2月2日に東京都私立高等学校の入学応募者の状況が発表されました。概要は以下の通りです。
※応募者数と倍率については1月27日時点のものです。最終的な数ではありませんのでご注意ください。また比較のために掲載した2022年度の集計も中間応募として発表された時点のものです(2022年1月28日)。
令和5年度都内私立高等学校入学応募状況の詳細については下記ページをご確認ください。
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/02/02/17.html
全体の状況(全日制の課程)
2023年度 | 2022年度 | |
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学校数 | 181校 | 181校 |
募集人員 | 20,618人 | 20,667人 |
応募人員 | 54,090人 | 58,337人 |
中間倍率 | 2.62倍 | 2.82倍 |
2023年度の募集校は181校で変わらず、募集人員は昨年度に比べ49人減、応募人員は4,247人減、中間倍率は0.2ポイントダウンしています。
前年度は安全志向から挑戦志向に戻ったような動きがみられ、多くの学校で応募者が増加しました。しかし今年度は上位層を中心とした幅広い学力層で応募人員が減少し、併願校を絞るような動きが見られました。
男女別、普通科・専門学科の状況
<普通科の状況>
【普通科】 | 2023年度 募集人員 | 2023年度 応募人員 | 2022年度 募集人員 | 2022年度 応募人員 |
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男子校 | 1,470人 | 5,160人(3.51) | 1,617人 | 5,437人(3.36) |
女子校 | 3,544人 | 3,140人(0.89) | 3,639人 | 3,983人(1.09) |
男女校 | 14,525人 | 44,908人(3.09) | 14,307人 | 47,795人(3.34) |
計 | 19,539人 | 53,208人(2.72) | 19,563人 | 57,215人(2.92) |
<専門学科の状況>
【専門学科】 | 2023年度 募集人員 | 2023年度 応募人員 | 2022年度 募集人員 | 2022年度 応募人員 |
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男子校 | 0人 | 0人 (-) | 0人 | 0人 (-) |
女子校 | 332人 | 160人(0.48) | 382人 | 105人(0.27) |
男女校 | 747人 | 722人(0.97) | 722人 | 1,017人(1.41) |
計 | 1,079人 | 882人(0.82) | 1,104人 | 1,122人(1.02) |
普通科男子校の倍率が前年度に比べて上がったのは、募集人員が147人減ったためです。実際の応募数は減っています。女子校は普通科で応募人員が募集人員を下回り,専門学科は応募が増加して倍率がやや上がっています。普通科男女校は応募人員が2,887人減で倍率が下がっています。専門学科も応募が減り倍率も1倍を切っています。
例年に引き続きいずれも普通科の倍率が最も高く、普通科志向の動きが見られます。
上位校の動向
<大学附属校の状況>
2023年度 募集人員 | 2023年度 応募人員 | 2022年度 募集人員 | 2022年度 応募人員 | |
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明治大学付属 中野 (普) | 約105人 | 724人(6.90) | 約135人 | 796人(5.90) |
明治大学付属 中野八王子(普) | 75人 | 370人(4.93) | 75人 | 365人(4.87) |
明治大学付属 明治(普男) | 約30人 | 16人(0.53) | 約30人 | 81人(2.70) |
明治大学付属 明治(普女) | 約30人 | 34人(1.13) | 約30人 | 74人(2.47) |
早稲田大学 高等学院(普) | 260人 | 1,821人(7.00) | 260人 | 1,883人(7.24) |
早稲田実業 高等部(普男) | 約50人 | 493人(9.86) | 約50人 | 442人(8.84) |
