
2月13日,都立高入試で願書差し替え後の最終応募状況が発表されました。
その特徴をまとめましたのでご参照ください。
詳細は東京都教育委員会のホームページをご覧ください。
https://www.kyoiku.metro.tokyo.lg.jp/information/press/2025/02/2025021301
一般入試(第一次募集・分割前期募集)の募集人員30,078人(海外帰国生徒募集含む)に対し,願書差し替え後の最終応募者数は38,718人で最終応募倍率は前年度より0.09ポイント下がって1.29倍と今の入試制度になった1994(H6)年度以来最も低い倍率になりました。
東京都では私立高の授業料に対する軽減助成金制度の年収の上限を撤廃しておりその影響が現れた形です。
特に普通科の倍率が前年度の1.47倍から1.36倍へと大幅にダウン,最終応募者数は前年度の31,551人から28,843人へ2,708人減少しており,相当数の受験者が私立高へ移動したと考えられます。
一方で総合学科は1.33倍から1.25倍にダウンしていますが,2023(R5)年度の1.28倍に近い水準に戻ったといえ,専門学科も商業科(1.02→0.98倍),ビジネスコミュニケーション科(1.11→106倍),家庭科(単位制以外)(0.97→0.87倍),産業科(1.07→0.97倍)などの学科で下がったものの,工業科(単位制除く)は0.78倍で前年度(0.79倍)並みを維持し,農業科は1.15倍から1.30倍にアップするなど専門学科全体では1.01倍と前年度(1.04倍)より0.03ポイントのダウンでとどまっています。従ってこれら特色ある学科では普通科ほど私立高に流れてはいないと思われます。

進学重点校の状況
進学指導重点校では応募者が増加した学校,減少した学校さまざまでしたが,7校合わせた最終応募者数は3,132人で,前年度の男女合わせた応募者数より約140人増加しました。
今見てきたように,全体の応募倍率が過去最低を記録し,普通科も大幅に減少した中で,都立のトップ7校は私立高の授業料助成金制度の影響はあまり受けなかったといっていいでしょう。
ただグラフを見てもわかるように応募者数は減少傾向です。今年度は増加したものの2022年度以前には及ばないことから,私学への流出は以前から始まっており都立志望者が減っているということはあるようです。

日比谷の応募者数は前年度に珍しく400人台(459人)まで落ち込んだことから,今年度は反動で48人増の507人になりました。しかしこの人数も例年550~580人で推移していた日比谷にしては少ない人数です。近年の東大現役合格者数は2021年春より48→53→33→52人,東大に加え京大,一橋大,東工大の難関四大学の実績が同じく78→76→47→75人と2023年春にいったん下がり,昨春の2024年春には元に戻ったものの入試では応募者数が完全に回復することはありませんでした。
戸山も応募者数が2023年度,2024年度と2年連続で400人台になり,それまでの520~580人で推移していた時と比べかなり少ない人数でしたが,今年度は526人に増え2022年度(525人)とほぼ同じところまで持ち直しました。倍率も2倍台に回復しています。
青山も戸山同様の動きで,2022年度以前は530~580人の応募者数でしたが,2023年度から2年連続で400人台に落ち込みました。今年度は増加が予想されたところでしたが逆に25人減となり,倍率も珍しく2倍を切りました。私学への流出による層の薄さを感じさせます。
西も応募者数は減少しており,今年度の407人は2021年度の410人とほぼ同じでやはり西としては少ない人数になっています。進学実績をみると東大への現役合格者数は2021年春より11→16→8→6人,難関四大学は44→49→37→29人と減少傾向にあることや,私学志向の強い地域に所在していることも応募者数に影響しているのかもしれません。
八王子東が復活しました。2023,2024年度と応募者が325人,342人とそれまで370~410人で推移していたことから大幅に減っていましたが,今年度は382人となり八王子東としての標準的な人数に戻りました。町田市の生徒数が増加していることと町田の応募者が大幅に減少していることから,町田市から受検生が挑戦しにきたのかもしれません。
立川は普通科が微増,創造理数科が前年度の応募減の反動で開設初年度の147人を上回る多くの応募者を集めました。2学科合わせた応募数は491人で普通科単独校の時代も含め近年でもっとも多い数となります。高い国公立大学への合格実績(2021年春より122→138→135→132人)を維持しつつ,難関私立大学への合格者数が伸びている(早慶上理ICU:2021年春より111→99→123→140人)ことが人気を得ているのかもしれません。
国立はほぼ前年度並みの応募者を集め,ここのところ安定した入試が続きます。しかし2022年度以前は400人を超える応募者を集めることも多かったことから,やはり私立への流出によって受検層が薄くなっているのかもしれません。

