11月28日、神奈川県教育委員会から2025(R7)年度入試に向けた10月20日現在の進路希望調査の結果が発表されました。
その概要をまとめましたのでご参照ください。なお、詳細は以下のページをご覧ください。
全体の特徴
まず、全体的な特徴を見ていきましょう。
上段は希望者数、下段は卒業予定者数に対する割合。
全日制・定時制・通信制、公立高・私立高への希望状況をまとめた上記の表を見ると、次の特徴を挙げることができます。
- 全日制高校への希望率が3年連続で90%を割る。
- 県内公立高への希望率は減少傾向が続く。
- 県内私立高への希望率は前年度よりアップ。
- 通信制高校への希望率は前年度に引き続き過去最高を更新。
全日制への希望率は前年に引き続き減少傾向で、今回は88%台まで下がりました。これに対して通信制は毎年過去最高割合を更新しており、通信制への流れが顕著です。
公立高校への希望者数は過去10年間で初めて50,000人を切りました。前年度比では1.1%減少しています。減少傾向が続いている原因として、通信制への流れに加え、県内私立高校にも向かっていることが挙げられます。県内私立高校への希望率は8.8%で、前年度にくらべ0.7ポイント上昇。2014(H26)年度以降で最も高い希望率になりました。前年度の調査では、公立希望率が下がった分が通信制のみに影響を与えましたが、今回は通信制のほか県内私立高希望率もアップし、停滞していた私立志向が復活したような形です。
県外私立は4.2%で0.1ポイント減少しています。しかし2019年10月まで3%台であったことからも4.0%台は高い割合と言えます。
このように現時点では公立の希望率は下がっています。しかし、実際の入試でも公立高入試の倍率が下がるとは限りません。2022(R4)年10月や2023(R5)年10月の進路希望調査では希望率が減少しましたが、入試での志願倍率はアップしているからです。
- 2022(R4)年10月 希望率77.4%→76.3% 2023(R5)年度入試 志願倍率1.17倍→1.18倍
- 2023(R5)年10月 希望率76.3%→76.1% 2024(R6)年度入試 志願倍率1.18倍→1.19倍
県内公立校希望者の学科別希望状況
次に県内公立校希望者の学科別希望状況を見てみましょう。
上段は希望者数、下段は公立希望者計に対する割合
近年の公立高入試で普通科志向が続くなか、今回の調査では普通科の希望率が0.5ポイントダウンし、専門学科が0.4ポイントアップしました。特に工業科の割合が3.1%→3.4%と0.3ポイントアップしていことが注目されます。平塚工科(+38人)や市立川崎総合科学(+58人)で希望者が大幅に増加するなど全10校中7校で増えています。
また、商業科の商工(+47人)や市立幸(+26人)、水産科の海洋科学(+37人)などで大幅に増加し、専門学科の希望率増に貢献しています。専門学科の希望者数が増加した原因として、前年度の希望率が低迷したことの反動と、県立高校の統廃合により横浜旭陵、永谷、深沢の3校が募集停止になったことが挙げられます。
それでも全体の8割は依然として普通科を希望しており普通科志向は続いているといえるでしょう。
総合学科の希望率は5.4%から5.5%にアップ。鶴見総合(+43人)、座間総合(+56人)、麻生総合(+29人)などで希望者が増えており、普通科からの流れがうかがえました。県立の総合学科は2.6%から2.8%に増加しましたが、市立は2.0%から1.9%に減少しました。市立みなと総合の希望者数が前年度の高倍率の反動で約110人減少したことが影響したようです。
進路希望調査で普通科の割合が下がっても、実際の入試では志願倍率が上がることがあります。2023年10月時点の普通科の希望率は0.2ポイント下がりましたが、倍率は1.23倍から1.24倍に上がりました。今回普通科の割合が下がったからといって、実際の入試の倍率も下がるとは限りません。
前年度の2024(R6)年度入試では、普通科の中堅層で高倍率になる学校が目立ちました。その原因として受検生の志向が安全志向になり、低倍率が続いている学校に受検生が集中したことや、倍率の動きを見て志望校を決定することが増えたためと考えられます。
前年度高倍率になった学校
それでは、前年度にそのような高倍率になった学校が、どのような調査結果になったのか見てみましょう。
