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2024(R6)年度 埼玉県公立高入試の概況

入試情報

2024.05.02

2024.05.02

埼玉県の公立高校受験の仕組みや選抜方法

今春の埼玉県公立高入試はどのような入試であったのか振り返ってみましょう。

志願状況と志願率

全日制の募集人員35,130人に対し、志願変更後の志願確定者数は39,414人。志願倍率は前年度より0.01ポイント上がり1.12倍になりました。

次の表のように、志願倍率は2021(R3)年度に過去最も低い倍率を記録して以降3年連続で上昇しています。

しかし、この倍率アップは公立高の募集枠が縮小(57.4→56.6%)したためで、生徒数に対する志願率は63.6%で前年度と変わっていません。グラフにあるように募集枠は年々縮小しており、公立離れによって志願率が下がっても倍率は下がらないという構図になっています。

学科別志願状況

学科別でみると、普通科は1.16倍で前年度と変わらず上昇傾向に歯止めがかかりました。一方で専門学科は、農業科(0.91→0.95倍)、工業科(0.87→0.89倍)、商業科(0.91→1.05倍)と職業系専門学科が上がり、拡大していた普通科との差がやや縮小されました。専門学科全体でも前年度の0.96倍から1.02倍にアップ。4年ぶりに1倍台を回復しています。

外国語科はコロナ禍の影響で海外との交流が制限されていたためか低迷していました。その制限もようやく緩和されたためか、1.3倍台に上がり復調の兆しも見えています。

【学科別志願確定倍率の推移】

201920202021202220232024
普通科1.191.151.131.141.161.16
農業科1.060.990.940.930.910.95
工業科1.021.020.920.930.870.89
商業科0.971.010.920.960.911.05
外国語科1.521.271.211.251.201.34
理数科1.821.601.861.831.831.71
総合学科1.031.050.950.930.951.00

普通科でもっとも高い倍率になったのは、今春も市立浦和で1.75倍。次いで川口市立「スポーツ科学」1.64倍、蕨と春日部が1.50倍、市立川越1.49倍と続きます。

学力上位校に高倍率校が多いというのは例年の傾向です。

【普通科高倍率ベスト10】

No.学校名倍率
市立浦和1.75
川口市立 スポーツ科学1.64
1.50
春日部1.50
市立川越1.49
川口北1.47
川越1.47
和光国際1.46
所沢1.43
浦和西1.43
10越谷南1.42

受検状況と合格者

受検者数は39,011人、事前取消と当日欠席者は403人でした。前年度は304人だったので約100人増えました。当日欠席者の中にはインフルエンザやコロナ等感染症による欠席者も多かったと思われますが、追検査の受検者がもっとも多かった2022年度の380人をも超えており、受検までの段階で公立志望から私立進学に変更した生徒が例年より増えた結果と考えられます。

合格者数は33,935人、実質倍率1.15倍、合格率87.0%でした。不合格者数は前年度より60人多い5,069人、コロナ禍前の2020年度を若干上回りました。

普通科の実質倍率は1.17倍で前年度と同じ。専門学科は、農業科1.02倍(前年度1.01倍)、工業科1.03倍(同1.02倍)、商業科1.10倍(同1.02倍)で商業科の実質倍率が大幅に上がりました。

商業科は受検者数も前年度より約200人増え、不合格者も大幅に増加しました。実質倍率が1.1倍台まで上がったのは7年ぶりのことです。しかしこれは県立高校の統廃合により、商業科の募集人員が約120人減ったこと、前年度の受検者減の反動で前々年度の数に戻ったことが原因で、必ずしも商業高校人気が高まったためとは限らないようです。

総合学科も前年度の1.01倍から1.08倍に大幅にアップ。しかしこれも川越総合、久喜北陽、滑川総合、吉川美南の4校の倍率が上がったためで、そのほかの5校は全員合格しています。志願者が集まる学校とそうでない学校が固定しており、総合学科自体が見直されているとも言いづらい状況です。

学力上位校の動き

以下の学力上位校では、志願者が増えた学校、減った学校さまざまです。13校合わせた志願確定者数は5,726人で前年度より約150人の微減となり、上位校に挑戦する傾向が薄らいだ安全志向の志願状況になりました。

また、前年度の倍率の高低により志願状況が変わるという傾向も見られています。

県立浦和は前年度の志願確定倍率が近年でもっとも高い1.55倍を記録したため、志願者が60人減となり1.38倍にダウンしました。さらに受検棄権者が前年度の33人から42人に増えました。これも最近ではもっとも多く、受検倍率は2022年度と同じ1.27倍に下がり、合格率は79%と県立浦和としては緩やかな入試になりました。