早稲田実業 高等部(普女) | 約30人 | 264人(8.80) | 約30人 | 321人(10.7) |
慶應義塾女子 (普) | 約80人 | 392人(4.90) | 約80人 | 431人(5.39) |
青山学院 高等部(普) | 80人 | 946人(11.83) | 80人 | 1,048人(13.10) |
中央大学附属 (普) | 約120人 | 669人(5.58) | 120人 | 645人(5.38) |
中央大学杉並 (普) | 150人 | 240人(1.60) | 150人 | 624人(4.16倍) |
国際基督教大 (普) | 80人 | 125人(1.56) | 80人 | 246人(3.08倍) |
上記の大学附属校ではほとんどの学校で応募者が減っています。全体の応募数は6,094人、前年度(6,956人)に比べ862人、12.4%減少しました。
特に、中央大学杉並では384人、61.5%の減少になり、この時点で前年の半分以下になりました。倍率も大幅に下がっています(4.16→1.60倍)。2021年度より597→624→240人と、2022年度まで多くの受験生を集めていましたが、ここにきて激減しています。一方で今回の発表には含まれていませんが推薦入試の応募者は346人で前年度(344人)と変わっていないので,今後一般入試の応募者も増加するかもしれません。青山学院高等部では102人、9.7%の減少になりました。2021年度より988→1048→946人と推移しているので、前年度増加した反動で応募が減った可能性があります。倍率も下がりました(13.10→11.83倍)。推薦入試の志願者も225→201人で減少しています。
その他、早稲田高等学院が62人減少、早稲田実業高等学部が男女合計で6人減少、慶應義塾女子は39人減少、明治大学付属明治が男女合わせて105人減少しました、
明治大学附属中野が前年度より72人減少しています。しかし推薦入試に推薦Ⅰ型(総合)を導入し志願者が増えて(29→126人)おり、一般入試から推薦へ移動したような動きが見られています。
大学附属校の応募者が減少する原因としては、第一志望者が増えて推薦に回った、もしくは私立併願者の減少が考えられますが、青山学院と中央大学杉並を見る限り、推薦入試の志願者が増えているわけではないようなので、他私立校との併願者が減っているのかもしれません。
<上記以外の併願優遇のない大学附属校の状況>
2023年度 募集人員 | 2023年度 応募人員 | 2022年度 募集人員 | 2022年度 応募人員 | |
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成蹊 (普) | 60人 | 173人(2.88倍) | 60人 | 156人(2.60倍) |
日本大学第一 (普) | 75人 | 129人(1.72倍) | 75人 | 100人(1.33倍) |
日本大学第二 (普) | 105人 | 263人(2.50倍) | 105人 | 295人(2.81倍) |
明治学院(普) 第1回 | 150人 | 661人(4.41倍) | 150人 | 588人(3.92倍) |
上記の併願優遇を実施しない学校の全体の応募数は1,226人。前年度(1,139)に比べ全体で87人増加しました。
減少したのは日本大学第二のみで、応募263人、前年(295人)と比較すると10.9%減少しています。明治学院は応募数661人で前年(588人)と比較すると12.4%増加、朋優学院の応募者が減少しているのでその影響を受けたのかもしれません。
それ以外の学校は微増にとどまっています。
<難関男子校の状況>
2023年度 募集人員 | 2023年度 応募人員 | 2022年度 募集人員 | 2022年度 応募人員 | |
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開成(普) | 100人 | 565人(5.65倍) | 100人 | 567人(5.67倍) |
城北(普) | 約65人 | 247人(3.80倍) | 約65人 | 264人(4.06倍) |
巣鴨(普) | 約70人 | 238人(3.40倍) | 約70人 | 195人(2.79倍) |
桐朋(普) | 約50人 | 156人(3.12倍) | 約50人 | 195人(3.90倍) |
上記の難関男子校の全体の応募は1,206人、前年度(1,221人)に比べ15人減少しました。
