
埼玉県公立高入試の志願確定状況でその特徴をみていきましょう。
各校の志願者数は以下のページからご覧いただけます。
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全体の概要
全日制の募集人員34,603人(転勤枠除く)に対し,志願変更後の志願確定者数は35,976人で倍率は1.04倍,今の入試制度になった2012(H24)年度以降で最も低い倍率になりました。
公立高校の募集枠は生徒数の56.3%で前年度(56.6%)とほとんど変わっていないので,この大幅な倍率低下は志願者が減ったことが原因です。生徒数に対する志願率は前年度より3.8ポイント下がり58.6%と60%を切っています。このような志願状況になったのは2026年度より国の就学支援金の年収制限がなくなり,支給額も増額されることが原因と考えられます。

学科別状況
学科別でみると普通科は約2,300人8%の志願者減となり倍率は0.08ポイントダウンし1.0倍台に落ち込みました。ここまで下がったのは最近の10年間で初めてのことです。農業科はほぼ前年度並みですが0.01ポイントダウン,工業科,商業科も下がっています。家庭科はやや上がりましたが,これら4つの職業系専門学科の志願者数は合わせて約300人6%の減になりました。
外国語科は和光国際の「国際」が国際関係の学科に移ったことから,所属校が1校減ったため志願者は約110人30%の大幅減になりましたが,募集人員も79人25%減っています。募集人員以上に志願者が減少したため倍率は0.07ポイントのダウンになりました。理数科は0.29ポイントの大幅ダウン,志願者も約80人17%の大幅減になりました。所属する7校のうち志願者増になったのは前年度に定員割れになった熊谷西と倍率ダウンした川口市立の2校だけ,前年度に4校あった2倍を超えた学校が大宮1校に減り,高倍率を誇る理数科としては異例の志願状況になりました。総合学科は約60人3.9%の減,1倍を超えたのは川越総合だけでした(前年度は4校)。
このように普通科だけでなく専門学科,総合学科とも倍率ダウンしており,就学支援金拡充の影響が公立高全体に及びました。

地域ごとの代表校の状況
以下の地域を代表する学校の志願状況を見ると上がった学校下がった学校さまざまですが,13校中倍率ダウンした学校は7校で過半数を占めました。
この中でもっとも注目されたのが県立浦和の大幅な倍率ダウンです。志願者は92人17%の減となり1.2倍台まで落ち込みました。これだけ少ない志願者数と低い倍率になったのは最近の10年間ではありません。県立高校の男女共学化が検討されている中で受検生の意識も変わってきているのかもしれません。浦和第一女子も同様で,志願者は32人7%の減で8年ぶりに1.2倍台に下がりました。志願者数は2022年度より528→482→490→469→437人と減少傾向が続いており,男女別学に対するニーズが少なくなっていることを示しているようです。
一方で大宮「普」は26人の増で10年ぶりに500人を超える多くの志願者を集めました。志願確定倍率は1.59倍ですが,志願締切時は1.75倍で人気の高さがうかがえます。一方,志願変更の人数が増えているのか,志願締切時と志願確定の差が2024年度より25→42→51人と年々増加しています。
春日部は2年連続で倍率ダウンしましたが,1.3倍台は春日部としては標準的な倍率で一定の人気は維持したといえるでしょう。さいたま市からの入学生が増えているため,県立浦和の難度を敬遠した受検生が志願しているのかもしれません。
県立川越は40人8%減,2022年度より4年連続1.4倍以上の倍率で推移していたので,今年度はやや異例の志願状況といえます。2024年度,2025年度と1.47倍の高倍率が続いたので,その反動と考えられますが,男女別学が敬遠された可能性もあります。
一方,川越女子は14人志願者が増えました。前年度に1.1倍台という川越女子としては近年にない低い倍率になったため,その反動が現れた形です。しかしそれでも1.2倍台は低い方の倍率で本来の志願状況に戻ったとはいえません。
熊谷と熊谷女子は学級減で募集,両校とも志願者は減りましたが,倍率は上がりました。熊谷の志願者数は近年でもっとも少なく,熊谷女子は2024年度の314人と並ぶ最少の人数になりました。
越谷北「普」は倍率の変動が大きい学校ですが,2023年度からの4年間は1.2倍前後で低めながら比較的安定した志願状況が続きます。今年度は24人6%の志願者減でしたが1.2倍台を維持しました。
不動岡はさらに安定しており,2023年度より4年間1.3倍台の入試が続きます。志願者数も470~480人程度とほとんど動かず,高い人気を維持しています。
松山「普」は低迷しています。今年度も志願者は24人10%の減になり,2年連続定員割れでした。0.8倍台に落ち込んだのは近年ではなく,もともと低倍率入試が続いていたものの,私立志向と共学志向によって敬遠されているのかもしれません。
蕨「普」は48人11%の志願者減となり1.1倍台に落ち込みました。これだけ少ない志願者数と低い倍率になったのは最近の10年間ではありません。所在地が東京都に近いことから,県内私立だけでなく都内私立への流出があり受検者層が薄くなっているのかもしれません。
市立浦和は,このような公立離れの状況の中でも高倍率を維持しており,私立志向の影響を受けている様子はみられません。普通科の高倍率No.1の地位も変わっていません。

