
千葉県の地域別公立高入試概況の第3回は市川市,野田市,柏市,流山市などの第3学区と成田市,佐倉市,四街道市などの第4学区の学校です。
<第3学区 野田市,柏市,流山市,我孫子市,鎌ケ谷市>

この3学区全体の志願者数は前年度とほとんど変わらなかった(-16人)ものの,倍率は0.02ポイント上がりました。これは沼南高柳,流山北,我孫子東の3校が学級減,学級増は柏の葉「普」の1校だけで全体の募集数が80人減ったためです。
上記の学校を東葛飾から柏中央までの6校,流山おおたかの森から市立柏までの4校,野田中央から関宿までの8校の3グループに分けると,東葛飾から柏中央までの志願者数は103人の増,流山おおたかの森から市立柏までの志願者数は109人の減,野田中央から関宿までの8校の志願者数は10人減と傾向がはっきり分かれました。
もともとこの3つのグループの倍率の格差はありました。それが今年度,東葛飾などの第1グループで倍率ダウンしたのは募集増になった柏の葉「普」だけで全体的には高い倍率を維持し,一方で流山おおたかの森からの第2グループは我孫子,柏陵,市立柏「普」の3校で0.1ポイント以上倍率ダウンし第1グループとの差が拡大しました。また第3グループで倍率ダウンしたのは2校のみで半数の4校で倍率が上がったものの,1倍を超えた学校は沼南高柳だけとなり低倍率傾向からは抜け出せませんでした。
この結果,3つのグループが東葛飾から流山おおたかの森と我孫子から関宿までの2つのグループに集約され,一層倍率格差が拡大したのです。 この地域は4学区と2学区からの流入が多く,3学区からは流出が少ない流入過多になっています。そのため倍率が動きやすい傾向があるようです。
東葛飾
東葛飾は2022年度からの志願者数が447→480→466→492人,倍率が1.86→2.00→1.94→2.05倍と隔年現象があります。今年度は志願者増の年で2021年度以降の最高倍率を記録,もともと厳しい入試になりますが,今年度の不合格者は受検生の半数近くに迫りました。一方で受検棄権者は11→10→19→21人と増加傾向で私立志向の影響もみられます。入学生は地元柏市から約3割,3学区全体では6割程度になります,ほか2学区の松戸市から約2割程度,隣接県協定により茨城県からも数%が進学してきています。
柏
柏「普」は前年度並みの倍率を維持しましたが,2022年度からの志願者数は397→370→360→355人と少しずつ減少しています。私立併願校に専修大学松戸,流通経済大学柏,芝浦工業大学柏,土浦日本大学など人気の大学附属校が多いため,近年の私立志向の影響を受けているのかもしれません。入学生は地元の柏市からの生徒で4割強を占め,3学区全体でも7割強と地元学区中心の入試になります。他学区からは2学区の松戸市が1割強,隣接県協定により茨城県からも数%の進学者がいます。
鎌ヶ谷
鎌ヶ谷は2年連続で志願者増で今年度は31人増え1.5倍台に上がりました。2021年度以降の最高倍率になり,受検生の3分の1が不合格になる激戦でした。併願校としてよく利用される二松学舎大学附属柏や八千代松陰などの合格ラインが上がっていることから,本校への移動があったのかもしれません。3学区の学校ですが入学生は2学区の船橋市からの生徒がもっとも多く全体の3割弱を占め,同じく松戸市からも1割強進学しており,2学区全体で約5割となっています。3学区からは柏市,鎌ヶ谷市,流山市からの生徒が多いものの全体の4割弱に過ぎません。来年度は反動で志願者減が予想されますが,今春の国公立大学の現役合格実績が過去最多を記録したことから,人気は衰えないかもしれません。
柏南
柏南は高い人気を得て毎年高倍率での入試になります。今年度は前年度の倍率アップの反動もなく,ほぼ前年度並みでしたが2021年度以降の最高倍率でした。不合格者は2年連続で受検生の3分の1を超えています。入学生は地元の柏市から約3割,流山市から1割強,我孫子市から約1割などで3学区全体では3分の2を占めます。他学区からは2学区の松戸市の生徒が多く約2割が進学しています。
柏の葉