増加したのは巣鴨のみで、応募238人、前年度(195人)と比較して22.1%の増でした。3教科型より5教科型の応募者が増えているため開成や国立大附属、公立高校との併願者が増えているのかもしれません。
注目校の志望状況
共学化やコース改編、入試制度の変更は倍率に大きく影響を及ぼします。
芝国際(現:東京女子学園)は2023年度より校名変更し、女子校から共学校へ転換、コース改編も実施した注目校です。学校全体の応募は473人、前年度(東京女子学園19人)と比べて約25倍の応募数になり、改編の影響が大きく表れています。
同じく、自由ヶ丘学園も2023年度より共学化になる学校です。学校全体の応募は870人、前年度(男子校90人)と比べて9.7倍になりました。コース改編は行っていませんが、前年と比較するとプログレスコースで12倍(4→48人)、国際教養・STEAM理数コースで約23倍(6→139人)、グローバルサイエンス・アスリート・文理コースで8.5倍(80→683人)とすべてのコースで応募増になっています。大東学園がコース改編によりコース別募集がなくなり、応募が165人(前年522人)で大幅に減少し、中央学院中央の応募も普通科と商業科合わせて140人(前年462人)と大きく減少しているため、これらの学校の応募状況に影響を及ぼした可能性があります。
上記2校と同じように女子校から共学化になり、校名変更とコース改編を行った品川学藝(現:日本音楽)はそこまでの応募者の増加はありませんでした(学校全体10→25人)。
東洋「特進」は応募者は351人、前年度(118人)の約3倍の応募者を集めました。2021年度入試で取りやめた併願優遇を復活させたことが大きな要因になっているようです。
岩倉「普通科」は833人、前年度(443人)より倍増し、倍率も2.68→5.55倍に跳ね上がりました。普通科を7限制と6限制に改編して2年目を迎え,受験生・保護者に浸透してきた形です。
目黒日本大学は学校全体の応募が428人で前年度(193人)より2倍以上になりました。進学コースで180→403人に増、芸能クラスで9→23人に増えました。2021年度は日本大学の附属校となって初めての卒業生になり、日大への内部合格者数が伸びたことが応募増につながったと考えられます。
桜丘は、前年応募者数が大きく増加したため、今年度は出願基準のハードルを上げました。さらに一般入試の募集人員をAコース130→60人、Gコース・Cコース各25→各5人に減らし、学力検査を3科もしくは5科から3科のみに変更しました。その影響で今年度は応募数105人(前年度820人)になり、前年に比べて715人減と大きく減少しました。
朋優学院は、国公立コースの併願優遇制度を廃止し、合格のハードルを上げました。その影響で応募者数が国公立TGコースで836人、前年度(1090人)に比べ23.3%減少、国公立コース・特進コースで1410人、前年度(1994人)に比べ29.3%減少しています。明治学院や改編で受験生を集めた芝国際、または他県の上位校に流れた可能性があります。
専修大学附属は、推薦入試の出願基準のハードルを緩和しました。今回の一般入試の応募数が217人、前年度(292人)より25.7%減少しているので、志望者が推薦に回った可能性があります。
かえつ有明は、2023年度入試で推薦入試と併願優遇を廃止しましたが、応募者は17人で前年(19人)とほとんど変わりませんでした。
八王子学園八王子は、文理コースに特選クラスを新設、選抜クラスを進学クラスに統合し、総合コースの文科系をリベラルアーツ系に名称変更しました。学校全体の応募人数は1,077人で前年度(1,164人)より7.5%減少しました。コースごとに見ると、新設の特選クラスへの応募は182人、特進クラスは468→386人に減少、選抜クラスと統合した進学クラスは、前年度の選抜クラスの応募者数と合わせて477→257人に減少、総合コースは178→212人に増加、アスリートコースは41→40人に減少するというように各コースで異なる動きになりました。
フェリシア(現:鶴川)は、2023年度より校名が変更になり、制服も新しくなります。その影響か、合格のハードルを上げていますが応募者は262人と前年度(207人)より26.6%増加しています。
錦城は、2023年度より特進コースの推薦入試を廃止し、一般入試の定員を増加(120→150人)しています。その影響か、一般入試の応募が1091人になり、前年度(943人)より15.7%増加しました。