千葉県の私立高入試は1月17日からの前期選抜と2月15日からの後期選抜の2期制ですが、後期選抜を実施する学校は15校で募集数は213人、全体(12,716人)の1.7%に過ぎません。
従って、実質的には前期選抜で入試が終わるといっていいでしょう。 そんな、千葉県の私立高入試がどのように行われたのか振り返ってみましょう。
難関3校の応募状況
最初に渋谷教育学園幕張、市川、昭和学院秀英の難関3校の応募状況から見ていきましょう。
3校合わせた応募者数は2021年度にコロナ禍によって受験生が安全志向に動いたためです。翌2022年度は挑戦志向が復活し、2020年度をも上回る応募者を集めました。そして2023年度も2022年度並みを維持しており挑戦志向は続いているといっていいでしょう。
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
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渋谷教育学園幕張(学力) | 595 | 604 | 719 | 671 |
市川(推薦+一般) | 1,023 | 954 | 1,151 | 1,211 |
昭和学院秀英 | 1,249 | 1,222 | 1,240 | 1,253 |
計 | 2,867 | 2,780 | 3,110 | 3,135 |
そんな中で渋谷教育学園幕張は約50人の応募減になりましたが、これは前年度の2022年度入試で6年ぶりに700人を超える多くの応募者が集まり、実質倍率も2021年度の2.38倍から3.10倍にアップしたことが影響したのかもしれません。しかし応募者が減った分実質倍率も下がって2.85倍になりましたが厳しい入試が続いたといえるでしょう。
市川の応募者数が1,200人を超えたのは8年ぶりです。2021年度はコロナ禍で1,000人を切りましたが人気は復活したといっていいでしょう。しかし2023年度は合格者を多く出した(一般入試623人、2022年度は481人)ため実質倍率は2.25倍から1.78倍にダウンしています。2024年度入試は、募集人員、入試日、推薦入試の出願基準など変更はありませんが、合格者が絞られ実質倍率が上がる可能性があります。
昭和学院秀英の応募者数は小幅で増減がありますが、一定の人気を保っているといっていいでしょう。実質倍率は2021年度より1.92→1.87→1.86倍とこちらも安定しています。しかし2020年度以前は2倍台で推移していることから、同校としては低めの実質倍率が続いていることになります。これは合格者数を多く出している(2020年度以前は500人台、2021年度から634→672→670人)からです。これは併願者が多く受験しているためと考えられます。
上位校の応募状況①
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
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芝浦工業大学柏 | 1,212 | 1,362 | 1,264 | 1,298 |
専修大学松戸 | 2,447 | 2,828 | 3,238 | 3,046 |
日本大学習志野 | 1,986 | 2,011 | 1,963 | 1,934 |
芝浦工業大学柏はコロナ禍の2021年度入試で応募者が150人増えて1,300人を優に超えました。学力トップ層の受け皿になったのかもしれません。しかし、最難関国公立大学を目指すグローバルサイエンスコース(GS)は実質倍率が10倍を超え狭き門となっています。2022年度は応募減によって13.00倍から10.75倍に下がりましたが、2023年度は合格者を絞った(105→92人)こともあり13.77倍まで上がって2021年度並みに戻りました。一方で国公立・難関私立大学を目指すジェネラルラーニングコース(GL)の実質倍率は2020年度より2.85→3.70→3.00→3.64倍と上がったり下がったりしています。2024年度は倍率ダウンする可能性がありますが、今春の大学合格実績では国公立の合格者数が過去最高となったということなので、高倍率は続くかもしれません。