以下、「希望者」「希望倍率」は進路希望調査時の希望者数、希望倍率。「志願者」「志願倍率」は実際の入試の志願者数、志願倍率をいいます。
【2024(R6)年度入試の中堅層で志願倍率が1.24倍以上だった学校】
倍率は志願確定時のものです。
前年度高倍率になった学校の希望者数は減少しているところが目立ち、その反動が現れているようです。
横浜清陵は希望者が前年に比べ32人減です。前年度の入試では、志願者は減ったものの定員減により志願倍率が1.35倍から1.50倍に高騰し、受検生の3分の1が不合格になる激戦でした。今回の結果では、この前年度の激戦の反動が現れていることから、実際の入試でも志願者減になる可能性が高いと予想されます。
城郷は希望者が前年に比べ32人減少しています。入試の志願者数は2022(R4)年度より増加傾向で、この3年間は1.30倍を超える高倍率が続いているため今回は敬遠されたようです。しかし2023(R5)年度入試では、希望者が100人以上減少したにも関わらず志願者数は増加したので、希望者数が減っても志願者も減るとは限らず注意が必要です。
霧が丘は希望者が前年に比べ6人増加。この2年間は希望者数が増加し、入試の志願確定倍率も当校としては高い倍率が続いています。今回その反動で希望者数が減少するかと思われましたが、改修工事により校舎が新しくなっていることからか減少することはありませんでした。従って入試でも志願者は減らず、倍率は高い水準を維持するかもしれません。
横浜立野は希望者が前年に比べ4人減です。前年度は定員減と志願者増により過去10年間で最も高い倍率を記録しました。今年度は定員増になっており、この段階の希望倍率は1.25倍と前年度の1.48倍に比べ落ち着きを取り戻しています。従ってこのままで推移すれば倍率ダウンの可能性があります。ただし、1.25倍は例年の当校の希望倍率としては高い倍率になるので、実際の入試でも楽な入試にはならないでしょう。
横浜南陵は希望者が48人減です。前年度は希望者73人増で希望倍率1.38倍と7年ぶりに1.3倍台に上がりました。その結果実際の入試でも志願者が42人増えたほか募集定員減もあり過去10年で最も高い倍率を記録しました。今回の調査ではこの高倍率の反動で希望者は減り、希望倍率は1.18倍に下がったものの、募集定員は変わらず少ないままなので倍率は上がりやすいでしょう。
川崎市立幸は希望者が11人増です。前年度の志願倍率は1.43倍で、2017(H29)年度に現在の校名に改称して以降、最も高い倍率になりました。例年、進路希望調査の際には200人以上の受検生が集まりますが、入試の志願者は150人前後まで落ち着くことが多くあります。以前は希望数と志願者数の差は100人程度でしたが、この2年は60人ほどに縮まっており、強い志望を持った受験生が増えていることが窺えます。今回も60人ほどとすると志願者数は180人前後となり、倍率は前年度よりさらに上がる可能性があります。
県立川崎は希望者数が22人減です。前年度の志願確定倍率は1.33倍で当校としては高い倍率が続きました。例年、進路希望調査では330~380人程度の希望者が集まりますが、実際の入試では300人前後まで減ることが多い学校です。この例年の動きを当てはめると志願倍率は1.25倍に下がることになります。
新栄は希望者数が45人減です。隔年現象があり、今度の入試は倍率ダウンの年に当たっています。例年、希望調査の段階では320人程度の希望者を集めることが多いものの、入試では前の年の志願状況に影響される形で増減を繰り返しています。今回の調査では新羽への流れもあり、希望者は300人を割っているため、倍率ダウンの可能性は高いと考えられます。
逗子葉山は希望者数が51人減。2023(R5)年度に統合校として募集を開始して以来高倍率が続きましたが今回その反動が現れました。公立中堅校に安全志向の流れがあるため、今年度の志願倍率は下がる可能性があります。
横浜緑園は希望者数128人減です。前年度の志願確定倍率は1.29倍で、2013(H25)年度以降で最も高い倍率を記録しているため受検生から敬遠されたようです。今回の希望者数は、2019(H31)年10月に近く、その年の志願確定者は約280人に増えました。ただそれを当てはめ志願者が増加したとしても、当時より募集定員が多いため倍率は下がると予想されます。
