
埼玉公立地域別入試概況の3回目は、本庄市・熊谷市・深谷市・秩父市の県北西部と加須市・越谷市・八潮市・春日部市・久喜市などの県東部の学校が対象です。
本庄市・熊谷市・深谷市・秩父市

この地域は地理的に通学圏が限定されることから高倍率になりにくく、県内でもっとも倍率が低い地域になっています。地域の生徒数も減少していることから、今年度も9校中6校が倍率ダウン(0.05ポイント以上の差)。上がったのは深谷第一の1校だけでした。定員割れになった学校は前年度と同じ4校ですが、0.6倍台(児玉)、0.7倍台(深谷)、0.8倍台(妻沼)と募集人員に大幅に届かない学校がでてきたため、実質倍率は前年度並みで留まりました。前年度の定員割れはすべて0.9倍台であったことから、この低倍率は通信制志向によるものと考えられます。
熊谷
熊谷は2020年度より入試状況が変わりました。2019年度までは志願者数370~400人で、倍率も1.2倍前後を維持していましたが、2020年度から330~360人程度に減り1.0~1.1倍台に下がりました。今年度も前年度より18人の志願者減で倍率は4年ぶりに1.0倍台に下がり、不合格者の少ない緩やかな入試になりました。来年度は1学級減で近年にない7学級募集になり、深谷市の生徒数が微減となる変化があります。このため志願者数の大幅な増加は見込めないのですが、今年度並みの335人としても倍率は1.21倍にアップします。
熊谷女子
熊谷女子は2021年度からの倍率が1.13→1.08→1.31→0.99→1.02倍と上がったり下がったりする隔年現象が見られます。前年度は珍しく定員割れになり、受検者が全員合格。今年度は志願者増の年に当たりましたが9人の微増で留まり、かろうじて1倍台に乗った形です。しかし、不合格者は5人のみと最近の10年間では前年度に次ぐ緩やかな入試になっています。来年度は1学級減での募集になることから、志願者減になっても倍率は上がる可能性があります。
熊谷西
熊谷西は42人の志願者減となり、4年ぶりに300人に達することができず、倍率は6年ぶりに1.0倍台に落ち込みました。不合格者数は6人のみで最近の10年間ではもっとも少ない数です。2021年度より4年間1.1倍台で安定していましたが、今年度急激に下がったのは熊谷市や本庄市などの生徒数が減少したことや、正智深谷、東京農業大学第三などの私立高に移動したためかもしれません。来年度は熊谷、熊谷女子が学級減になるためその影響を受けそうです。
児玉
児玉「普」はこの10年間定員割れの入試が続きます。今年度は20人の志願者減で倍率は0.6倍台に落ち込みました。農業系(生物資源科と環境デザイン科)と工業系(機械科と電子機械科)の専門学科を併設する県内唯一の学校ですが、専門学科も倍率は低迷しています。
深谷
深谷は49人の志願者減で倍率は0.7倍台にダウン。最近の10年間でもっとも少ない人数と倍率を記録しました。創立50周年を機に制服をモデルチェンジした2023年度に1倍を超えて以降は、2年連続志願者減になっています。自転車のみの通学者で半数以上を占めており、地元生が入学生の中心です。今年度は本庄市や熊谷市の生徒数が減少していることから、その影響を受けた形です。国公立大学や中堅私立大学をめざす特進クラスが設けられていることが特徴の一つです。
深谷第一
深谷第一は2020年度から志願者は300~310人程度まで減り、倍率は1.1倍台で推移するようになりました。2019年度より、8学級規模から7学級規模に縮小されたことが一因と思われます。前年度は志願者が278人に落ち込み珍しく全入になったものの、今年度はその反動で36人の志願者増で1.1倍台に回復し、標準的な入試に戻りました。2025年度より制服が変更されています。また、2年次より大学を一般受験で挑戦する生徒向けの一般受験クラスがあります。
本庄
本庄は2022年度より1.1倍前後で推移しています。今年度も志願者は13人の微増で、ほぼ前年度(1.11倍)並みの倍率になりました。県北部唯一の進学重視型単位制高校というのが特徴で、自分の進路に合った科目を少人数で学習できるところが魅力です。
