2024年(令和5年)度埼玉県の私立高入試がどのような入試であったのか、主な学校をピックアップして振り返ります。
難関3校の状況
<推薦入試>
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|
慶應義塾志木 | 146 | 154 | 113 | 104 |
立教新座 | 26 | 42 | 40 | 35 |
早稲田大学本庄 | 286 | 287 | 256 | 230 |
計 | 458 | 483 | 409 | 369 |
<一般入試>
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|
慶應義塾志木 | 1,267 | 1,106 | 1,155 | 1,109 |
立教新座 | 1,504 | 1,296 | 1,524 | 1,589 |
早稲田大学本庄 | 2,577 | 2,182 | 2,628 | 2,570 |
5,348 | 4,584 | 5,307 | 5,268 |
3校合わせた応募者数をみると、一般入試では2021年度に760人、14%減っています。これはコロナ禍によって受験生が安全志向に動いたためです。しかしその翌年には2020年度並みに戻り挑戦志向が復活、今年度も若干減ったものの前年度に劣らない多くの応募者を集めました。従って、挑戦志向は続いているといっていいでしょう。
一方で、推薦入試の応募者は2021年度をピークに減少傾向で、今年度は400人を切りました。複数の高校を受験し、合格した中からもっとも進学したい学校を選ぶという受験生が増えているためと考えられます。
そんな中で慶應義塾志木の応募者数は他の2校と比べると大きな変動がないように見えますが、2019年度は1,300人以上の応募者があったので、この3年間は比較的落ち着いた入試になっています。しかも受験者数と2次合格者数との競争率は3.50→3.11→2.99→2.92倍と少しずつ下がってきており、同校としては緩やかな入試になっています。
立教新座は応募者が増加し、今年度は1,600人近くまで増加しました。しかし合格者も増やしており2023年度は700人(711人)を超えました。そのため応募者は増えたものの、実質倍率は2.30→2.13倍に下がっています。合格者を増やしたのは他校併願者が増加していることを示しているようです。
早稲田大学本庄の2023年度の応募者数は前年度よりは減ったものの、コロナ前の2020年度とほぼ同じ数で留まり人気は高いままといっていいでしょう。しかし合格者数は2020年度は694人、2019年度は519人でしたが、2021年度からは785→740→721人と700人台が続いており、やはり併願者が多くなっていることを窺わせています。
難関上位校の状況
<単願入試>
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|
栄東 | 33 | 38 | 27 | 40 |
開智 | 271 | 268 | 240 | 239 |
川越東 | 233 | 310 | 242 | 247 |
淑徳与野 | 168 | 175 | 148 | 113 |
城北埼玉 | 151 | 153 | 136 | 150 |
星野(共学部) | 269 | 299 | 149 | 163 |
開智未来 | 103 | 56 | 89 | 49 |
春日部共栄 | 208 | 240 | 273 | 280 |
大宮開成 | 223 | 112 | 160 | 202 |
獨協埼玉 | 115 | 104 | 124 | 121 |
本庄東 | 243 | 225 | 229 | 213 |
<併願入試>
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|
栄東 | 2,497 | 2,345 | 2,742 | 2,907 |
開智 | 1,578 | 1,588 | 2,021 | 1,779 |
川越東 | 1,236 | 1,317 | 1,268 | 1,254 |
淑徳与野 | 635 | 616 | 601 | 494 |
城北埼玉 | 352 | 409 | 286 | 231 |
星野(共学部) | 585 | 745 | 547 | 528 |
開智未来 | 194 | 139 | 136 | 148 |
春日部共栄 | 1,422 | 1,867 | 1,740 | 1,682 |
大宮開成 | 2,021 | 1,245 | 1,545 | 1,801 |
獨協埼玉 | 430 | 434 | 528 | 531 |
本庄東 | 1,172 | 1,251 | 1,183 | 1,231 |
次に難関上位校の選抜状況を見ていきましょう。
最初は栄東です。上記の応募者数を見ると単願者は少なく、併願者中心の入試になっていることがわかります。併願応募者は2022、2023年度と増加しており、公立私立の難関校を含めて本校を受験し、合格した中から行きたい高校に進学するという受験者が増加していると考えられます。特に特待入試の応募者は3科入試を導入した2022年度より急激に増えて(2021年度259人→647→738人)います。
