志願がありますが、A志願の合格ラインが低いため応募者が多くなっています。2022年度の実質倍率が大幅にダウンしたのは募集人員を増やした(一般90→105人)ことで合格者が増えた(146→199人)からです。今年度は合格者をやや絞ったものの実質倍率はそれほど上がりませんでした。なお推薦不合格者のA志願者には加点制度がありますが、ここ数年、推薦入試で不合格者はでていません。
芝浦工業大学附属は推薦入試の出願基準を男女別から男女同一基準にし、さらにやや緩和したことから応募増になりましたが、今年度から中学校の先生との入試相談を取りやめたため多くの不合格者がでています(実質倍率2.68倍)。一般入試も応募増となり男女とも厳しい入試が続いています。今年度男子の実質倍率が若干下がったのは合格者を増やした(男子20→24人)からです。
成城学園は一般入試の実質倍率が上がったり下がったりしています。前年度は応募減となり3.36倍から2.56倍に下がりましたが、今年度はその反動で大幅な応募増となり、実質倍率も4倍近く(3.93倍)まで上がり厳しい入試になりました。一般入試日は2月12日ですが、青山学院が12日から11日に移動したことも応募増に影響したかもしれません。
上位大学附属校の状況②(併願優遇のある学校)
今度は、一般入試で併願優遇制度を導入しており、系列大学への進学が多い大学附属校をいくつか取り上げてみていきましょう。
推薦 | 2020 応募者 | 2021 応募者 | 2022 応募者 | 2023 応募者 |
---|---|---|---|---|
法政大学 | 134 | 169 | 138 | 114 |
専修大学附属 | 332 | 239 | 225 | 237 |
駒澤大学 | 357 | 318 | 309 | 326 |
明治学院東村山 | 104 | 71 | 89 | 88 |
日本大学櫻丘 | 252 | 379 | 273 | 237 |
日本大学鶴ケ丘 | 261 | 279 | 208 | 191 |
日本大学豊山 | 278 | 431 | 253 | 225 |
日本大学豊山女子 | 245 | 297 | 192 | 168 |
目黒日本大学 | 218 | 223 | 171 | 240 |
東海大高輪台 | 179 | 193 | 185 | 178 |
一般 | 2020 応募者 | 2021 応募者 | 2022 応募者 | 2023 応募者 |
---|---|---|---|---|
法政大学 | 331 | 431 | 270 | 244 |
専修大学附属 | 568 | 372 | 415 | 485 |
駒澤大学 | 887 | 711 | 765 | 706 |
明治学院東村山 | 226 | 169 | 202 | 165 |
日本大学櫻丘 | 1,021 | 931 | 764 | 819 |
日本大学鶴ケ丘 | 525 | 490 | 372 | 314 |
日本大学豊山 | 290 | 417 | 276 | 264 |
日本大学豊山女子 | 96 | 81 | 82 | 62 |
目黒日本大学 | 478 | 456 | 240 | 645 |
東海大高輪台 | 396 | 343 | 346 | 249 |
法政大学は併願優遇制度がありませんが、内申による加点制度があるのでこの欄に入れています。2021年度のコロナ禍で推薦、一般入試ともに応募増となり実質倍率も上がりましたが、翌2022年度は敬遠されて応募減、今年度もさらに減りました。中央大学附属や八王子学園八王子の新設クラス「文理特選」に移動したのかもしれません。
専修大学附属は2021年度に推薦、併願基準を上げて男女とも応募減、2022年度に併願基準をもとに戻し男子が応募増、2023年度は推薦基準を緩和し公立併願優遇としていた入試区分を国公私立併願優遇に変更したことから今度は女子の応募者が増えました。ただ推薦入試の募集数を増やし一般入試を減らした(推薦男女各90→各100人、一般男女各110→各100人)ものの一般入試の合格者を増やしたため(男女計292→331人)実質倍率は男子がダウン、女子はアップ。男子は倍率の下降傾向から抜け出せませんました。
駒澤大学は2021年度に併願基準のハードルを上げたため応募減、翌2022年度は若干の応募増になりましたが、今年度は併願基準の選択肢を増やしたのにもかかわらず2021年度並みに戻っています。2月10日の併願応募者が50人減っていることから、同じ入試日で近隣の日本大学櫻丘に移動したのかもしれません。
明治学院東村山の併願優遇は公立のみのため私立併願者はフリー受験となります。一般入試の応募者数は増えたり減ったりしており実質倍率もそれに合わせて上がったり下がったりしていますが、フリー受験では女子の実質倍率が激しく変動しているので注意が必要です。
日本大学櫻丘から日本大学豊山女子の日大系4校は日本大学櫻丘の一般入試を除いて応募減、前のグループででていた日本大学第二も応募減で、今年度も日大系は振るいませんでした。大学の不祥事がまだ尾を引いているのかもしれませんが、来春は復活が期待されるところです。
日本大学櫻丘は推薦基準に数検準2級、英検2級の項目を追加しましたが、応募者増には結び付きませんでした。一般入試では約60人、7.2%の微増ながら応募者の減少傾向に歯止めがかかりました。なお私立併願者が増加しているのか、2022年度よりA日程(2/10)よりB日程(2/12)の応募者が多くなっています。
日本大学鶴ケ丘は一般入試の応募者が減少傾向で、特に総進コースの女子は2020年度より195→188→128→84人と推移し今年度は2020年度から半減してしまいました。男子も196→155→143→139人と減少傾向は変わりません。2020年度と比較すると約3割の減になっています。もともと人気が高い学校なので来年度の動向には注意が必要でしょう。
日本大学豊山は2021年度の推薦入試でコロナ禍による特別加点を導入し応募者増、一般入試も入試日を2/12に変更したため増えました。推薦入試は適性検査と提出書類の総合判定により不合格者がでており、2021年度は実質倍率が1.66倍から1.95倍にアップ、一般入試も1.75倍から3.25倍に急騰しました。2022年度はこの高倍率が敬遠され推薦、一般入試ともに2020年度並みに戻り今年度も応募者は微減で留まりました。なお、すでに来年度の入試要項がHPに掲載されているので気になる方はチェックしてみてください。
日本大学豊山女子は埼玉県からの生徒が多く、B推薦応募者数が一般入試の応募者数を上回っていましたが、2022年度に適性検査を導入したため半減(142→72人)しました。今年度はN進学出願条件をやや厳しくしたため、一般入試の応募者が減少しています。
目黒日本大学は都内の日大系高校の中で唯一応募者が大幅に増加した学校です。前年度の2022年度は推薦入試改革と併願入試を2月10日のみとしたことで大幅に減少しましたが、今年度はその反動と2022年度の日本大学の合格者が107人から222人に倍増したことが影響し応募者が大幅に増加しました。(今春の日本大学合格者は214人ということです)
東海大学高輪台は推薦基準をアップしましたが、応募者数は微減で留まり、併願優遇は基準を据え置いていますが一般入試の応募者が減少しました。芝国際の影響を受けたのかもしれません。