専修大学松戸は2021、2022年度と応募増が続き、A類は2020年度からの実質倍率が2.54→2.85→3.29倍と上昇、E類も2022年度は合格者を絞ったため1.75倍から2.32倍に上がりました。このような難易度アップが敬遠されたのか、2023年度は応募減になりましたが、E類、A類ともに合格者を減らしたことからA類の実質倍率は3.54倍とさらに上がっています。2024年度も募集要項に変更はないため多くの応募者が集まりそうです。
日本大学習志野の応募者数は大幅な増減がなく、安定しています。一般入試の実質倍率も2021年度から2.06→1.90→1.94倍とこちらも大きな変動はありません。しかし、2024年度は一般入試の検査日に1月18日が加わり1月17日と2日間になるため応募者増が見込まれ、実質倍率も大きく動く可能性があります。日本大学理工学部の敷地内に高校の校地があるため同学部の合格者が多く、今春は189人となりました。
上位校の応募状況②
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
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成田 | 739 | 746 | 787 | 700 |
千葉日本大学第一 | 818 | 545 | 664 | 419 |
日出学園 | 417 | 503 | 380 | 308 |
流通経済大学付属柏(前期のみ) | 1,119 | 1,281 | 1,177 | 1,227 |
八千代松陰 | 2,217 | 2,717 | 2,631 | 2,294 |
麗澤 | 502 | 520 | 654 | 695 |
成田の応募者数は若干の増減があるものの700人台で推移していますが、実質倍率は変動が激しくなっています。特進αと進学を合わせた倍率は2020、2021年度は2倍を超えていましたが、2022、2023年度は1.3~1.4倍台に下がっています。これは合格者数を増やしたり減らしたりしているからですが、この2年間は500人以上出しているため低い倍率が続いているのです。2024年度は英検の資格による加点優遇を導入するため準2級以上の取得者は有利になります。
千葉日本大学第一の2021年度の応募者が大幅に減少したのは後期選抜を廃止したためです。翌2022年度は特進に併願推薦を導入したほか、進学の一般入試に第一志望制度を新設し応募者は増加しました。しかし2023年度は推薦入試を特進のみとしたことや出願資格を上げたため、大幅な応募減になるなどここのところ変動の激しい入試が続きます。2024年度は進学の推薦入試(単併)を復活させましたが、出願資格は変わっておらず、どれだけ応募者が増加するのか不透明です。
日出学園も応募者数の変動があります。2022年度は推薦基準を上げたために応募減、2023年度は推薦入試の募集人員を50人から20人に減らしたことが影響したのかさらに減りました。しかし、合格者数を絞ったため、実質倍率は1.61倍から1.88倍に上がっています。2024年度は募集要項の変更がないため、応募者は増えそうです。
流通経済大学柏は小幅ですが応募者数が増減しています。これは特別進学コースの応募者がこのような動きになっているためです。昨年春の大学合格実績が伸びたことも、特進の応募増の背景にあったのかもしれません。2024年度は応募減の年に当たりますが募集要項に変更があれば変わってくる可能性があります。
八千代松陰は2021年度に難関国立大や医学部、海外大学への進学を目指したAEM(英語特進)コースを新設、その年の応募者は大幅に増加しました。しかし、翌2022年度からは合格のハードルを上げており減少傾向に転じました。2024年度は募集人員、入試日等の変更はありませんが、合格ラインをどのように設定するのか注目されます。
麗澤は応募者が増加傾向です。S特進、特選合わせた実質倍率は、2020年度より1.59→1.34→1.78→1.76倍と推移しており、2022、2023年度は高めで推移しています。2024年度も募集要項の変更はありませんが、近隣の二松学舎大学附属柏の基準がやや利用しやすくなるため、本校も影響を受けるかもしれません。
中堅~上位校の志願状況
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
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東海大学付属浦安 | 711 | 648 | 676 | 583 |
西武台千葉 | 1,046 | 941 | 1,207 | 1,061 |