開智はT、S、Dの3コースをT、S1、S2コースに名称変更し、S2の併願入試のハードルを上げました。その結果、学校全体の単願応募者数は前年度並みでしたが、併願応募者が約240人、12%の減になりました。その内訳は1/22が17%減、 1/24が14%減に対して1/23はほとんど変わっていないことから、私立併願者は微減で留まったと考えられます。
川越東の2021年度単願応募者が増加したのは出願基準の変更があったのかもしれません。しかしそれ以降は元の応募状況に戻っています。表には含まれていませんが、特待入試にも多くの応募者があり、2020年度より558→472→521→486人と推移しています。AB特待の認定だけではなく理数、普通コース合格もあるため人気が高いようです。大学合格実績では近隣の東洋大学合格者数が今春現浪合わせて200人を超えました(212人)。
淑徳与野は応募者数が減少傾向です。2022年度にコース改編していますが、改編2年目の2023年度も応募者数はさらに減り、併願応募者は500人を割り込みました。改編前より合格ラインが上がったことによるものと考えられます。また1月入試が23日の1日のみで他校と比べると少ないころも影響しているのかもしれません。
城北埼玉は2020年度にフロンティアコースを新設し、本科の基準を緩和しました。また1/23の併願Ⅱの試験科目を「3科」から「3科または5科」の選択式に変更しています。その2020年度に応募者は大幅に増加しましたが、以降少しずつ落ち着いてきているような状況です。併願Ⅱでは5科を選択する受験生が多くなっています。
星野(共学部)が2022年度に応募減になったのは近隣の山村学園がコース改編し応募者が大幅に増加した影響を受けたのかもしれません。2023年度もほぼ前年度並みの応募状況で大きな変動はありませんでした。
開智未来は単願応募者が減少傾向です。地理的に多くの応募者が集まりにくいのかもしれません。一方、併願応募者数は比較的安定しています。合格のハードルは緩和される傾向にあり、2024年度は応募者が増える可能性があります。
逆に春日部共栄は単願応募者が増加傾向です。また併願応募者が2021年度に大幅に増加したのは優遇のハードルがやや緩和されたためかもしれません。しかし2022年度からは微減が続いています。卒業生に対する国公立大学の合格割合が年々上がっており、今春は20%に達しました。2024年度入試では募集人員が増加されるため応募者は単願・併願ともに増える可能性があります。
大宮開成は近年伸びて生きている学校のひとつで、応募状況を見ても単願、併願とも2022年度より増加傾向です。2021年度に応募者が減少したのは特進選抜Sコースが募集停止になったためです。その後は募集要項の変更はありませんでしたが、2024年度は1/24の併願B入試がなくなるので注意が必要です。
獨協埼玉は2022年度に単願、併願応募者が増加し、2023年度もその数を維持しました。2024年度も募集人員、入試日程、検査項目などは変わっていないので、応募状況に大きな変動はないものと見込まれます。系列の獨協大学への合格者のうち約4割が併願推薦を利用し他大学に挑戦しています。
本庄東の単願入試は安定した応募者数で推移しており、併願入試は小幅で増減を繰り返しています。2023年度は合格の目安がやや達成しやすいものになりましたが、応募増がそのせいか、例年の動きの範囲内のことなのかわからないくらいの応募状況でした。2024年度は特進の募集人員が増加(単100→110人、併60→70人)、進学も単願が70人から80人に増加になります。また併願③の入試日が1/24から2/5に変更されます。
中堅上位校の状況
<単願入試>
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|
東京農業大学第三(推薦) | 349 | 343 | 270 | 287 |
狭山ヶ丘(推薦) | 241 | 239 | 185 | 143 |
細田学園 | 237 | 380 | 245 | 181 |
城西大学付属川越 | 95 | 119 | 148 | 136 |
浦和麗明 | 272 | 260 | 326 | 228 |
西武台 | 257 | 303 | 304 | 287 |
叡明 | 292 | 415 | 370 | 465 |
昌平 | 318 | 333 | 324 | 308 |
浦和実業(併に一般含む) | 448 | 536 | 431 | 589 |
浦和学院 | 448 | 536 | 643 | 671 |
国際学院 | 137 | 158 | 181 | 184 |
<併願入試>
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|
東京農業大学第三(推薦) | 848 | 761 | 672 | 741 |
狭山ヶ丘(推薦) | 951 | 835 | 695 | 655 |
細田学園 | 1,003 | 1,101 | 644 | 522 |
城西大学付属川越 | 408 | 346 | 348 | 370 |
浦和麗明 | 897 | 1,077 | 1,119 | 852 |
西武台 | 977 | 1,514 | 1,656 | 1,492 |
叡明 | 2,242 | 2,297 | 1,964 | 2,165 |
昌平 | 931 | 1,056 | 773 | 789 |
浦和実業(併に一般含む) | 2,536 | 2,663 | 2,931 | 3,238 |
