前回に引き続き都内私立高入試の概況を見ていきましょう。
前回の記事(国立大学附属・男子難関校・難関大学附属)はこちらから
上位大学附属校の状況(他大学進学が中心の大学附属校)
今回は、系列の大学に進学する割合が低く、他大学進学が中心の大学附属校を取り上げてみましょう。
<推薦入試の応募者数>
2020 応募者 | 2021 応募者 | 2022 応募者 | 2023 応募者 | |
---|---|---|---|---|
帝京大学 | ― | ― | ― | ― |
東京農業大学第一 | 103 | 87 | 94 | 91 |
拓殖大学第一 | 169 | 166 | 239 | 210 |
桜美林 | ― | ― | ― | ― |
東京都市大学等々力 | ― | ― | ― | ― |
淑徳 | 425 | 303 | 237 | 295 |
淑徳巣鴨 | 165 | 193 | 194 | 145 |
文教大学付属 | 31 | 64 | 73 | 59 |
<一般入試の応募者数>
2020 応募者 | 2021 応募者 | 2022 応募者 | 2023 応募者 | |
---|---|---|---|---|
帝京大学 | 475 | 382 | 427 | 321 |
東京農業大学第一 | 661 | 596 | 750 | 630 |
拓殖大学第一 | 1,678 | 2,068 | 1,928 | 1,614 |
桜美林 | 1,542 | 1,544 | 825 | 888 |
東京都市大学等々力 | 360 | 216 | 218 | 263 |
淑徳 | 907 | 851 | 857 | 766 |
淑徳巣鴨 | 938 | 1,141 | 1,299 | 1,049 |
文教大学付属 | 259 | 280 | 393 | 317 |
帝京大学は応募者数が増えたり減ったりしています。今年度は併願優遇利用者もフリー受験者も減少する年でした。フリー受験の実質倍率が前年度に1.31倍から1.73倍に上がったことや八王子学園八王子で文理特選クラスを新設したことが影響したのかもしれません。来年度は応募増の年に当たる上にフリー受験の実質倍率も1.23倍にダウンしたことから、多くの受験生が集まりそうです。
東京農業大学第一は併願加点制度を導入しており、内申の数値により優遇点を変えています。選抜はこの優遇点を入試得点に加算して行われるため毎年多くの不合格者がでています。一般入試の応募者数は増えたり減ったりしていますが、これは男子の応募者が増減するから(410→344→456→385人)で、女子(251→252→294→245人)はそれほどはっきりした動きにはなっていません。男子の実質倍率はこの動きに合わせ1.55→1.47→1.58→1.46倍と上がったり下がったりし、女子は1.39→1.42→1.41→1.25倍と倍率が安定していましたが、合格者を前年度並みに出した(184→174人)ため下がりました。2023年度は応募増の年に当たる上、新校舎が完成する予定なので厳しい入試になりそうです。なお、高校募集は2024年度入試が最後になります。
拓殖大学第一は2021年度に普通コース(現進学コース)の併願基準を緩和したため大幅増、翌2022年度に元に戻して微減、今年度は優遇制度のハードルを上げたためさらに大幅に減少するというように変動が激しくなっています。2023年度は一般Ⅱ(2/12)の実質倍率が1.24倍から1.40倍に上がりました。
桜美林の2022年度の応募者が激減したのは進学コースの募集人員を減らし(85→50人)して併願基準を上げたからです。今年度は進学コースの募集人員を90人に増やして出願基準を変更したため微増となりました。併願優遇制度は書類選考型ですが、受験生は1回目か2回目の入試日に「特待・コースアップ選考」を受ける必要があります。一方、オープン入試の応募者は少なく、2回合わせても100人に満たないのですが、実質倍率は2倍を超える厳しい入試になっています。
東京都市大学等々力は2019年春に東京大学に現役で初めて合格したことが影響したのか、2020年度の応募者が209人から360人へと大幅に増加しました。しかし翌2021、2022年度は210人台に減り今年度は2割増というように変動があります。2023年度の応募増は2022年春の国公立・難関私立大学の合格実績が過去最高を記録したことが影響したのかもしれません。なお、今春もさらに国公立、早慶上理ICU、GMARCHの実績が伸びており高い人気は続きそうです。
淑徳は推薦、併願入試の出願基準を男女同一基準に変更しました。推薦入試では埼玉県からの流入があったようで都外生対象の1月24日の併願推薦応募者が増加(67→104人)しました。一方で一般入試は2月11日の応募者が減(295→218人)となり全体でも約1割減っています。この結果、不合格者の少ない緩やかな入試になりました。
淑徳巣鴨は特進コース私文クラスの募集を停止し、その分を特進コースに上乗せしました(特進80→120人募集)。また特進コースの推薦基準を緩和し、選抜クラスの併願基準をアップ、その結果特進の推薦応募者は増加したものの、その他の各クラスでは推薦、一般入試ともに応募減になっています。ただ学校全体の学力レベルは底上げが図られました。
文教大学付属は推薦、一般入試とも2020年度から3年間応募者が増加していましたが、今年度は出願条件をやや厳しくしたためか、推薦、一般入試の各回ともに応募減になりました。学力最上位層の選抜入試(アルティメットクラス選抜)を第3回入試に導入するなど学力レベルも上がっているようです。