妻沼
妻沼は隔年現象の動きがあります。2021年度からの志願者数は91→121→101→121→104人と増減を繰り返し、倍率は0.76→1.02→0.85→1.02→0.87倍と1倍前後を上下しています。志願倍率が1倍を超えても全員合格することがあり、不合格者はほとんどでていません。基礎学力を身につけるため国数英を「学校設定科目」とし、これを「カルティベートタイム」と称しています。
秩父
秩父は来年度より皆野と統合し新生「秩父」として開校します。普通科160人、国際教養科40人の募集になります。旧秩父の入試状況を見ると、この3年間は定員割れが続いています。地理的に孤立しており新校になっても高倍率になりにくい環境にあります。
加須市・羽生市・越谷市・八潮市・三郷市・松伏町・春日部市・久喜市・蓮田市・白岡市・宮代町・杉戸町

この地域全体の志願者数は157人減で、倍率も0.02ポイントダウンしました。しかし、越谷東と栗橋北彩の2校が学級減になり、羽生第一(0.93→0.80倍)、松伏「情報ビジネス」(0.98→0.45倍)、三郷(1.03→0.68倍)が低倍率になったことで合格者数が144人減り,実質倍率は0.01ポイントアップしました。志願者数減の主な要因は県南西部と同様で,この地域に中堅校や通信制と競合する学力層の学校が多く,通信制志向の影響を受けたためと考えられます。上記の表の春日部から杉戸までの志願者数の合計は前年度とほとんど変わっていませんが,それ以降の学校では全体の9割弱の135人減となっていることがそれをあらわしています。
春日部
春日部は前年度に1.5倍の高倍率を記録し、受検生の3分の1にあたる170人が不合格になる激戦になりました。今年度はその反動で43人の志願者減となり、1.3倍台に下がりました。それでも志願倍率1.38倍は本校としては高い方の倍率なので、一定の人気は維持したといえるでしょう。2019年度から2023年度までは1.3倍前後の倍率が続いていたことから、来年度はやや倍率が下がるかもしれません。
越谷北
越谷北は2023、2024年度と1.1倍台の本校としては低めの倍率が続いたことや、2024年春の国公立大学の合格実績が飛躍的に向上したことで37人の志願者増となり、3年ぶりに400人台に上り倍率も1.2倍台になりました。入学生の1割強がさいたま市からの生徒ですが、同市の生徒数が増加しており志願者数に影響したかもしれません。今春の国公立大学の合格実績は昨春ほどではありませんでしたが、高い実績を維持したことから、来年度も高い人気を維持すると予想されます。
不動岡
不動岡の志願者数は増加傾向で、2021年度より421→441→467→477→482人と推移。倍率は1.32→1.23→1.30→1.33→1.35倍で少しずつ上がってきています。今年度の不合格者は受検生の4分の1に該当する124人で、最近の10年間では2017年度に次ぐ厳しい入試になりました。外国語科(2022年度より募集停止)があったことから国際理解教育に熱心で、オーストラリア、フランス、マレーシアなどへの研修旅行や第二外国語を学べることなどが特徴です。また、文科省からSSHの指定も受けてます。
越ケ谷
越ケ谷は人気校ですが、2019年度までの1.4倍以上の高倍率から、2020年度以降はやや下がり1.3倍台が続くようになります。周辺地域に叡明や春日部共栄、獨協埼玉など私立の人気校が多く、私立志向によって志願者数が減っているのかもしれません。今年度も1.35倍と近年の標準的な倍率を維持しました。入学生は越谷市、草加市からの生徒で約半数を占めています。来年度は、この地域の生徒数が微減になることや私立志向の高まりを考慮すると、あまり高い倍率にはならないのではないでしょうか。
越谷南