柏の葉「普」は募集学級数の変動が激しい学校です。2022年度に6学級から7学級募集に増えたあと,2024年度に6学級に戻り,今年度はまた7学級募集になりました。志願者数は41人増えましたが,募集増に吸収されて倍率はやや下がりました。それでも1.4倍台を確保しており,受検生の約3割が不合格になる厳しい入試が続くことになりました。併設の「情報理数科」も高倍率入試が続きますが,2022年度からの志願者数は69→59→65→58人,倍率は1.73→1.48→1.63→1.45倍と隔年現象があります。4年制大学への進学率が上昇傾向で,2022年春より70.6→73.7→76.4→80.1%と今春は80%台に上がりました。
柏中央
柏中央の2021年度~2024年度の志願者数は397→436→370→425人,倍率は1.24→1.36→1.16→1.33倍と隔年減少がありました。今年度は志願者減,倍率ダウンの年でしたが逆に7人増となり倍率も前年度並みを維持しました。流山市からの入学生が2割弱いて,同市の生徒数が増加しているため志願者が減らなかったのかもしれません。入学生は地元の柏市がもっとも多く約4割,次いで流山市,2学区の松戸市(1割強)の順になっています。
流山おおたかの森
流山おおたかの森「普」は前年度の倍率ダウン(1.52→1.25倍)の反動と流山市の生徒数増,さらに前年度の我孫子の倍率アップを敬遠した受検生が移動してきたようで30人の志願者増になりました。不合格者数は100人を超えていますが,本校としては標準的な入試であったといえるでしょう。国際コミュニケーション科があることから国際理解教育が特徴で,海外への語学研修や留学生との交流を行っています。
我孫子
我孫子の2021年度からの志願者数は299→353→317→382→342人,倍率は0.93→1.10→0.99→1.19→1.07倍と隔年現象があり,今年度は志願者減の年でした。例年倍率が下がる年は2021年度と2023年度のように定員割れになっていました。しかし今年度は1倍を超えており不合格者がでています。来年度は倍率アップの年で,特に今年度倍率アップした流山おおたかの森からの移動によって志願者増になる可能性が大きいと予想されます。教員基礎コースが設置されています。また国立・私立難関大学に向けた特進クラスもあります。
柏陵
柏陵は前年度の倍率アップ(1.15→1.28倍)の反動で36人の志願者減になり,前々年度並みの倍率に戻りました。松戸六実に移動したと考えられます。入学生は地元の柏市から約4割,2学区の松戸市から2割強でこの2市で6割を占めており,通学圏は比較的限定的です。ほかに流山市から1割,我孫子市から1割弱などとなっています。
市立柏
市立柏「普」も柏陵と同じで前年度の倍率アップ(1.15→1.24倍)の反動で63人の志願者減になり1.0倍台にダウン,柏陵が一定の人気を保った一方で本校は不合格者の少ない緩やかな入試になりました。普通科には幅広い進路に対応した一般クラス,希望の大学への進学を目指す総合進学クラス,英語力を身につけ海外語学研修やホームスティを実施する国際教養クラスが設けられています。
野田中央
野田中央には隔年現象があり,2021年度からの志願者数は303→356→307→343→320人,倍率は0.95→1.11→0.96→1.07→1.00倍と推移しています。今年度は倍率ダウンの年で志願者減になり募集人員を同数の人数になったものの,受検棄権者が1人あり欠員が生じました。2年次より1ランク上の大学を目指す特進コースと大学進学から就職まで幅広い進路に対応する総合コースに分かれます。
流山南
流山南はほぼ前年度並みの志願者数(269→271人)になり倍率も動きませんでした。通信制高校と競合する位置にあり,受検者層が薄くなっているようで2021年度以降で4回目の定員割れです。入学生は地元流山市より隣接する松戸市からの生徒が多く約3分の1,流山市と柏市からそれぞれ4分の1で,この3市で8割強を占めています。1年次より教養コースとスポーツ健康コースに分かれます。
鎌ヶ谷西