その他の人気校
上記以外で毎年高倍率になることが多い人気校の状況を見ていきましょう。
伊奈学園総合は隔年現象があり,倍率が上がったり下がったりしています。今年度は倍率ダウンの年でしたが,志願者は66人8%の減となり700人台に落ち込みました。志願者数が800人を超えなかったのは6年ぶりのことで,私立志向の影響を受けているといえるでしょう。
浦和西の倍率はこの4年間1.4倍台で安定しています。志願者数も510~520人と固定しており,私立志向の中でも人気は衰えていません。
県立川口は2年連続で志願者減,今年度は45人11%減りました。1.1倍台は県立川口としては低い方の倍率になるので,県内・都内私立への流出の影響を受けているのかもしれません。
川口北も2連連続志願者減で今年度は84人18%の大幅減になりました。1.0倍台はコロナ禍での入試になった2021年度以来5年ぶりのことです。
川越南も志願者は100人19%の大幅減,志願倍率の1.20倍は最近の10年間でもっとも低い倍率です。前年度までの高倍率によって,新設の和光国際や所沢に移動した可能性もありますが,これだけ大幅に下がったのはやはり私立志向の影響も受けているからでしょう。
越ケ谷は23人5%減でしたが,倍率は1.2倍台に下がりました。この倍率は越ケ谷としては近年にない低い倍率です。越谷市や草加市の生徒減のほか,私立志向の影響も受けているようです。
越谷南「普」は30人7%減,2022年度より続いていた1.4倍台から1.3倍台に下がりました。それまでの高倍率の反動が今年度の私立志向をきっかけに現れたと考えられます。
所沢は28人6%の増,前年度に倍率ダウンしたのでその反動と考えられます。志願倍率は2023年度より上がったり下がったりする隔年現象があり,その流れに沿った動きといえます。
所沢北「普」は5人増で倍率はほぼ前年度並み。所沢北としては低い倍率ですが一定の人気は維持した形です。
南稜「普」は52人12%の大幅減で倍率も1.1倍台まで下がりました。ここまで下がったのは6年ぶりのことです。所在地が東京に近いことから,県内だけでなく都内私立への流出による影響を受けたと考えられます。
和光と統合した新設校,和光国際「普」は1.3倍でスタート。ここも東京と接しており都内私立への流出が起こりやすい位置にありますが,今回の倍率は元の和光国際時代よりはやや低めながら,新校への期待も背負って一定の人気は維持したといえるでしょう。
市立川越「普」の倍率は上がったり下がったりする隔年現象があり,今年度は上がる年に当たっていましたが,志願者は9人の微増で留まり1.2倍台と低めの倍率が続くことになりました。
市立浦和南も同様に隔年現象があり,今年度は倍率ダウンの年で,その動き通りに志願者減となり倍率もダウンしています。こちらは私立志向とは無関係の動きと思われます。
市立大宮北「普」は71人17%の大幅減となり,倍率も1.2倍台に下がりました。周辺同レベル校の所沢西,朝霞,浦和北,与野なども志願者減になっていることから,この地域の中堅層は私立への流出が多いのではないか考えられます。
川口市立「普」は倍率の変動が激しい学校で1.2~1.9倍台の幅広い範囲で上下します。今年度は前年度の倍率アップの反動で20人の志願者減になりましたが,倍率は1.5倍台で,川口市立「普」の平均的な倍率になりました。
このほか,目立ったのが学力的に入りやすい学校の応募者減です。妻沼(25人24%減,0.87→0.67倍),児玉(24人47%減,0.65→0.34倍),鶴ヶ島清風(38人22%減,0.85→0.66倍),鴻巣女子「普」(15人27%減,0.70→0.51倍),新座(33人17%減,0.98→0.82倍)などで,これらの学校は通信制高校と競合する関係にあり,それに今年度の私立志向の高まりが加わり大幅な減少につながったと考えられます。