越谷南は2021年度まで倍率が変動していましたが、2022年度以降1.4倍台で高倍率安定傾向になっています。不合格者も受検生の約3割に該当する130人程度で厳しい入試が続きます。通学圏が広く、地元越谷市や草加市、三郷市、川口市などの周辺地域のほか、春日部市やさいたま市などからも多くの受検生がきている人気校です。2026年度より制服の夏服が変わるということもあり、来年度も高倍率は維持すると見込まれます。
春日部女子
春日部女子は前年度に1.2倍台の本校としては高い倍率になったことから、今年度はその反動があり、40人の志願者減で4年ぶりに1.0倍台に下がり、一転して緩やかな入試になりました。志願者数は270~280人程度が標準的な人数なので、今年度はかなり少ないといえます。共学志向の影響も受けたのかもしれません。ユネスコスクールの認定校というのが本校の大きな特徴です。
春日部東
春日部東は2022年度より志願者数が減り340人前後、倍率1.0倍台で推移するようになりました。それまでが360~430人、1.1~1.3倍台の間で変動していたので、私立志向の影響を受けているといえるでしょう。今年度も志願者数は8人の微減で倍率も前年度(1.09倍)並みでした。来年度も大きな変動はなさそうです。
杉戸
杉戸は2020年度に8学級から7学級規模の募集に変わってから、志願者数は280人程度、倍率1.0倍台で推移していましたが、2024年度に49人の志願者増で1.20倍にアップ。今年度の2025年度はその反動もなくさらに志願者が37人増加。最近の10年間でもっとも高い倍率になりました。不合格者数も受検生の4分の1の91人を数えています。校内の様々な取組や積極的な広報活動などで人気を集めているようです。ただここまで高くなると来年度の志願者減は必至で倍率は下がる見込みです。
越谷西
越谷西は前年度に珍しく定員割れになったことから、今年度は17人の志願者増となりましたが、倍率は1.02倍にとどまり、緩やかな入試が続くことになりました。私立志向の高まりで志願者数は伸び悩んでいるようです。駅から距離があり、通学圏も限られています。地元越谷市、さいたま市、春日部市からの入学生で全体の8割強を占め、自転車通学がメインです。このように広範囲から生徒が集まる環境でないことも倍率が上がらない要因になっているようです。
久喜
久喜は隔年現象があり、2022年度からの志願者数は303→314→289→307人、倍率は1.09→1.13→1.04→1.10倍と推移しています。一方、近隣の久喜北陽は348→315→342→325人と逆の動きになっており、両校の間で受検生が行き来をしている様子がうかがえます。来年度は久喜が倍率ダウン、久喜北陽が倍率アップの年になります。
羽生第一
羽生第一はこの10年間で不合格者がでたのは2017年度の1回しかありません。志願倍率が1倍を超えて募集人員を上回っても全員合格させているからです。最近では2022年度に1.04倍になりましたが、受検者数163人全員合格しました。2023年度からは定員割れが続き、今年度は22人の志願者減となり倍率は0.8倍まで落ち込みました。来年度は志願者増が予想されますが、緩やかな入試には変化はないでしょう。
越谷東
越谷東は前年度の増学級から元の7学級募集に戻りましたが、それに合わせて志願者も38人減少。倍率は前年度(1.08倍)並みを維持しました。本校の志願倍率は1.0~1.1倍台で推移することが多いので、今年度は標準的な入試であったといえます。入学生は地元越谷市の生徒で約半数を占め、自転車通学が4分の3となっています。このような地元中心の入試になることが倍率の変動を抑えているようです。
鷲宮
鷲宮は2020年度以降、志願者数が270~300人程度、倍率は1倍前後で緩やかな入試を行っています。今年度は微増で倍率はややアップしましたが、大きな変動ではありませんでした。入学生は久喜市と加須市で約半数を占めており、地元中心の入試になります。近年の私立志向によって倍率は上がりにくいようです。
庄和