進学指導特別推進校の状況
次に進学指導特別推進校の応募状況を見てみましょう。
この学力層から応募者数は減少する学校が多くなります。次のグラフを見ても2022年度以降少しずつ増加していた応募者数が今年度急激に減少しており,今年度は近年でもっとも少ない人数になりました。

小山台は三田からの移動があり応募増となりましたが,2020年度以前は400人を超える応募者を集めていたのでまだ少ない人数です。やはり私学志向の影響を受けて受検者層が薄くなっていると思われます。ただ,2021年度以降に限ってみると標準的な応募数を確保しているといえるでしょう。
駒場は前年度に応募増になり受検生の4割が不合格になる激戦になったことから,今年度は約40人の応募減になりました。しかし2年続いた増学級を元の7学級に戻したことから応募倍率は1.9倍に上がっています。従って前年度以上の激戦になると予想されます。
小松川は応募者が約20人減で300人,この人数は近年でもっとも少ない人数です。地元江戸川区の生徒数が減少しており,もともと竹早,北園へ流出する傾向があります。今年度はそれに加え私立志向も重なった結果と考えられます。
町田の応募者数は63人減って近年で初めて300人を切りました。倍率も1.1倍台まで落ち込んでいます。地元町田市の生徒数は増加していますが,この地域は他地域への流出は多いものの流入がすくないため倍率が上がりにくいという特徴があり,日比谷や駒場,新宿などでは町田市からの入学生が2桁を数えています。一方で相模原市や川崎市,横浜市など都外私立へ向かう生徒も多いため今回の私立志向でこのような応募状況になったと思われます。
国際も激減しました。前年度より56人の減で倍率は1倍台(1.85倍)で留まっています。毎年200人以上の応募者を集め,倍率も2.2倍以上の高倍率で推移していた国際としては想像できなかった応募状況です。国際との私立併願校は明治学院,駒込,国学院,青稜,桐蔭学園などの人気校が多く,今回の私立志向で大きな影響を受けた形です。
新宿も同様です。前年度に2.4倍台という高倍率になり,受検生の半数以上が不合格という激戦の反動もありますが,応募者は135人の大幅減となり倍率も1倍台まで落ち込みました。応募者数が500人台で倍率が1倍台にとどまったのは4年ぶりのことです。
一方で国分寺は前年度に1.45倍という近年にない低い倍率になったことから,今年度は応募者が56人増加し本来の入試に戻りました。入学生が多い国分寺市をはじめ小平市,三鷹市,府中市などは私立志向の高い地域ですが,今年度は私学に流れるより前年度の入りやすさを狙って応募した受検生が多かったようです。

進学指導推進校の状況
次に進学指導推進校の応募状況を見てきましょう。
これらの学校でも応募者が減少したところが目立ちました。
グラフをみると大きなうねりがあるような形になっていますが,2023年度からの減少率は0.8%→2.8%→5.0%と年々拡大しており,私学への流出が増加傾向にあることが示されています。

