
埼玉公立地域別入試概況の2回目は,川越市・所沢市・狭山市・富士見市などの県南西部の学校が対象です。
川越市・所沢市・狭山市・富士見市・ふじみ野市・坂戸市・鶴ヶ島市・日高市・飯能市・入間市・東松山市・小川町

この地域は県立川越,所沢北,川越女子の学力上位校に比べ,中堅校や通信制と競合する学力層の学校が多い地域です。そのせいか私立・通信制志向の影響を受けやすく志願者数は約300人の減となりました。全24校中13校が倍率ダウン,特に中堅校や通信制と競合する学校の志願者減が目立っています。この結果,実質競争率も0.03ポイント下がり不合格者も1,013人から約200人減って819人となりやや緩和されました。
川越
川越は前年度とまったく同じ志願者数で倍率も変わりませんでした。2022年度から1.4倍台が続いており不合格者数は受検者の約3割に該当する150人程度で厳しい入試状況になっています。昨春の大学合格実績は国公立が119人から95人と100人を切ってしまいましたが,今春は125人と大幅に増加しました。来年度も高い人気を維持すると見込まれます。
川越女子
川越女子は45人の志願者減となり,倍率は1.1倍台と最近の10年間でもっとも低い倍率を記録しました。例年100人以上の不合格者がでる難関校でしたが,今春は61人に減,珍しく緩やかな入試になりました。所沢北の志願者が増加しているので,同校への移動があったのかもしれません。
所沢北
所沢北は前年度に63人の志願者減で倍率が1.1倍台に落ち込みました。今年度はその反動があり志願者47人増,倍率は1.2倍台に上がりましたが,それでもまだ本校としては低めの倍率です。昨春,国公立大学の合格者数が過去最高を記録しました。今春はやや減ったものの,依然として高い水準を維持しています。そのため進学実績に対する期待感からも来年度はさらに多くの志願者を集めるかもしれません。
川越南
川越南は2022年度から2024年度の3年間,1.4倍程度で安定していましたが,今年度は35人の志願者増となり倍率アップ,受検者の3分の1にあたる172人が不合格になる激戦でした。来春は反動で志願者減が予想されます。しかし大学合格実績が好調でGMARCHの合格者数は2021年3月より45→69→115→130→143人と年々増加していることから人気は衰えないと見込まれるので楽な入試にはならないと思われます。
所沢
所沢も人気校です。2021年度から2024年度までの志願者数は440→471→480→513人と増加傾向で,前年度の2024年度は5年ぶりに500人を超えました。倍率も1.4倍台に上り受検生の約3割が不合格になる激戦でした。今年度は反動で46人減り1.3倍台に戻りましたが,それでも不合格者数は100人を超え(105人)一定の人気を維持しています。この志願者数467人というのは本校としては少ない人数なので来年度は志願者増になる可能性があるので要注意です。
坂戸
坂戸は2017年度から2020年度は1.2倍台で安定していましたが,2021年度から倍率が下がり,2023年度からの3年間は1.1倍台が続いています。今年度は志願者がやや減ったものの,前々年度の2023年度とほぼ同じ落ち着いた入試になりました。
市立川越
市立川越は倍率の変動が激しく,1.2~1.6倍台の範囲で動いています。今年度は前年度の倍率アップの反動があったのか39人の志願者減となり,5年ぶりに1.2倍台まで下がりました。情報処理科と国際経済科を併設しているため普通科の枠が狭く,倍率の変動が激しくなるようです。来春は志願者増になるでしょう。教室棟のトイレ工事と体育館の空調設備が完成し環境も整いました。
所沢西
所沢西は前年度に学級減と志願者増(11人)で6年ぶりに1.2倍台に上がり,受検生の約2割77人の不合格者がでたやや厳しい入試でした。その反動があったのか,今年度は39人の減で1.1倍に下がり,本校としての標準的な倍率で落ち着きました。地元の所沢市と入間市,狭山市で在校生の約8割を占める地元中心の入試になります。今年度はその所沢市や入間市の生徒数が減少しており,それも志願者減に影響したのかもしれません。
松山「普」
松山「普」は隔年現象があります。2021年度からの志願者数は251→280→268→284→250人と増減を繰り返し,倍率は0.90→1.01→0.96→1.02→0.90倍と1倍前後で上下しています。今年度は志願者減,倍率ダウンの年で,理数科から第二志望者を受け入れました。来年度は倍率アップの年ですが,上がったとしても不合格者の少ない入試になると予想されます。普通科に国公立大学をめざす特進クラスが設置されています。
松山女子
松山女子も隔年現象があり,2022年度からの志願者数は345→358→331→353人,倍率は1.08→1.13→1.04→1.11倍と推移しています。松山のように定員割れになることはなく,倍率が下がった年でも10~20人程度の不合格者がでています。来年度は倍率ダウンの年に当たりますが,全員合格になるほどは下がらないと考えた方が無難です。本校にも特進クラスが設置され,総合クラスより授業時間が多くなっています。
豊岡
豊岡は2022年度から2024年度までの3年間,志願倍率が1.2倍台で安定していましたが,今年度は77人の大幅減で1.0倍台にダウン,最近の10年間でもっとも低い倍率を記録しました。1.0倍台も初めてです。近隣の入間向陽に移動したほか,主要な通学圏である入間市,所沢市,狭山市の生徒数が減少しているので,その影響も受けたのかもしれません。
入間向陽