鎌ヶ谷西は新しい制服になった2023年度より志願者は増加傾向です。2022年度からの推移をみると124→135→142→165人となり今年度も23人増えました。倍率も0.52→0.68→0.71→0.83倍と上昇傾向です。しかし1倍には至らず,定員割れからは抜け出せていません。入学生は2学区の松戸市から3割弱,船橋市から2割強で合わせて5割弱と柏市(約2割),鎌ヶ谷市(約1割)など地元3学区より他学区からの入学生が多い学校です。
沼南高柳
沼南高柳は1学級減で募集,志願者数は8人の微減でしたが倍率アップし2021年度以降で初めて1倍を超えました。入学生は地元柏市から4割強,2学区の松戸市から2割強とこの2市で3分の2を占めています。2028年度より沼南と統合し定時制と通信制のフレキシブルスクールに改編される予定です。
流山北
流山北も1学級減での募集でした。志願者数は前年度より13人減り2021年度以降でもっとも少ない人数でしたが倍率はアップしています。通信制高校と競合する位置にあり,その影響を受けていると考えられます。地域連携アクティブスクールの1校でインターンシップ(就業体験)や地域の方による学習サポートなどを実践しています。
我孫子東
我孫子東の志願者数は2021年度より2024年度まで240→209→165→136人と減少傾向で,倍率も1.00→0.87→0.69→0.57倍と下降傾向でした。前年度は0.5倍台の低倍率で多くの欠員が生じました。やはり通信制志向の影響を受けての動きと考えられます。しかし今年度はその反動で志願者が30人増,しかも1学級減での募集になったため倍率は0.8倍台に上がりました。定員割れに変わりはなかったものの3年前の水準に戻った形です。入学生は地元我孫子市から3分の1,柏市から2割弱になっています。また4学区の印西市が約2割,2学区の松戸市が1割弱で,他学区からの入学生も多い学校です。
沼南
沼南はこの4年間,志願倍率0.4倍前後で募集人員の半分の志願者も集まらない状態が続いています。今年度は2022年度,2023年度の0.36倍をわずかに下回り,2021年度以降の最低倍率を記録しました。2028年度より沼南高柳と統合する予定になっており,来年度からの入試にも影響がでてきそうです。
関宿
関宿はさらに低倍率で2年連続0.2倍台で推移しています。地理的に他校への流出が多い割に流入が少ない環境にあるため,今後も高い倍率にはなりそうもありません。野田市内の3つの中学校と連携した一貫教育をおこなっています。高2からは教養コースと情報ビジネスコースの2つのコースに分かれます。
<第4学区 成田市,佐倉市,四街道市,八街市,印西市,白井市,富里市,印旛郡内全町(酒々井町,栄町)

4学区の学校の志願者数は前年度より148人の減り,倍率は0.02ポイント下がって1.15倍になりました。不合格者数も約2割減で全体的には緩やかな入試になったといえます。しかし上記の11校中倍率アップ(0.05ポイント以上の差)したのは7校で,ダウンの4校を大幅に上回りました。
一見矛盾した動きになったわけですが,これは前年度の倍率の学校間格差が解消され落ち着いた入試になった学校が多かったためです。前年度は1.3倍以上の高倍率になった学校は3校あり,特に佐倉と成田国際は1.5倍を超えました。しかし今年度は1.3倍台の成田国際の1校だけでした。
一方で前年度1校もなかった1.2倍台の学校が4校に増え,定員割れの学校が4校から1校に減り1.0~1.2倍台に8校が集まる(前年度4校)など倍率の平準化が図られました。
この結果,不合格者が減って合格者が増え,欠員も大幅に減少したのです。 4学区は2学区や1学区,3学区などの学校に流出する生徒が多い割に流入する生徒が少なく流出過多の学区といえます。その流れによって倍率も大きく変動するようです。
佐倉
佐倉「普」の2021年度から2024年度の倍率は1.4~1.6倍で推移し厳しい入試が続いていました。しかし今年度は74人の志願者減で1.2倍台にダウン,この5年間でもっとも低い倍率に落ち込んでいます。前年度に倍率アップし受検生の3分の1が不合格になる激戦になったため,その反動で八千代に移動したのかもしれません。来年度は揺り戻しが予想され,志願者増になる可能性が高いので要注意です。大学合格実績は上昇しており,今春の国公立大学の合格者数は現浪合わせて140人を超え平成時代からの最高値を記録しました。早慶上理GMARCHの実績も伸びています。
