
千葉県の地域別公立高入試概況の第4回は銚子市,旭市,匝瑳市などの第5学区,東金市,山武市,大網白里市などの第6学区,茂原市,勝浦市,いすみ市など第7学区,館山市,鴨川市,南房総市などの第8学区,木更津市 市原市 君津市などの第9学区の学校です。
目次
<第5学区 銚子市,旭市,匝瑳市,香取市,香取郡内全町(神崎町,多古町,東庄町)>

第5学区全体の志願者数は前年度より49人減ったものの,県立銚子で学級減になったため倍率は前年度と同じになりました。各校の状況を見ても7校中4校がほぼ前年度並み(0.05ポイント未満の差)の入試になり,その他はいずれも定員割れで大きな変動はありませんでした。
5学区は4学区から受検生の流入があるものの,他学区への流出は少なく,学区内の生徒の多くは自学区の学校を受検しているようです。そのため今年度は学区内の生徒数が微減で留まったことで倍率が動かなかったと考えられます。
佐原
佐原「普」は2022年度からの志願者数が258→245→254→249人と250人前後で推移,倍率も1.08→1.02→1.06→1.04倍と低めながら安定しています。この地域の一定の学力層が毎年本校に志願していることがうかがえます。入学生は地元香取市から約3分の1,隣接県協定により茨城県から4分の1,4学区の成田市から2割程度の生徒がきています。
市立銚子
市立銚子「普・理」は2021年度から2023年度まで7学級募集であったことから,志願者数は271→298→271人で隔年現象的な動きがありました。しかし2024年度に6学級募集に縮小されたことで志願者数は250人台に減り,今年度も変わりませんでした。倍率の流れをみると2021年度より2024年度まで0.97→1.06→0.97→1.06倍と上がったり下がったりしており,この流れから今年度は倍率ダウンの可能性がありました。しかし前年度並みを維持したのは受検者層が固定していることや市内の生徒数が前年度と変わらなかったことが影響したと考えられます。普通科と理数科の2学科設置されていますが,入試では2学科合わせたくくり募集になり,2年次から普通科と理数科に分かれます。
佐原白楊
佐原白楊は2023年度以降の志願者数が200人台で推移しており,倍率も1.0倍台で安定しています。入学生は地元の香取市から4割弱,成田市から3割強,茨城県からは2割弱で,この3つの地域で全体の9割近くを占めており通学圏が限定しています。このことが安定した志願者数が集まる要因になっていると考えられます。佐原は男子の多い学校ですが,本校は前身が女子校であったため女子が6割強と多く在籍しています。
匝瑳
匝瑳「総合」は,2021年度から2023年度まで5学級募集の「普通科」の志願者数が206→173→209人と推移していました。これは市立銚子と逆の動きで両校の間で受検生の行き来がみられていました。2024年度に総合学科に改編され合わせて6学級募集になり,志願者数は若干増えたものの0.8倍台でとどまりました。倍率だけ見ると2021年度から2024年度まで1.03→0.87→1.05→0.89倍と隔年現象の動きがあるので,今年度は志願者増が予想されましたが前年度並み(214→210人)でとどまり定員割れが続くことになりました。市立銚子の志願者数も増えていないので今年度は受検生の移動はなかったようです。
県立銚子
県立銚子は1学級減での募集となったことから志願者が16人減となったものの倍率はアップしました。しかし1倍にはとどかず3年連続で定員割れの入試になりました。女子校の伝統があるためか女子の入学生が多く男子は4割程度です。防災教育が本校の特徴の一つになっています。
小見川
小見川の志願者数は2022年度より145→131→146→131人,倍率は0.91→0.82→0.91→0.82倍と隔年現象の動きになっています。今年度は志願者減,倍率ダウンの年で,前々年度の志願者数と倍率に戻りました。入学生は地元香取市からで8割強を占め地元中心の入試になります。そのため志願状況も変動がなく固定された動きになるようです。既設の福祉コースに加え,2024年度より医療コースが設置されました。
多古