入間向陽は倍率があまり安定していません。今年度は前年度の倍率アップを受けて,倍率ダウンする可能性がありましたが,逆に10人の増となり2年連続でアップしました。この10年間で3回しかない1.2倍台に迫る本校としては高い方の倍率でした。来年度はやや緩和する可能性があります。
坂戸西
坂戸西は2022年度,2023年度と続いた1.0倍台から2024年度は1.1倍台にアップし,本校としては高い方の倍率になりました。今年度はその反動で49人の志願者減となり,最近の10年間で初めて定員割れになりました。坂戸市の生徒数減の影響のほか,私立志向の影響を受けたのかもしれません。来年度は志願者増になる可能性があります。普通科ですが単位制の特徴を生かし,情報処理検定や食物調理検定,保育技術検定など資格取得のための講座も用意されています。
川越西
川越西は2021年度以降,倍率がそれまでの1.1~1.2倍台から1倍前後に下がるようになりました。2022年度は学級増の影響もありますが定員割れも経験しています。今年度の志願者数はほぼ前年度並みで倍率も変わらず,不合格者も一桁(8人)で緩やかな入試が続きました。来年度は1学級減の280人募集になります。この10年間志願者が300人に達しないことはなかったので,倍率アップする可能性が高いと考えられます。
所沢中央
所沢中央は2023年度に志願者が減って1.0倍台に落ち込んでからいまだ回復していません。今年度はさらに28人減り募集人員に1人足りない317人が応募,その後棄権者が1人あり316人全員が合格しました。全入は最近の10年間で初めてです。やはり私立志向の影響を受けているものと考えられます。3年次のコースに文系,理系のほか看護系が設けられており,本校の特色になっています。
小川
小川は逆の動きで,2021年度から2023年度までの3年間定員割れが続きましたが,2024年度から1.0倍台に回復し,今年度も前年度並みを維持しました。本校としての標準的な入試といえます。来年度は東松山市や比企地区の生徒数がやや減少する見込みなので,倍率は今年度並みかやや下がる可能性があります。有名大学をめざす進学クラスが設置されています。
飯能
飯能南と統合し新飯能としての3年目の入試では,志願者が微増(11人増)して倍率もやや上がりました。飯能市の生徒数が約100人増加したことが影響したと考えられます。来年度も生徒数はあまり変わらないようなので,今年度並みの倍率が予想されます。
狭山清陵
狭山清陵の志願者は減少傾向で2022年度より224→219→202→182人と推移,今年度は200人を切って最近の10年間で初めて定員割れになりました。通信制志向の影響と今年度は川越初雁の志願者が増加しているので同校への移動もあったのかもしれません。来年度は志願者が戻ってくる可能性がありますが,倍率はそれほど上がらないでしょう。
日高
日高「普通」は志願者が100人を切って0.7倍台に落ち込み,最近の10年間でもっとも低い倍率になりました。日高市の生徒数が減少していることや通信制志向の影響を受けてのことと思われます。「情報」は4年連続定員割れで全員合格の状況が続きます。
ふじみ野
ふじみ野は16人の志願者減となり4年ぶりに志願倍率が1倍を切りました。スポーツサイエンス科が1倍を超えたので同学科から第二志望者を受け入れましたが,募集人員を埋めることはできませんでした。地元ふじみ野市や新座市の生徒数が増加しているのにもかかわらず志願者が増えなかったのは通信制高校等に移動しているからと考えられます。来年度は1学級減の120人募集になり3年前の募集規模に戻ります。そのときの志願者数は120人前後で倍率も1倍前後で推移していたので,同じような低めの倍率になりそうです。
鶴ケ島清風
鶴ケ島清風は前年度に鳩山の募集停止の影響なのか,学級増で募集しましたが志願者は25人減で定員割れになりました。今年度は元の5学級募集に戻りましたが,志願者はさらに21人減って定員割れから抜け出すことができませんでした。隣接する日高市や坂戸市の生徒数が減少していることや通信制志向の高まりにより志願者が伸び悩んでいるのかもしれません。
富士見
富士見は2018年度から2023年度の6年間全入の入試が続きましたが,前年度は13人の志願者増で1.06倍にアップ,今年度も志願者は減ったものの1.02倍とかろうじて1倍台を死守しました。制服が新しくなったことや周辺地域のふじみ野市,三芳町,志木市の生徒数が増加していることから一定の人数を維持したものと考えられます。
越生
越生は2026年度より鳩山と統合し校名を「越生翔桜」に改めます。新校は普通科と美術表現科の2学科で,普通科120人,美術表現科40人の募集になります。選考基準は越生の普通科,美術科と同じですが,部活動の記録の記載欄が調査書のその他の欄に移動になったので,「特別活動の記録」と「その他」の点数配分が変わっています(合計点は変わらず)。今年度までの越生「普」の入試状況を見ると,この4年間は79人の募集人員に対して40~50人台の志願者で留まり全入の入試が続いています。来年度は新校に対する期待がある反面,どのような入試になるのかという警戒感もあるでしょう。さらに入学生の多い毛呂山町,日高市,ときがわ町,鶴ヶ島市の生徒数が増えるということもなさそうなので,高倍率入試にはならないのではないでしょうか。
川越初雁
川越初雁も定員割れの入試が続き,最近の10年間で1倍を超えたのは制服を変更した2023年度だけでした。志願者数は増減を繰り返しており,2022年度から193→208→171→190人と推移,倍率も0.97→1.05→0.86→0.96倍と上がったり下がったりしています。来年度は志願者減の年に当たるので,1倍を超えるのは難しいのではないでしょうか。