三田は2024年度入試から変更された男女別募集から男女合同募集の影響を受けた数少ない1校と思われます。昨春の2024年度入試では女子の入学生が多かったようです。そのせいか今年度の応募者数は前年度に応募減になった反動もなくさらに39人の減となり,近年にない少ない人数になりました。
竹早は募集学級増となりましたが,応募者数は微増で留まり倍率はダウンしました。足立区や江東区,江戸川区から多くの受検生が集まりますが,これらの地域の生徒数が減少していることから,私立志向の高まりもあり応募者数が伸び悩んだのかもしれません。
上野は微増で1.9倍台の高倍率が続きました。地元の台東区をはじめ,荒川区,足立区,そして江東区や江戸川区の生徒数が減少しているのにもかかわらず高倍率を維持したのは,通学の便の良さに加え進学実績が好調であることも要因のひとつと思われます。
城東は168人の大幅減,倍率も1.91倍から1.48倍に急降下しました。応募者数が400人に満たなかったのは3年ぶりです。前年度の高倍率の反動とその年の増学級が元の7学級募集に戻ったこと,地元江東区や江戸川区,足立区の生徒減,そして併願校としてよく利用されている安田学園や関東第一が伸びてきていることなどが影響したと思われます。
豊多摩は67人増で応募者は538人になりました。近年でもっとも多い人数です。高まる私立志向の中でこの学力層でこのような大幅増になったのは,この豊多摩のほか石神井,神代くらいです。中野区,杉並区の生徒数が増加しているほか,同じ京王井の頭線沿線の駒場や国際が大幅減になっていることから本校に移動してきたものと考えられます。
北園は15人増で倍率もやや上がりました。私立志向の影響を受け2020年度から応募者数が大きく増減するようになりましたが,この3年間は460人前後で安定しています。今年度に関しては同レベル校の城東が大幅に減少していることから,江東区・江戸川区などから流入したのかもしれません。
江北の応募者数は2022年度より389→481→386→415人と増えたり減ったりしています。今年度は増える年に当たり400人を超えました。2022年春の大学合格実績が急増し,以降高い水準を維持していることも人気を支えているようです。
江戸川は61人減,応募者数は近年で初めて400人に達しませんでした。倍率も1.4倍台まで下がっています。前年度が2023年度の増学級から元の8学級募集に戻ったことから倍率が上がり受検生の4割近くが不合格になる激戦であったため,その反動と,何回か触れていますが江東区・江戸川区の生徒減の影響と考えられます。
武蔵野北の応募者数は2021年度より305→266→296→255人と増えたり減ったりしています。今年度は応募増の年に当たっていましたが259人で留まりました。練馬区の生徒減や杉並区,三鷹市,小平市といった私立志向の高い地域からの入学生が多いことから増加には至らなかったのかもしれません。
昭和は13人の微増。2022,2023年度に応募者数が480人前後になったことを考えるとまだ少ない人数といえるでしょう。競合校の日野台の応募者が大幅に減少しているので,一部は同校から移動があったと考えられます。
調布北は2020年度より3年間300人を超える応募者数を確保していましたが,2023年度に281人に落ち込み,翌2024年度も増加したものの300人を超えるには至りませんでした。しかし今年度は小金井北からの移動があったようで応募者はさらに増加し325人と本来の応募状況に戻っています。2024年春の国公立大学や早慶上理の実績が大幅に向上したことも応募増に結び付いたのかもしれません。
小金井北は前年度の倍率アップの反動で応募者は35人の減になりましたが,282人は最近の5年間では前年度に次いで多い人数で私学志向の高まりの中で健闘したといえるでしょう。国公立大学の現役合格者数は40人台を維持しつつ,早慶上理ICU,GMARCHの難関私立大の実績が伸びています。
日野台は46人の応募減となり近年でもっとも少ない人数になりました。300人を切ったのも初めてです。入学生の約8割は都立志向の高い八王子市や日野市,立川市,昭島市などの生徒ですが,武蔵野市や三鷹市など私立志向の高い地域からの入学生も約2割いるため,このような地域から私立高へ流れたのかもしれません。
墨田川は45人の応募減になり,300人を大幅に割り込みました。倍率も1.10倍に下がり,4年前の1.05倍に迫る低倍率でした。足立区や江東区,江戸川区の生徒数が減少しておりその影響を受けた形です。また1.2~1.3倍台の墨田川としては高めの倍率が続いたため江北や深川に移動したのかもしれません。
多摩科学技術は応募者が39人減り,倍率が1.45倍と近年でもっとも低い倍率になりました。私立志向の高まりと,併願校としてよく利用される東京電機大学や拓殖大学第一で出願条件などが利用しやすく変更になったことが影響したのではないでしょうか。