多古「普」も2022年度から隔年現象の動きがあり,志願者数は51→39→58→47人,倍率は0.64→0.49→0.73→0.59倍と推移しています。今年度は志願者減,倍率ダウンの年でした。「園芸科」含む入学生は地元多古町から3分の1,成田市から2割強,香取市から2割弱でこの3地区から4分の3を占め地元学区中心の入試になっています。
<第6学区 東金市,山武市,大網白里市,山武郡内全町(九十九里町,芝山町,横芝光町)>

6学区の志願者数はほぼ前年度並みで全体の倍率もほとんど変わりませんでした。5校中4校は例年の入試でしたが,成東は2年連続志願者増となり低倍率傾向から本来の入試状況に戻りました。これが唯一の目立った動きといえます。学区内の多くの生徒が自学区の学校に志願していますが,千葉市の1学区へ向かうケースも多く流出過多の学区になっているようです。
成東
成東は「普通科」と「理数科」をくくり募集とした2年目の入試でした。学科別募集の最後の年,2023年度は両学科とも定員割れで全員合格。この年の志願者数は合わせて259人でした。翌2024年度は理数科の分が削減される形で「普通科・理数科」として6学級募集になり,これに対する志願者数は250人とやや減少した形ですが募集減により倍率は1倍を超えました。そして今年度の志願者数は263人と13人増加し2022年度までの1.1倍台に回復しています。入学生は東金市や山武市,大網白里市のほか5学区の旭市や4学区の八街市からもきており通学圏は広い方です。今春の国公立大学の合格者数が現役で50人を超えたので来年度も志願者が増えるかもしれません。
東金
東金「普」の志願者数はほぼ前年度(165人)並みで倍率も動きませんでした。最近の5年間では2022年度に187人1.17倍を記録したものの,その年以外は160人台1.0倍程度の入試になっており,今年度も本校の標準的な入試になったといえます。入学生は地元東金市から2割強,大網白里市から2割弱,山武市から1割強と地元学区が中心ですが,4学区の八街市や1学区の千葉市からも生徒がやってきます。
松尾
松尾の2021年度からの志願者数は112→138→105→126→114人,倍率は0.93→1.15→0.88→1.05→0.95倍と隔年現象があり,定員割れと1倍台を繰り返しています。今年度は志願者減,倍率ダウンの年で全員合格しました。女子校の伝統があることや福祉コースを設置していることから女子の入学生が多くなっています。入学地域は地元山武市から3割程度,横芝光町から2割弱で5学区の匝瑳市と旭市から4割程度進学してきています。
大網
大網「普」は志願者が若干増えたものの1倍にはとどかず,2年連続定員割れになりました。専門学科含めた学校全体の入学生は千葉市からがもっとも多く,次いで地元の大網白里町,東金市,茂原市の順です。普通科の生徒も農業系学科を選択できるようになっています。
九十九里
九十九里は2024年度入試にそれまでの0.3倍台から0.2倍台に落ち込みました。もっとも入学生が多い東金市や山武市の生徒数が減ったことが影響したのかもしれません。今年度も山武郡の生徒数が減ったことで志願者数はほとんど変わらず前年度とほぼ同じ倍率でした。通学圏も限られており,来年度も志願者増になっても大幅な倍率アップは見込めません。
<第7学区 茂原市,勝浦市,いすみ市,長生郡内全町村(一宮町,睦沢町,長生村,白子町,長柄町,長南町),夷隅郡内全町(大多喜町,御宿町)>

7学区の上記4校で志願者が減った学校は1校もありません。しかも長生「普・理」は2021年度以降で2022年度に次ぐ多くの志願者数を集め,茂原と大多喜は最高倍率を記録しました。
7学区の生徒の多くは自学区の学校を志願していますが,千葉市へ流出するケースもあり流出過多の学区です。しかし今年度はその流れに歯止めがかかったのかもしれません。
長生
長生「普・理」は制服のモデルチェンジの影響なのか34人の志願者増になり倍率は1.2倍台に上がりました。2024年度より普通科と理数科のくくり募集になり,募集人員も両学科合わせた280人と変化はありませんでした。その年の志願者数は2023年度の両学科合わせた人数301人を上回る321人だったので志願者増は2年連続になります。しかも今年度の志願者数345人は普通科と理数科の学科別募集であった2022年度の365人次ぐ多くの人数ということになります。ただ,受検棄権者が3人でており私立志向の影響もみられました。