二松学舎大学附属柏 | 1,224 | 1,444 | 1,379 | 749 |
千葉経済大学附属 | 1,404 | 1,364 | 1,337 | 1,368 |
千葉商科大学付属 | 876 | 1,190 | 1,320 | 824 |
中央学院 | 1,147 | 1,359 | 1,108 | 1,133 |
光英VERITAS | 213 | 438 | 543 | 646 |
東海大学付属市原望洋 | 560 | 532 | 625 | 523 |
敬愛学園 | 1,899 | 1,431 | 1,740 | 1,601 |
東海大学付属浦安の2023年度入試では、募集要項の変更はありませんでしたが、応募者が大幅に減少しました。単願応募者は増加しているので人気が衰えてるとはいえませんが、安田学園や関東一(特進)など都内の学校に流出しているのかもしれません。また近隣の東京学館浦安(特別選抜)の応募者が増加しており、影響を受けている可能性もあります。2024年度は募集人員、入試日の変更はありません。
西武台千葉はアスリート選抜コースが進学コースに統合され、進学コースの単願入試でスポーツ推薦を実施する形になりました。応募状況を見ると増減を繰り返しており、2023年度は応募減の年に当たり、進学コースのほか特別選抜コースも応募減になりました。2024年度は応募増の可能性があります。
二松学舎大学柏は2023年度に進学コースの募集人員を減らし(85→50人)、B推薦(併願)を廃止、さらに併願入試の加点制度をなくしたことから、応募者は2022年度の半分近くまで減少しました。そのため、2024年度は募集人員増、加点制度の復活などで利用しやすい募集要項に戻しています。大学合格実績も伸びているため、2024年度は人気が復活し応募者が増加すると見込まれます。
千葉経済大学附属は商業科と情報処理科の後期募集人員を若干名から各10人に戻し、前期募集人員を5人ずつ減らしましたが、応募状況に変動はありませんでした。また、普通科を合わせた前期の応募状況もこのところ募集要項の大きな変更がないためか安定しています。
千葉商科大学附属は昨年の12月に新校舎が完成、今年5月には外構の工事が終了し新しい環境が整いました。その影響で2021年度、2022年度と応募者は増加しましたが2023年度は商業科のB推薦(併願)を廃止し、その他の学科・コースの出願基準を上げたため応募者は大幅に減少しました。2024年度の募集要項はまだ発表されていませんが、出願基準等に変更がなければ応募者増になる可能性があります。
中央学院の2021年度入試で応募増になったのは、前期B(併願)入試の日程を1日前倒しして日本体育大学柏と同日になったことが影響したのかもしれません。しかし2022年度には元に戻り2023年度も変動はありませんでした。2024年度も募集人員、入試日程、検査については変更ありませんが、出願基準に注意しましょう。
光英VERITASは2021年度の共学化、校名変更以降、応募者は増加傾向です。共学化に合わせて創部された野球部は高校で約80人の部員がおり、千葉県内でベスト16に入る活躍をしています。また進学実績も伸びており、今春4年制大学の進学率が9割を超えました。2024年度は1月27日に実施していた前期Ⅱ(一般③)入試が廃止されます。応募者数が少なく影響はないと考えられますが注意しましょう。また推薦基準の加点制度の項目に「部活動部長会長は+1」が追加されました。2024年度の高い人気は続きそうです。
東海大学付属市原望洋は2021年度に利用しやすいように募集要項の若干の改定がありましたが、その効果が翌2022年度に現れたような形で応募増、2023年度はもとの応募状況に戻りました。2024年度は募集要項に変更はなく、落ち着いた入試になりそうです。スクールバスが充実しており全県から生徒が通学してきますが、2025年度から一部の停留所が使用できなくなるようなので確認しておきましょう。
敬愛学園は2022年度に今の特別進学、進学の2コース制に改編、同時に出願基準を緩和するなどで大幅に応募増になりましたが、翌2023年度は基準を上げて減少と変動があります。しかし、2024年度は基準をさらに上げるほか、進学コースのB推薦を廃止、入試日も変更し後期選抜を取りやめるするなど大きな変更があるので要注意です。2022年夏に新体育館が完成、校舎の改築工事も進行するようです。