浦和第一女子は前年度とほぼ同じで、浦和第一女子として標準的な倍率になり、変動はありませんでした。ただ受検棄権者数は増加傾向で、今年度は19人と近年のもっとも多い棄権者数を更新しています。

大宮(普)は2021年度からの倍率が1.51→1.47→1.44→1.41倍と少しずつ下がってきています。志願者数も479→468→458→448と10人ずつ減り、しかも今年度は受検棄権者が前年度の11人から倍の22人に増加したこともあり、受検倍率は4年ぶりの1.3倍台(1.34倍)に下がりました。近年では2020年度の1.30倍に次ぐ、2番目に緩やかな入試になりました。

逆に春日部は志願者が約70人増加し、近年でもっとも高い1.50倍にアップ。やはり受検棄権者は前年度の4人から9人に増えたものの、合格率は67.8%と初めて60%台に下がり、受検生の3分の1に当たる170人が涙をのむ激戦でした。

県立川越は隔年減少があり、2020年度から志願倍率は1.45→1.36→1.45→1.40→1.47倍と上がったり下がったりしています。今年度は倍率アップの年に当たり、近年では2016年度の1.54倍に次ぐ2番目に高い倍率で、合格率は70%を切って厳しい入試になりました。

川越女子は志願者が約20人減少し倍率ダウン。川越女子としてはやや低めの倍率となり、不合格者は100人を超えたものの、例年より緩和された入試でした。

所沢北(普)は志願者が約60人減少し、4年ぶりに1.1倍台にダウン。さらに受検棄権者数が6人に増えたことで、受検倍率は近年にない1.0倍台まで下がり、合格率91.4%の緩やかな入試になりました。

熊谷はこの3年間、志願倍率が1.1倍台で安定しています。一方で熊谷女子は隔年現象で倍率ダウン。定員割れとなり受検生全員が合格するという近年にない緩やかな入試でした。

越谷北(普)は倍率が安定しません。2019、2020年度は1.1倍台。2021、2022年度は1.3倍以上の高倍率。そして2023、2024年度はまた1.1倍台が続くというように、2年間ずつ高低を繰り返しています。

一方で不動岡は志願者が2020年度より389→421→441→467→477人と増加傾向で人気が上がってきています。埼玉北部の学力上位者はここに集中しているようです。ただ、2022年度よりそれまでの8学級募集から9学級に増えているので、合格率は75~80%程度で推移しており、それほど厳しい入試状況にはなっていません。

(普)は志願者が50人以上増加し、4年ぶりに1.5倍台にアップ。受検生の3分の1が不合格になる厳しい入試になりました。県立浦和や大宮を敬遠した受検生の受け皿的な役割になっているのかもしれません。

市立浦和は2020年度からの志願者数が380→457→512→528人と増加傾向でした。ですが、2022、2023年度と2年連続で受検生の半数以上が不合格になる激戦になったためか、今年度は志願者が107人の大幅減で421人となり、倍率は1.75倍まで下がりました。しかし、合格率は59.5%で全体からすれば厳しい入試状況といえます。

学校名2023(R5)2024(R6)
県立浦和1.551.38
浦和第一女子1.351.37
大宮(普)1.441.41
春日部1.311.50
県立川越1.401.47
川越女子1.361.30
所沢北(普)1.311.11
熊谷1.131.11
熊谷女子1.130.99
越谷北(普)1.171.16
不動岡1.301.33
蕨(普)1.341.50
市立浦和2.201.75

このほか、大きな変動があった学校を取り上げてみましょう。

浦和北は倍率の変動が激しく安定していません。2021年度からの志願倍率は1.05→1.11→1.41→1.17倍と推移。今年度は、前年度に急激な倍率アップをした反動で志願者減となり、比較的緩やかな入試になりました。与野が隔年現象で倍率アップしているので、与野へ移動したのかもしれません。

県立川口の志願倍率は、2021年度より1.14→1.16→1.18→1.34倍と1.1倍台が続いていました。今年度は急激に倍率アップしていますが、志願者数は362→416→374→425人と増えたり減ったりしています。2022年度に倍率が上がらなかったのは学級増になったためで、受検生は隔年現象で動いているといえます。