進学校の状況
次に進学校の状況を見ていきましょう。
<推薦入試の応募者数>
2020 応募者 | 2021 応募者 | 2022 応募者 | 2023 応募者 | |
---|---|---|---|---|
広尾学園 | ― | ― | ― | ― |
青稜 | ― | ― | ― | ― |
朋優学院 | 76 | 133 | 178 | 87 |
東洋 | 736 | 669 | 340 | 398 |
錦城 | 208 | 160 | 153 | 137 |
八王子学園八王子 | ― | ― | ― | ― |
順天 | 245 | 237 | 214 | 205 |
駒込 | 634 | 606 | 614 | 437 |
聖徳学園 | 25 | 35 | 32 | 28 |
<一般入試の応募者数>
2020 応募者 | 2021 応募者 | 2022 応募者 | 2023 応募者 | |
---|---|---|---|---|
広尾学園 | 231 | 162 | 195 | 277 |
青稜 | 866 | 1,417 | 983 | 992 |
朋優学院 | 1,929 | 2,249 | 3,215 | 2,407 |
東洋 | 1,026 | 914 | 497 | 755 |
錦城 | 1,276 | 1,208 | 1,196 | 1,359 |
八王子学園八王子 | 1,344 | 1,104 | 1,544 | 1,769 |
順天 | 227 | 180 | 246 | 229 |
駒込 | 698 | 636 | 615 | 432 |
聖徳学園 | 302 | 318 | 473 | 535 |
広尾学園の2021年度の応募者が減少したのは2020年度の実質倍率アップ(1.66→4.93倍)と開校した広尾学園小石川に向かった受験生が多かったためと思われます。以降回復傾向で今年度は2020年度を約50人上回る多くの応募者を集めました。特に2回目入試(2/12)は約5割増えています。これは前年度の実質倍率ダウン(3.13→2.52倍、1回目は3.26→3.27倍)したことや私立併願者が増えたためと考えられます。
青稜の2021年度入試の応募者が激増したのは、コロナ禍により併願入試を書類選考にしたことや出願条件をやや緩和したためです。しかし書類選考はこの1年だけで2022年度からは元の学科試験に戻したため応募者数も戻りました。ただオープン入試の応募者は177人から241人へ36%増、そして今年度もさらに20%増えて288人になりました。オープン入試の応募増は挑戦志向の高まりを示しているといえます。
朋優学院は近年急激に伸びてきている学校の一つです。2020年度は出願基準を上げ、2021年度は国公立コースの募集数を増やして特進を減らし、2022年度は最上位クラスの国公立TGクラスを新設し5科型入試を導入、国公立コースは推薦基準をアップしました。そして今年度は国公立コースの推薦基準を上げて併願優遇制度を廃止、特進は推薦、併願ともにハードルを上げました。そのため今年度の応募者は大幅に減少しましたが、学力レベルは上がっています。来春も募集要項には注意しましょう。
東洋も募集要項をよく変更します。2021年度に特進と総進の推薦基準をアップし、特進の併願優遇制度をとりやめ、2022年度は総進の募集を停止し、特選、特進の基準アップ、2年連続でハードルを上げ応募者は減少しました。しかし2023年度は特進の併願優遇制度を復活させたため応募者は増加に転じています。ここも募集要項には注意が必要です。
錦城も変更をよく行います。2020年度は進学コースの併願基準を緩和、2021年度にその基準を元に戻し、2022年度は特進対象の入試を2/12にも設定、2023度は特進の推薦を廃止しました。応募者数はその変更に合わせて増減しますが、受験者層が固定しているのか大きな変動は起きていません。今年度は国公立大学、私立難関大学への実績が伸びていることや、拓殖大第一からの移動があったのか特進コースに応募者が集まりました。
八王子学園八王子は2021年度に応募減になったものの、翌2022年度から2年連続で増加しており人気が戻っています。今年度は文理コースに最難関クラスの特選クラスを新設、約320人の応募者が集まり、期待の大きさを示しました。そのほか、文理選抜クラスを進学クラスに統合、総合コース文科系クラスをリベラルアーツクラスに名称変更しています。
順天は2020年度に基準を緩和し推薦、一般入試とも応募増になったものの、以降推薦入試は減少傾向が続き、一般入試は増えたり減ったりしています。しかしその中で特選類型は増加傾向で、卒業生の約半数がGMARCH以上という進学実績が高く評価されている結果と思われます。2024年度入試では募集要項の変更があるかもしれないので要注意です。
駒込の応募者が推薦、一般入試ともに大幅減になったのは特SとSコースで出願基準を上げたため駒込の応募者が推薦、一般入試ともに大幅減になったのは特SとSコースで出願基準を上げたためです。2021年度は特Sの、2022年度はSコースの出願基準をやや厳しくしましたが、応募状況に大きな変化はなく人気の高さをうかがわせました。しかし今年度はさすがに影響がでています。ただ学力レベルは上昇傾向といえるでしょう。
聖徳学園は一般入試の応募者が増加傾向です。ICT教育に優れ、アップル認定校になっています。進学実績も好調で、昨年春は早慶上理とGMARCHが増加、今春は国公立が増えました。2024年度より新しい制服になるということなので人気はさらに上がりそうです。