茂原
茂原は2021年度から2023年度までの3年間1.0倍台で安定していました。しかし2024年度に23人の志願者減で定員割れになり全員合格。そして今年度はその反動で36人の志願者増となり,2021年度以降の最高倍率になりました。来年度は反動で志願者減になる可能性があります。
大多喜
大多喜の志願者数は3人の微増で倍率もほとんど動きませんでした。2021年度以降定員割れの入試状況が続いています。入学生のほとんどが自学区からの生徒で,そのうちいすみ市の生徒が3分の1を占めています。大多喜町からは2割弱で茂原市,勝浦市から1割強の生徒がいます。2024年度より教員基礎コースが設置されました。
大原
大原「総合」の2021年度からの志願者数は106→76→110→98→103人,倍率は0.66→0.48→0.69→0.61→0.64倍と推移し隔年現象の動きといえますが,この3年間は大きな変動はなく0.6倍台で上下しています。入学生は地元いすみ市からの生徒がもっとも多く全体の4割を占め,その他も7学区出身で地元学区中心の入試になっています。岬と勝浦若潮の統合校であることから,普通科系列のほか生活福祉系列,園芸系列,海洋科学系列が用意されています。
<第8学区 館山市,鴨川市,南房総市,安房郡(鋸南町)>

8学区の普通科と総合学科の上記3校の志願者数は467人,前年度(509人)より42人の減になりました。しかし安房拓心が学級減になったため倍率は前年度とほとんど変わりませんでした。8学区の生徒のほとんどが自学区の学校を選択しています。7学区からの流入,9学区への流出が若干ありますがほぼ自学区の生徒での争いになっているようです。
安房
安房の2021年度からの志願者数は257→243→259→238→253人,倍率は1.07→1.01→1.08→0.99→1.05倍と推移し隔年現象の動きが見られます。今年度は倍率アップの年でした。来年度はやや緩和される見込みです。入学生は地元館山市からの生徒で半数以上を占め,次いで南房総市,鋸南町の順でほぼ8学区の生徒で占められています。
長狭
長狭は33人の志願者減になり0.7倍台にダウンしました。志願者減は2年連続です。入学生が最も多く全体の半数以上を占める鴨川市の生徒数が減少しており,その影響を受けていると考えられます。ほかに南房総市,館山市,勝浦市の順で8学区からの生徒でほとんどを占めています。
安房拓心
安房拓心は1学級減で募集,それに伴い志願者が24人の減になりましたが倍率はアップ上がり,本校としては高い方の倍率になりました。しかし志願者数の101人は2021年度以降でもっとも少ない人数です。長狭や館山総合も志願者減になっていることから通信制高校に移動したのかもしれません。入学生は南房総市,館山市,鴨川市の3つの地域がメインで合わせて9割強を占めており自学区の生徒がほとんどです。
<第9学区 木更津市,市原市,君津市,富津市,袖ケ浦市>

9学区全体の志願者数は前年度より74人3.9%の減で,姉崎の学級減があったものの倍率は0.02ポイント下がって1.02倍になりました。この地域の生徒数が約300人5.9%の減になったことが影響したようです。ただ,志願者減は上記の木更津から袖ヶ浦の3校に集中しており,3校合わせた人数は112人に上りました。ほかに数十人単位で志願者減になったのは天羽だけであったことから,今年度は特に中堅上位校で敬遠されたといえます。
9学区は8学区からの流入があるものの1学区への流出が多く,特に市原地区は公立進学者の4割程度が1学区の学校に進学している流出過多の地域です。
木更津
木更津「普」は2021年度からの志願者数が327→424→351→405→356人,倍率は1.17→1.51→1.25→1.45→1.27倍と推移,隔年現象の動きになっています。今年度は志願者減,倍率ダウンの年で49人,0.18ポイントダウンし前々年度並みの入試に戻りました。来年度は倍率アップの年に当たるので注意が必要です。一方で「理数科」の志願者数は2022年度より41→53→56→62人と増加傾向,倍率も1.03→1.33→1.40→1.55倍と上昇傾向が続いています。SSHの指定校であることが魅力の一つになっています。