川口北は志願者が約70人増加し1.47倍にアップ。近年では2016年度の1.48倍に次ぐ高倍率です。その結果、合格率は69.1%に下がり、受検生の3割が不合格になる厳しい入試になりました。高倍率が続いていた川口市立を敬遠した受検生が、2024年度より制服が変わった本校に移動してきたものと思われます。

与野は2020年度までは高倍率で安定した入試が続いていましたが、以降隔年現象の動きになり入試状況が変わりました。今年度は倍率アップの年に当たり、1.26倍に上がりましたが、以前のような1.3倍以上になることはこの4年間ありません。

市立大宮北は2022、2023年度と1.1倍台の低めの倍率で推移していましたが、今年度は市立浦和の影響を受けたのか約80人の志願者増。不合格者が100人を数える厳しい入試になりました。志願確定倍率1.39倍は近年でもっとも高い倍率です。

川口市立は前年度に志願倍率が1.94倍に上がり、受検者の約半数の260人が不合格になる激戦でした。そして今年度は、その反動と附属の中学生が高校に持ち上がる最初の年になるということも影響したのか、志願者は184人の大幅減で倍率は一気に1.26倍まで下がりました。1.2倍台まで下がったのは4年ぶりです。

上尾鷹の台は、志願者が11人減って0.99倍と1倍を切ってしまいました。定員割れは近年ではなく、志願者数が200人に満たなかった(196人)こともありません。大宮商業が志願者増で1倍を超えていることから、上尾鷹の台から大宮商業への移動があったのかもしれません。

志木は1.0倍台の低めの倍率が2022、2023年度と続いた後に、55人の志願者増となって1.26倍にアップ。近年でもっとも高い倍率になりました。不合格者も前年度の5人から61人に増えて、受検生の約2割が涙をのみました。大宮南の志願者が減少していることから、影響を受けたのかもしれません。

新座は2019年度からの志願倍率が1.08→0.93→1.03→0.93→1.09→0.98倍と隔年現象が続いています。今年度は下がる年にあたり、その流れ通りにダウンしました。和光の募集停止の影響は戸田翔陽が受け、本校には及ばなかったようです。

所沢は2020年度入試に1.2倍台まで下がったものの以降志願者増が続き、今年度は5年ぶりに500人を超え、倍率も1.4倍台にアップ。合格率71%の厳しい入試になりました。所沢北からの移動があったものと予想されます。

所沢西の志願者数は前年度より11人の増で留まっていますが、募集学級数を9学級から8学級に戻したため、倍率は6年ぶりに1.2倍台まで上がりました。

深谷第一は志願者が30人減って募集人員と同じ278人になり、全員が合格しました。300人を割ったのは近年ではありませんし、不合格者が一人もでなかったこともありません。

草加西は約40人の志願者減。近年で初めて定員割れになり受検生全員が合格しました。越谷東が学級増で志願者が約40人増加しているので、移動があったのでしょうか。

越谷西も約40人減って、こちらも近年見られなかった定員割れになりました。例年受検を棄権する人は1人かゼロでしたが、今年度は4人棄権、または取り消しが生じました。これも近年の入試では見られなかった現象です。コロナ禍などの感染症によるものか、私立高に流れたのか判然としませんが、もともとの志願者も少なかったことから私立高に向かった可能性が高いように思われます。

三郷は約40人の増となり、3年ぶりに1倍を超えました。八潮の募集停止の影響を受けた動きといえるでしょう。

蓮田松韻も30人増。定員割れからは抜け出せませんでしたが、こちらも岩槻北陵の募集停止を受けての志願者増と考えられます。

白岡は2021年度からの志願者数が128→131→146→165人と増加傾向が続き、今年度は4年ぶりに1倍を超えました。

杉戸は約50人の志願者増で1.2倍台にアップ。近年でもっとも高い倍率になりました。志願者数が300人を超えたのは、募集学級数が現在より1学級多かった2019年度以来のことです。志願者増が続いた伊奈学園総合が今年度減少に転じたので、その影響を受けたのかもしれません。2025年度には制服が変わるので高い人気は維持しそうです。

学校名2023(R5)2024(R6)
浦和北1.411.17
県立川口1.181.34
川口北1.281.47
与野1.161.26
市立大宮北1.101.39
川口市立1.941.26
上尾鷹の台1.050.99
志木1.031.26
新座1.090.98
所沢1.341.43
所沢西1.081.25
深谷第一1.111.00
草加西1.140.98
越谷西1.090.96
三郷0.821.03
蓮田松韻0.620.77
白岡0.921.04
杉戸1.021.20

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