高校入試は情報収集がとても重要。ご自分の志望校選択で後悔しないためにも、ここで手を抜いてはいけません。
まずは先輩たちの志願傾向や入試制度変更の影響など、全体的なトレンドを押さえることから始めるのがいいでしょう。
来春に向けた情報戦の第一歩、今春の神奈川県公立高入試はどのような入試であったのか振り返ってみましょう。
志願締め切り時の状況【共通選抜(全日制)全体】
特別募集と中途退学者募集を除く募集人員40,930人に志願締め切り時の志願者数は48,133人、志願倍率は前年度(1.17倍)より0.01ポイント上がり1.18倍になりました。
この時点での定員割れの学校は43校1,922人で前年度(50校1,929人)とほぼ同規模でしたが学校数が減っており1校当たりの欠員数が増えた形です。特定の学校で多くの欠員が生じ、人気校不人気校の格差が拡大しているようです。
志願変更後の状況【共通選抜(全日制)全体】
志願変更を行ったのは3,950人、志願者の8.2%(前年度6.7%)になり、ここ数年でもっとも高い変更率になりました。志願確定者数は48,082人、志願確定倍率は1.17倍で締め切時よりやや下がりました。この倍率は前年度と同じですが、今の入試制度になってもっとも低い倍率です。
生徒数に対する志願確定者数の割合は下降傾向で、公立離れの志願状況になっています。
私立高の授業料支援制度の充実で私立志望者が増加しており、そのため公立の倍率は上がらないのですが、その中で公立高への強い進学希望を持つ志願者が増えたため志願変更率が上がったと考えられます。
この志願変更により定員割れの学校は36校、欠員は1,477人になりましたが、普通科では19校808人から14校458人に減ったのに対し、専門学科は延べ21校748人から20校678人に留まっており、志願変更の効果が普通科のみに現れている状況です。
学科別でみると、普通科は1.23倍で前年度と同じ、単位制普通科は前年度の1.17倍から1.20倍にアップしました。専門学科は農業科が1.09倍から0.99倍にダウン、工業科は0.85倍から0.87倍に上がりましたが低倍率で推移しています。商業科は1.04倍で前年度と同じでした。
前年度と同様、普通科と専門学科の倍率格差は大きく、普通科に偏った志願状況といえます。
[主な学科の応募倍率]
学科 | 2022 | 2023 |
---|---|---|
普通科 | 1.23 | 1.23 |
農業科 | 1.09 | 0.99 |
工業科 | 0.85 | 0.87 |
商業科 | 1.04 | 1.04 |
専門学科計 | 0.93 | 0.93 |
単位制普通科 | 1.17 | 1.20 |
単位制総合学科 | 1.08 | 1.08 |
単位制専門学科 | 1.21 | 1.24 |
全日制計 | 1.17 | 1.17 |
受検と合格者の状況【共通選抜(全日制)全体】
受検者数は47,667人、受検後の取消が319人、合格者数は39,463人で実質倍率は前年度と同じ1.20倍でした。不合格者数は7,885人で前年度より186人増えています。
一方で全日制の第二次募集の募集人員は1,520人で過去最多だった前年度(1,521人)に引き続き大量の欠員が生じています。
志願倍率は過去最低水準で欠員も多くなっていますが、実質倍率は高めで推移しており、不合格者数は増加傾向です。これは人気校と不人気校の格差が大きく、人気校では高倍率で多くの不合格者がでる激戦で、不人気校では募集人員を埋めることができないという二極化の選抜状況になっているからです。
学力向上進学重点校とエントリー校の選抜状況
学力向上進学重点校とそのエントリー校では倍率ダウンした学校が目立ちました。次のグラフをみると、これらの18校合わせた志願者数は、増→増→減、増→増→減を繰り返しており、今年度は減少の年に当たっていました。
横浜翠嵐が3年ぶりに1倍台に下がった(1.97→2.07→2.25→1.98倍)のをはじめ、川和は1学級増によって過去最も低い1.20倍に下がり、横浜平沼は5年ぶりに1.2倍台(1.26倍)の低倍率に落ち込み、横浜緑ケ丘も1.41倍で過去最も低い倍率になりました。鎌倉は前年度に過去最高倍率(1.53倍)を記録した反動で1.2倍台(1.25倍)にダウン、茅ケ崎北陵も同様に前年度の過去最高倍率の反動がありました(1.51→1.36倍)。1.2倍台で安定していた平塚江南は4年ぶりに1.1倍台(1.19倍)に下がり、小田原は隔年現象で今年度は倍率ダウンの年でした(2019年度より1.28→1.35→1.25→1.30→1.21倍)。横浜国際のバカロレアも開設以来1.25→1.65→1.20→2.10→1.25倍と上がったり下がったりしています。
倍率アップしたのは、横浜翠嵐からの移動があった湘南(1.50→1.60倍)、校舎が新しくなり進路実績も伸びている多摩(1.78→1.87倍)、国公立大学の合格実績が現浪合わせて70人台(71人)に乗った光陵(1.37→1.45倍、2023年春も70人)など数校で留まりました。
中堅校の選抜状況
次の16校は内申がオール3(81/135)から「4」が3~5個程度(95/135前後)の受検生が多く集まる学校です。
これらの学校の志願状況をみると倍率アップしたところが多く、横浜氷取沢、金井、舞岡、荏田、城郷、霧が丘は過去最高倍率を記録しました。
学校名 | 2022 | 2023 |
---|---|---|
横浜氷取沢 | 1.13 | 1.36 |
横浜清陵 | 1.47 | 1.35 |
深沢 | 1.09 | 1.13 |
茅ケ崎 | 1.22 | 1.37 |
上溝 | 1.20 | 1.23 |
荏田 | 1.19 | 1.33 |
金井 | 1.09 | 1.37 |
麻生 | 1.18 | 1.11 |
有馬 | 1.10 | 1.12 |
城郷 | 1.33 | 1.43 |
霧が丘 | 1.06 | 1.33 |
横浜立野 | 1.11 | 1.23 |
津久井浜 | 1.19 | 1.22 |
厚木西 | 1.08 | 1.12 |
舞岡 | 1.21 | 1.37 |
藤沢清流 | 1.23 | 1.21 |
重点校などの上位校の倍率が下がり、中堅校が上がっているということは受検生の安全志向の現れです。
16校合わせた志願者数は6,000人を数え近年にない多い人数になっています。この中堅層の倍率が上がったことも今春の入試の大きな特徴です。