庄和は2021年度から志願者数が減少します。それまでは200~230人ほどで推移していましたが、以降150~180人程度になっています。今年度もほぼ前年度(1.16倍)並みの倍率を維持しました。これは2021年度より募集学級数が5学級から4学級規模に縮小されたからですが、私立志向・通信制志向の影響もあるようです。2024年度より新しい制服に変わっています。
三郷北
三郷北も同様で2022年度より志願者数は260~300人程度から240~250人程度に減少しました。募集学級が7学級から6学級規模に縮小されたためです。一方で倍率は1.0倍台が続き、安定した入試が続いています。今年度より国際理解教育を推進。英語によるコミュニケーション力向上などに取り組んでいます。
松伏
松伏「普」は2022、2023年度と定員割れが続いた後、2年連続で志願者増となり、今年度は6年ぶりに1.1倍台に上がりました。情報ビジネスコースと音楽科が併設されているため、普通科の生徒も「ピアノ基礎」や「簿記」「情報処理」といった科目を学ぶことができます。「情報ビジネスコース」は志願者が半減し、最近の10年間でもっとも低い倍率になりました。普通科から第二志望者を受け入れましたが募集人員を埋めることはできませんでした。
白岡
白岡は2021年度から2023年度の3年間定員割れの入試が続きましたが、2024年度に志願者増となり1倍を超え、今年度もほぼ同じ人数を維持しました。来年度は通信制志向の影響などから志願者減になるかもしれません。部活動が活発で加入率は9割を超えています。
宮代
宮代の志願者数は2021年度より206→188→205→192→209人。倍率は1.04→0.95→1.04→0.97→1.06倍と隔年現象の動きになっています。今年度は志願者増、倍率アップの年に当たり、前々年度並みの入試になりました。来年度は倍率ダウンの年に当たりますが、蓮田松韻の募集減の影響で志願者は増えるかもしれません。
八潮フロンティア
八潮南は来年度より八潮と統合し「八潮フロンティア」と校名を改め、新たな学校としてスタートします。設置学科は普通科とビジネス探究科でそれぞれ120人の募集人員になります。八潮南の入試状況をみると、この3年間は募集人員の79人を数名上回り、1.0倍台で安定した入試になっています。一方、商業系学科は2学科あり商業科と情報処理科を合わせた募集人員159人に対し、2021年度からの志願者数は147→158→142→171→119人と増減を繰り返しています。今年度は統合前の入試であったことから大幅に減少しました。来年度は普通科は募集数が増えることから定員割れになる可能性が高く、ビジネス探究科は逆に募集減になるため1倍を超えると見込まれます。
栗橋北彩
栗橋北彩の志願者数は2022年度より193→180→159→113人と減少傾向で、倍率も0.97→0.91→0.80→0.72倍と下降しています。今年度は募集学級数が減り、5学級から4学級規模になりましたがそれ以上の志願者減になり、この10年間でもっとも低い倍率になりました。0.7倍台も初めてです。通信制志向の影響を受けていると考えられるので、来年度も高倍率にはならないでしょう。
蓮田松韻
蓮田松韻の志願者数はコロナ禍の2021年度に194人(0.98倍)から119人(0.60倍)へと大幅に減少し、その後135人(0.68倍)、122人(0.62倍)と低迷していました。しかし近隣の岩槻北陵が募集停止になった2024年度に30人増の152人(0.77倍)に回復。そして今年度も150人台を維持しました。来年度は1学級減の160人募集になります。今年度と同じ志願者数を維持した場合は1倍になりますが、宮代などに志願者が流れる可能性もあり、定員割れが続くのではないでしょうか。
三郷
三郷も八潮が募集停止になった2024年度に42人の志願者増となり、倍率は1倍を超え(1.03倍)4年ぶりに不合格者がでました。しかし今年度はその反動なのか、66人の大幅減となり倍率は0.6倍台まで下がりました。来年度は八潮フロンティア開校の影響を受けそうです。