浦和学院 | 2,529 | 2,604 | 2,749 | 2,888 |
国際学院 | 1,552 | 1,238 | 1,277 | 1,235 |
東京農業大学第三の応募者数は推薦入試の単願併願のみの数で一般入試の応募者数は含まれていません。2021年度に単願応募者が減少したのはⅡコースのハードルが上がったからで、その影響が併願入試にも及んだようです。しかし2023年度はそのⅡコースの併願のハードルをやや緩和したことから応募者が増加し2021年度並みに戻りました。このように合格のハードルを変更することが多いので注意が必要です。
狭山ヶ丘も一般入試の応募者数を除いた推薦入試のみの単願併願応募者数を表示しています。応募者数をみると単願、併願ともに減少傾向になっています。2024年度はスポーツ・文化活動に力を入れるⅣ類の募集人員を倍の80人にして募集します。ここ数年、Ⅳ類の応募者が募集数を超えているため、その対応かもしれません。そのためもっとも応募者が多いⅢ類が減らされてⅡ類と同じ120人になります。今春の大学合格実績は過去最高となったことから、人気は高まりそうです。
細田学園は応募者数の増減が激しい入試が続きます。2021年度の応募増は、2020年度に基準アップによる応募減が回復したためですが、2022年度はもっとも利用しやすかった進学βを募集停止し応募減、2023年度は最上位クラスの特進Hと特進の募集人員を増やして進学αを減らし、募集の重心を上位にシフトしたものの、それらの上位クラスを中心に応募減になりました。しかし、年々学力レベルは上がってきています。ここも2024年度の募集要項に注意したい学校です。
城西大学付属川越は単願応募者が増えており、2023年度も微減で留まりました。募集人員の変更が多く、2021年度に特進コースを80人から105人に増、翌2022年度はもとの80人に戻し、2023年度は進学コースの募集数を80人から40人に縮小しました。そして2024年度は特進コースがまた105人募集になります。ただ合格ラインに変化はなく併願応募者数は大きな変動はありません。
浦和麗明は近年伸びてきている学校のひとつです。また、募集要項の変更も毎年のように行い、合格のハードルは高くなるばかりです。2020年度に保育、福祉、調理などの専門コースを募集停止し、特選(ⅠⅡⅢ)と特進(ⅠⅡ)の2コース制に改編、2022年度は特進Ⅱを募集停止とし、特進Ⅰを特進として募集、合格ラインも上がりました。2023年度はその特進を募集停止し特選ⅠⅡⅢの募集としました。それでも2022年度までは応募者数は増加しており高い人気を示していましたが、さすがに今年度は単願、併願ともに減少しました。大学合格実績は伸びており、今の高1が卒業する2026年度では国公立早慶上理120人合格を目標としています。
西武台が2021年度に単願、併願ともに応募増になったのは、もっとも募集規模の大きい選抜Ⅰ(2021年度は240人募集)ともっとも利用しやすい進学コースの応募者が増加したためです。以降、多くの応募者を集め安定した入試になっています。2023年度は科学、技術、工業、芸術・教養、数学の5つの分野を横断的に学ぶ「STEAMコース」が新設され、単願入試に18人の応募者が集まりました。
叡明も伸びて生きている学校です。2020年度に進学Ⅱと進学Ⅲのハードルが上がり、2021年度はもっともハイレベルの特選がアップ、2022年度は進学Ⅲが募集停止となり、特進選抜がⅠとⅡに分かれました。そして2023年度は進学の募集人員が減って特進選抜と特別進学を増やし、募集の中心が上位にシフトしました。このように毎年のようにレベルアップしていますが、それでも多くの応募者が集まっており高い人気を維持しています。2024年度は特別進学ⅠとⅡ、進学ⅠとⅡをそれぞれ統合し特別進学、進学となるようです。これらがどのような合格ラインになるのか注意する必要があります。
昌平は2021年度に特進クラスの募集を停止、また特選クラスの基準を緩和し、特進アスリートを上げました。その結果、特選とともにもっともハイレベルのT特選も応募増、さらに特進の学力層が選抜クラスにシフトしたため併願応募者はトータルで増加しました。しかし翌2022年度になると特選の基準がアップし応募減、2023年度は特選が緩和、選抜がアップとなりそれぞれ増減がありました。このように毎年のように募集要項等を変更するので要注意です。
浦和実業は単願入試の応募者数は増えたり減ったりしていますが、併願入試は増加傾向が続いています。2022年4月に新2号館が、2023年5月には新1号館が完成、しかもこの年に新しい制服に変わったことも人気を高めている一因になっているようです。2024年度は選抜α・選抜の募集人員が増加(160→200人)する予定です。
浦和学院は単願、併願ともに応募者が増加傾向で人気が高まってきています。設置コースが多く、しかもそれぞれ学力レベルが異なっているため幅広い学力層を受け入れることのできるマンモス校です。2021年度以降、推薦基準は変わっていませんが、ここのところ募集人員を大幅に超過する入学生を迎えているため、2024年度は注意が必要です。なお、国際バカロレアワールドスクールの認定を受け、その募集も開始するようです。
国際学院が2021年度に応募減になっているのは花咲徳栄に移動した結果かもしれません。しかし以降は落ち着いた入試が続いています。2024年度は併設の中学校が募集停止になります。高校募集の要項に変化が生じるか注目されます。