その他の注目校
このほかの注目校を見ていきましょう。これらの中堅上位校でも応募減になった学校が目立ちます。
向丘は2021年度からの応募者数が362→438→376→440→347人と増減を繰り返しています。今年度の応募者数は前々年度の2023年度,その2年前の2021年度より少ないことから私立志向の影響を受けているといえます。しかし通学の便が良く周辺地域に同レベルの都立高が少ないこともあり,高い人気を得ている学校です。GMARCHや日東駒専の実績も上がっています。
深川も2020年度からの応募者数が321→357→338→357→318→335人と増えたり減ったりしています。ただし今年度の335人は2023年度や2021年度の人数より少なく,地元江東区や江戸川区の生徒減の影響を受けていると考えられます。
目黒が大幅減です。前年度より106人減って265人に留まり,倍率も1.40倍に下がりました。応募者数も倍率も近年ではありません。入学生が多い地域は大田区や品川区で大田区は都立志向の高い地域ですが,雪谷が22人減,田園調布が66人減なので都立高間の移動ではなく私立高に流出したと考えられます。
田園調布は66人減,応募者数が200人台で留まったのは2018年度以来のことです。同レベルの競合校雪谷も減少していることから私立高に移動したものと見込まれます。
広尾は8人減でした。1学級増の6学級募集になったことや前年度に応募減になったことから応募増の可能性もありましたがさほど増えませんでした。世田谷区や目黒区,品川区など私立志向の高い地域からの入学生が多いことから,私立志向の影響を受けたのではないでしょうか。
豊島は人気校のひとつで応募人員は2021年度より407→452→506→574人と増加傾向となっていました。前年度の2024年度入試では2.27倍に達し,受検生の半数以上が不合格になる激戦でした。今年度はその反動で40人の減になりましたが,倍率は2倍台を維持しており人気は衰えていないようです。練馬区からの入学生が多いことから,本校を敬遠した受検生は石神井に移動したものと見込まれます。
文京の応募者数は2022年度より525→495→408→381人と減少傾向です。今年度は4年ぶりに300人台で留まりました。北園が15人の増になっていることから,一部は北園に移動したのかもしれませんが,やはり私立志向の影響を受けているといえるでしょう。
井草は104人の大幅減。応募者数が300人台まで落ち込んだのは6年ぶりです。倍率も1.4倍台で本校としては低い倍率になりました。練馬区からの入学生で全体の3分の1を占めますが,その練馬区の生徒数が減少していることも影響したと思われます。また杉並区や中野区など私立志向の高い地域からの入学生も多いことから私立志向の影響を受けているとも考えられます。
石神井は応募増になりました。前年度に増学級から元の7学級募集に戻り112人の大幅減になったことから,今年度は反動が出た形です。井草や豊島のほか小平からの移動もあったと思われます。
神代も43人の応募増でした。2022年度からの応募者数は469→487→456→499人と増減を繰り返しており,今年度もその動きに合わせての増加となりました。南平や調布南からの移動があったと思われますが,499人は近年でもっとも多い人数で,私立志向とは無縁の応募状況になりました。完成したばかりの新しい校舎,早慶上理やGMARCHの実績が大幅に向上したことなどが高い人気を支えているようです。
調布南は微減でしたが1.6倍台の高倍率を維持しました。しかし応募者数の315人は近年では少ない方の人数なので,私立志向の影響を受けているといえるかもしれません。
成瀬は63人増で4年ぶりに応募者が300人を超えました。前年度の応募減の反動ですが,町田市の生徒数が増えており,その影響も受けたと思われます。
小平は42人減,前年度の応募増の反動もありますが,周辺地域の清瀬,小平南,保谷も大幅に減少していることから,私立高へ移動していると考えられます。
小平南は76人減。応募者数の287人は近年でもっとも少ない人数です。女子校から共学になった英明フロンティアなどの私立へ移動していると思われます。
南平も34人減ですが,2021年度からの応募者数は377→396→381→398→364人と増減を繰り返しています。ただ,今年度の364人は近年では少ない方の人数ですし,同じ地域の日野台の応募者数も減少していることから私立志向の影響を受けたといえるでしょう。
狛江の応募者数は前年度とほとんど変わりませんでしたが,募集学級数が9学級から元の8学級に戻ったため倍率はアップしました。地元の狛江市や調布市,稲城市などのほか,町田市や世田谷区などからも多くの入学生がおり通学圏は周辺の学校より広いのが特徴です。
東大和南は16人の微減でしたが,応募者数が300人を割ったのは近年ではありません。競合する小平や小平南,上水などの応募者も減少していることから私立高への移動によるものと考えられます。
清瀬も42人の減となりましたが,応募者数は2021年度より249→304→277→306→264人と増減しており,今年度はその流れの中の動きといえ,人数的にも2023年度,2021年度と大きな差がないことから私立志向の影響はあまりなかったといえるのではないでしょうか。
芦花は微減でした。応募者数はこの4年間420~450人程度で安定しており私立志向の影響はあまり感じられません。入学生は地元の世田谷区のほか調布市や町田市,狛江市,三鷹市など多摩地区の生徒も多く,幅広い範囲から受検生が集まるため応募者数があまり変動しないのかもしれません。

今年度の大きな特徴のひとつが学力的に入りやすい学校で応募者が大幅に減少したことが挙げられます。これらの学力層は通信制高校とも競合しており,今回の私立志向とのダブルパンチで応募減になったと考えられます。
八潮(45人減),練馬(46人減),淵江(81人減),青井(92人減),篠崎(80人減),葛西南(83人減),山崎(63人減)は近年にない少ない応募数になりました。このほか千歳丘(43人減),光丘(47人減),竹台(51人減),葛飾野(45人減),拝島(49人減),小平西(47人減),東村山西(44人減),永山(68人減)などで40人以上の大幅減になりました。