君津
君津「普」にも隔年現象がみられます。2021年度からの志願者数は229→245→228→275→245人と増えたり減ったりしており,倍率は0.95→1.02→0.95→1.15→1.02倍と上がったり下がったりしています。今年度は木更津「普」同様,志願者減,倍率ダウンの年でした。また近年,受検棄権者が増加しているところも目立った動きで,2022年度より1→4→7→6人と増加傾向です。木更津総合や拓殖大学紅陵,志学館などに切り替える動きがあるのかもしれません。
袖ヶ浦
袖ヶ浦「普」は前年度に地域の生徒数増の影響を受けたのか,志願者が43人の大幅増となり倍率は1.2倍台にアップしました。今年度はその反動と生徒数減の影響で30人減り倍率は1.0倍台に戻っています。志願倍率1.0倍台は本校の標準的な倍率なので落ち着いた入試になったといえるでしょう。しかし本校も受検棄権者が2022年度より0→1→2→3人と少しずつ増えており,私立志向の影響も受けています。来年度もこの流れは止まらないかもしれません。
市原八幡
市原八幡は2021年度から2024年度まで1.0倍台で推移していました。しかし今年度は12人の志願者増となり1.1倍台にアップ,2021年度以降の最高倍率を記録しました。現在施設の改修工事中で,体育館は2026年夏に完成予定,普通教室棟は2027年冬に完成する予定のようです。入学生は地元の市原市からの生徒で7割強を占め地元中心の入試になります。ほかに千葉市から1割程度の流入があるようです。防災教育が特徴のひとつです。
木更津東
木更津東「普」も18人の志願者増,倍率1.1倍台になり2021年度以降の最高倍率を記録しています。志願者数が130人を超えるのは初めてのことで20人近い不合格者もでました。「家政科」も今年度は志願者が増加しており,3年ぶりに不合格者がでています。両学科とも来年度はこの反動で志願者減が予想されます。
京葉
京葉の2022年度からの志願者数は134→129→135→131人,倍率は1.12→1.08→1.13→1.09倍と緩やかな隔年現象の動きが見られるものの,安定した入試が行われているといってもいいでしょう。入学生は地元の市原市からの生徒で8割強を占めており,地元中心の入試になります。他は木更津市や袖ケ浦市からの生徒です。2024年度から「看護医療コース」が設置され,看護師・理学療法士・作業療法士・柔道整復師などを目指す生徒への支援を行っています。
姉崎
姉崎は1学級減での募集になりましたが,志願者数は前年度(164人)とほとんど変わりませんでした。そのため募集減の分倍率がアップし,2021年度以降の最高倍率を記録,50人近い不合格者がでる厳しい入試になりました。入学生は地元市原市から5割弱,袖ケ浦市が3割弱,木更津市が2割程度などで,この3地域で大半を占める地元学区中心の入試になっています。ものづくりコースが設置されており,2年次から工業系科目を学習することができます。
市原緑
市原緑の2022年度から2024年度の志願者数は115→134→108人,倍率は0.96→1.12→0.90倍と隔年現象のような動きが見られ,この流れから今年度は志願者増が予想されました。しかし前年度とほぼ同じ志願者数になり定員割れが続くことになりました。入学生の9割以上が地元市原市の生徒のため,生徒数減の影響を受けたのかもしれません。
天羽
天羽の志願者数は2023年度より49→74→48人と増えたり減ったりしており,倍率は0.41→0.62→0.40倍と推移しています。来年度は志願者増,倍率アップの可能性がありますが,1倍には遠く及ばず,学級減にならない限りは定員割れの入試が続くと見込まれます。
君津青葉
君津青葉「総合」は天羽とは逆の動きで,2023年度から78→60→77人,倍率0.65→0.50→0.64倍と推移,来年度は志願者減,倍率ダウンの年になります。しかしやはり1倍には遠く,今後も定員割れの入試が続きそうです。
市原
市原「普」も同様で,学級減で80人募集になった2023年度から46→30→48人,倍率0.58→0.38→0.60倍と推移しており隔年現象の動きが見られます。本校も2021年度以降定員割れの入試が続いており,来年度以降も大きな変化はないと予想されます。