成田国際
成田国際「普」は2022年度から2024年度の3年間1.5倍台の高倍率が続きましたが,今年度は33人の志願者減で1.3倍台にダウンしました。例年の高倍率が敬遠されたことと成田市の生徒数が減少したことも影響したのかもしれません。「国際科」が併置されていることから国際理解教育に熱心で海外に5つの姉妹校があり交流を続けています。入学生は地元の成田市から2割強,佐倉市から2割弱,4学区全体で6割強と自学区中心の入試になります。他学区からは千葉市や八千代市から1割弱の入学生がいます。
四街道
四街道は前年度に倍率ダウンし,普通科の平均倍率を下回る緩やかな入試になったことから,今年度は反動で50人の志願者増となり前々年度の倍率に戻りました。来年度は志願者減になるかもしれません。千葉市に近いことから同市からの入学生がもっとも多く全体の3分の1程度に上っています。地元四街道市は2割程度で,佐倉市,八街市など4学区全体で6割程度です。
印旛明誠
印旛明誠の2022年度からの志願者数は195→245→212→229人,倍率は0.98→1.23→1.06→1.15倍と隔年現象の動きになっています。今年度は志願者増,倍率アップの年で17人増えて倍率は普通科の平均倍率(1.16倍)に近い標準的な入試になりました。進学重視の単位制で希望の大学への合格を目指す「MEISEIアカデミー」という学力アップのための様々な取り組みを行っています。
成田北
成田北は59人の志願者減で1倍を切って4年ぶりに定員割れになりました。印旛明誠や佐倉東に移動したのかもしれません。1倍を超える年が多い上300人程度が本校の標準的な志願者数なので来年度は倍率アップする可能性があります。医療コースが設置されているのが最大の特徴で医療従事者として必要な資質を育みます。そのため卒業後は医療系の専門学校に進学する生徒が多くなっています。
佐倉東
佐倉東「普」の倍率は0.83→1.08→0.87→1.16倍と隔年現象の動きがあります。今年度は倍率アップの年で,志願者数は46人増えて2021年度以降の最高倍率になりました。来年度は倍率ダウンの年になるので志願者減が予想されます。
富里
富里は2022年度から2024年度までの3年間,志願者数190人前後,倍率0.95倍前後で安定していました。しかし,今年度は学級減での募集となったため変動がありました。志願者は27人減りましたが倍率は4年ぶりに1倍を超えたのです。前年度定員割れだった佐倉東への移動があったのかもしれません。来年度は志願者が戻ってくる可能性があります。
白井
白井は前年度の2024年度入試で志願者が55人の大幅増になり倍率は1.3倍台に急騰しました。印西市や松戸市からの入学生が増えており,これらの地域からの志願者が増加したようです。しかし今年度は反動で70人減って1.0倍台に下がり本来の入試状況になりました。印西市からの入学生が2年前の人数に戻っていることから,同市からの志願者が減ったようです。来年度も1.0倍前後の入試になるのではないでしょうか。
四街道北
四街道北の2022年度~2024年度の志願者数は319→287→270人と減少傾向でしたが,今年度は27人の志願者増となりました。倍率は1.14→1.20→1.13→1.24倍と隔年現象的な動きになっています。志願者が300人を超えた2022年度の倍率が低かったのは募集学級増になったためです。来年度は倍率ダウンの年に当たるのでやや緩和されそうです。保育基礎コースが設置されているのが最大の特徴です。
佐倉西
佐倉西は2021年度以降4年間定員割れの志願状況が続いていました。しかし今年度は9人増えて初めて1倍を超えました。ただ志願者数は多い数ではないので,来年度も大きな変動はないのではないでしょうか。
八街
八街「総合」は1学級減での募集となり,それに合わせて志願者も34人減りましたが倍率はアップし1倍を超えました。今年度の志願者数は2021年度以降でもっとも少なく,学級減のほか通信制志向の影響も受けた結果と考えられます。