茅ケ崎西浜は希望者数が31人減です。前年度の志願確定倍率は1.25倍で、2013(H25)年度以降で最も高い倍率を記録しており、その反動と考えられます。希望状況でいうと2020年10月の調査までは300人台だった希望者が翌2021年より寒川からの移動によって400人を超えるようになりました。それに伴って希望者数と志願者数の差は増加から減少に転じています。今回は当校が減って寒川が増えていますが、これまでの傾向を当てはめれば1.15倍程度まで下がる可能性があります。
希望者が大幅に増加した学校
次に希望者が大幅に増加した学校を見ていきましょう。
【2024(R6)年度の進路希望者数が前年度より60人以上増加した学校】
港北は希望者数60人増です。前年度の志願確定倍率は1.33倍で、前々年度から約90人減になったものの学級減によって1.3倍台を維持しました。今回希望者数が増えたのは前年度の志願者減の反動ですが、近年は希望者数と志願者数の差が小さくなっていることから、このままで推移しても学級増に吸収されて前年度並みの1.3倍前後でとどまるものと見込まれます。
新羽の希望者は90人増えました。例年志願確定倍率は1.20倍台で推移していて、志願者数も340~380人で収まることが多い変動の少ない学校です。2023年度入試の希望調査では希望者450人と多かったものの、入試では志願変更で調整され結果的に1.22倍の志願倍率で落ち着きました。今回も志願締め切り時の倍率は高くなる可能性がありますが、最終的にはそれほど上がらずに済むかもしれません。
川和は希望者数が85人増です。ここ2年間倍率が1.20倍台と、学力向上進学重点校のなかでも低い倍率で推移していました。今回はその反動が希望者数に現れたようです。これまでの希望調査では2020年10月以降毎年希望者数が減少し、それに伴い志願者数との差も縮まってきました。今回の希望者数は2022年10月(516人)とほぼ同じで、この時の志願者との差は85人でしたから、これを当てはめると1.4倍程度に上がります。
上矢部は希望者数が93人増です。ここ3年間は希望倍率が1倍を下回りましたが、今年度は1.23倍まで回復しました。前年度倍率アップした横浜緑園からの移動があったようです。しかし当校の場合希望者が増えても実際の入試の志願者数に結び付かないことが多いので、今回も希望者増が志願倍率アップにつながるかは不透明です。
相模原弥栄は希望者数が74人増です。前年度の志願確定倍率は1.18倍で2017(H29)年度の統廃合で開校して以来最も低い倍率になりました。その前の2023(R5)年度入試までは志願確定倍率は1.20倍台で推移しており、この希望者数は2022年10月と近いため、今年度も1.2倍台までアップすることが予想されます。
藤沢西は希望者が111人増です。前年度の志願確定倍率は1.31倍で、2年連続アップしているにも関わらず今回さらに希望者が増加しました。深沢の募集停止の影響を受けたのかもしれません。今年度は定員減になることからも、このまま希望状況が変わらなければ倍率アップする可能性が高くなります。
県内のトップ校の希望状況
横浜翠嵐は31人減ですが割合としては3%程度なので、ほぼ前年度並みの希望状況といえるでしょう。受験生の動きをみると2021年10月調査時に希望者が1,000人を超え以降徐々に減少していますが、依然900人以上が希望しています。しかし実際の入試になると志願者は100人以上減少。さらに志願変更でも減って結果的に2倍程度の倍率になることが多くあります。今回も今後希望者が減少し、志願者数も前年度並み(志願確定者数770人)程度に落ち着くのではないでしょうか。
湘南は21人増。こちらも2%程度の変動なので例年の動きといえます。しかし希望者が900人を超えるのは、近年では2022年10月の921人に次いで2回目で挑戦者の多い状況が続いているといえます。入試になると志願者は横浜翠嵐以上に減少し、この2年間は志願締切時で220人以上の減り、志願変更でさらに70~100人減少し、結果的に1.6倍前後の志願確定倍率で落ち着きます。今回も似たような動きになりそうです。
柏陽は48人増えて500人台に戻りました。横浜翠嵐や湘南に比べて希望者と志願者の差は小さく、特にこの2年間は希望者の9割以上が志願するという状況が続いています。今回も同様に動くとすると志願倍率は1.5倍程度に上がり、他校への移動がもう少し増えても1.45倍ほどとなり例年の入試状況になります。